ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、2月24日で3年。日本へ避難してきた人たちの生活にも、変化が起きていました。
■亡き人をしのぶウクライナ
ゼレンスキー大統領
「ロシアと交渉する際にはアメリカ、ヨーロッパ、ウクライナの出席が必要で、そのためにも我々が協力することが不可欠だ」
ロシアによるウクライナ侵攻から3年。24日、ウクライナのゼレンスキー大統領を招き、主要7カ国首脳によるオンライン会議が行われた。
アメリカのトランプ大統領は自身のSNSで、紛争終結を目指す考えで一致したと明かした。
ウクライナのキーウでは先月24日、戦争により亡くなった人をしのぶため、多くの人が集まっていた。
娘を亡くしたナタリアさん
「娘は4カ月前に亡くなりました。衛生兵だった娘は、多くの人を助けました」
侵攻開始から3年。戦争を逃れ、日本で暮らすウクライナ避難民の生活にも、ある変化が起きていた。
■動物看護士を目指す女性…日本での生活
2025年、元日。神社で手を合わせ祈るのは、ウクライナから避難してきたレナさん(24)。
動物看護士になることを目標に、熊本市の動物病院で治療のサポートや世話を行っていて、病院の院長と初詣に来ていた。
竜之介動物病院 徳田竜之介院長
「何お願いしましたか」
レナさん
「戦争が終わるのと…私は日本とウクライナの架け橋になる」
時折笑顔も見せるレナさんだが、2024年は“心の不調”と闘い続けた一年だった。
ロシアによる攻撃から逃れるため2022年4月、ウクライナ東部ハルキウから家族と離れ、たった一人、日本に避難してきたレナさん。これまで、番組ではレナさんの生活をたびたび紹介してきた。
一時的な滞在先となっていた群馬県富岡市の佐藤さん一家に見送られ、おととし6月、レナさんのことを知った熊本市にある動物病院の院長のもとに。
動物好きということもあり、動物看護士の国家資格取得を目指し、専門学校に入学するため、日々勉強に励んでいた。しかし去年11月、取材班が久しぶりに動物病院を訪れると、そこにレナさんの姿はなかった。
徳田院長
「今、病院のほうに入院しています。精神的にダメージを受けていて、落ち込むことが多いらしくて」
支援者 佐藤裕さん(去年11月)
「やっぱり一番は国(ウクライナ)が戦争が終わらずに、一向に先が見えない不安」
不安やプレッシャーにより、体調を崩してしまったというレナさん。結局、入院はおよそ1カ月にもおよんだ。
そして今月、まだ体調が万全ではないなか、レナさんは専門学校の入試に臨んだ。生物や英語、問題はすべて日本語で出題される。
2週間後、レナさんの受験結果が出たというので訪ねてみると、結果は見事合格。心に傷を抱えながらも、夢に向かい、大きな一歩を踏み出したレナさん。
レナさん
「(試験に受かったことで)私の両親、少しは安心できると思います。まだ(私は両親を)助けることができない。多分、看護師になったらできるかもしれない」
そしてもう一人、ウクライナから避難してきた日本で、新たな夢を見つけた人がいる。
■夢へ向け…アイドル活動する女性
2022年6月、家族5人でウクライナのハルキウ州から宮崎市へ避難してきたイエヴァさん(17)。ダンサーを夢見ていた彼女だが、その夢もロシアの攻撃により奪われた。
14歳で祖国を離れ日本へ。落ち込むことが増え、踊る気力もわいてこなかったという。
しかし、転機が…。日本語の先生が、市内の芸能プロダクションのオーディションをすすめてくれたという。
イエヴァさん(当時16歳)
「わたしは踊るのが好きです。日本のことも好きです」
彼女のダンスを見た芸能プロダクションの社長は、次のように話す。
海汐プロダクション 海汐祐希社長
「やっぱり笑顔がすごくすてきなんですよ。『わたしを見て』というのが、すごく伝わってくるようなオーディションの時のダンスは、やっぱり印象にすごく残っていますね」
見事、オーディションに合格。そして、センターで踊っているのがイエヴァさん。「アジュガールズ」というご当地アイドルのメンバーとして、活動を始めたのだ。
イエヴァさん(17)
「わたしたちのことを多くの人に知ってもらい、とても大きいステージに出演し、ほかの人の生活をモチベート(刺激)できることを夢見ています」
奪われた夢が、祖国から遠く離れた日本で再び戻ってきた。
イエヴァさんは、いつか、ウクライナに帰りたいという思いはあるが、今は、夢を追いかけ、日本で活動をしていきたいという。
イエヴァさんが、新たな夢に向かって頑張る様子を、誰よりも近くで見てきた母・オレナさん(42)は、次のよう話す。
イエヴァさんの母 オレナさん(42)
「イエヴァの好きなことやっている私の気持ちはうれしい。ハッピー。イエヴァが幸せだと、私も幸せ。子どもがうれしいと幸せ、お父さんとお母さん、もちろんうれしい」
日本で、新たな夢に向かって歩き出したレナさんとイエヴァさん。しかし…。
トランプ大統領
「私たちは(ウクライナから)資金を回収するつもりだ。なぜなら、それは公平ではないからだ」
トランプ大統領により、停戦の兆しが見えてきた一方。ウクライナに対し、これまでアメリカ政府が投入してきた支援の見返りを求めるなど、過激な発言を繰り返す様子を彼女たちは、どう受け止めているのだろうか?
レナさん(24)
「(Q.トランプ大統領が紛争を解決すると話をしていて、なにか期待することは?)何もないと思います。わたしはニュースを見ていない」
イエヴァさん(17)
「私も見ない。プーチンのニュースは見ないです。毎日ポジティブに考えます」
停戦交渉の話は知っているが、あえてニュースを見ないようにしているという。
ロシアによる攻撃が続くなか、日本の避難民への支援は、どうなっているのだろうか?
■ウクライナ避難民…日本政府の対応と課題
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから3年。日本に避難してきた人への支援にも変化が起きている。
出入国在留管理庁によると、岸田文雄前総理大臣が受け入れを表明した2022年3月2日から、ウクライナからの避難民の数は増え続け、今年の1月31日時点で、その数は2747人となった。
ウクライナに帰国したり、他国へ行った人もおり、現在は1982人ということだ。
去年、日本財団が18歳以上のウクライナ避難民に「帰国の意思・希望」について行ったアンケートでは「できるだけ長く日本に滞在したい」が44.4%、「ウクライナの状況が落ち着くまでは、しばらく日本に滞在したい」が27.1%で、7割以上が「日本に滞在したい」と回答。定住を希望する人も、増加している。
そんななか日本政府からは、生活費支援として1日2400円が最長2年間支給されている。
去年4月から「定住支援プログラム」を実施。例えば、昼間コースは、期間は週に5日で、半年間。日本語の読み書き、会話などの「日本語教育」や、日本での生活に必要な制度や習慣について勉強する「生活ガイダンス」の授業が受けられる。
また、1人暮らしで月4万円までの住居費など、様々な支援も受けることができる。しかし、このプログラムは、1回きりしか受けられないそうだ。
一方、民間では、日本財団が身元保証人のいるおよそ2000人の避難民に対し様々な支援を行っている。
生活費は年間100万円。日本語学校奨学金として、実費を給付。家具などを購入するための住環境整備費として、1戸につき50万円。渡航支援や帰国支援も行っている。
また、NPOなど、避難民を支援する団体への資金助成も行っている。
このうち、生活費に関しては最長で3年受け取れるが、既に受付は終了しており、来年の4月までに順次支給を終了するそうだが、生活相談や日本語教育、就労支援などは継続して行っていくそうだ。
ちなみに、政府の支援と、日本財団の支援を同時に受けることはできない。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年2月25日放送分より)
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