フランスでは現地時間4日、バルニエ内閣に対する不信任案の採決が行われ、可決する見通しです。
きっかけは、財政赤字の削減を盛り込んだ来年度予算案の採択をバルニエ首相が強行したこと。これに左派と極右が手を組み、ノーを突きつけました。
極右『国民連合』 ルペン前党首(2日)
「フランス人は、もう、うんざりなのです。不当な扱いにうんざりしているのです。『バルニエで変わる』と信じる人もいたが、実際は、さらに悪くなった」
極左『不服従のフランス』 パノ党首(2日)
「今日の政治混乱は、バルニエ内閣とマクロン大統領のせいです」
極右と極左の呉越同舟に閣僚からは、こんな声が上がります。
フランス ルタイヨ内相(3日)
「まるで“鯉とウサギの結婚”です。ルペンさん、あなたはどんな了見で、ご自身の党の票と極左の票と混ぜ合わせるのか」
7月に決選投票が行われたフランスの総選挙で、マクロン大統領率いる与党は敗北。連立内閣の首相に担ぎ上げられたのが、少数派の中道右派・バルニエ氏で、そもそも政権基盤は脆弱でした。
そして、もう一つの大国ドイツでも、政治の混迷が深まっています。
就任以降、3党による連立政権を維持してきたショルツ首相。先月、財政政策などをめぐって対立が深まり、連立政権が崩壊。来年2月に総選挙が行われる見通しです。
今週、キーウを訪れ、「いつまでもウクライナを支える」と強調したショルツ首相。しかし、そこに立ちはだかる人物がいます。
NATOという枠組みにも、ウクライナ支援にも消極的なアメリカのトランプ次期大統領。
しかも、政治状況は、メルケル首相が対峙した時代とは大きく異なります。
在任中、ほぼ5割以上の支持率を維持してきたメルケル首相。それに対し、ショルツ氏は、ドイツ統一以降、最も不人気な首相です。その末に、連立政権が崩壊しました。
そして、フランスでも内閣崩壊の危機。共通するのは、現状に対する不満です。
パリ市民
「年金を賃上昇だけでなく、インフレにも連動するよう訴えています。そうでなければ、私たちは下降の一途をたどってしまう」
パリ市民
「私たちは、統治不能な状態の国にいます。選挙に負けた方が、今も統治しているのですから…」
人々の不満が、極右や極左の台頭という潮流を生んでいます。
パリ市民
「不安です。昔は、みんな仲良く、豊かに暮らしていたのに、いまは理解し合えないグループに分かれ、混乱を巻き起こしている」
パリ市民
「将来の選挙で、極右と極左の決戦投票になってもおかしくないし、そうなったら大変です」
フランス・国民議会の議事堂にいる、パリ支局・神志那諒支局長に聞きます。
(Q.現在はどんな状況ですか)
神志那諒支局長
「議事堂には、ヨーロッパ中心に多くのメディアが集まっています。内閣不信任案が可決されれば、62年ぶりということもあり、特番体制を組んでいるメディアもあります。不信任案の審議は、1時間半後ぐらいに始まります」
(Q.極右政党の躍進で、ヨーロッパの民主国家のなかで流動化が加速している印象を受けますが、どう思いますか)
神志那諒支局長
「フランスやドイツでは人種差別につながる懸念もあるとして、極右政党に抵抗感を示す市民も多いです。ただ、それ以上に物価の高騰などで生活が苦しいと感じている市民が多く、政権への不満につながっています。以前、取材したフランスの30代の農家は『燃料代や電気代の高騰などで赤字が続き、貯金を切り崩しながら生活している』と話していました。そうしたなか、極右政党は、年金の増額や電気料金の値下げなど“人気取り”ともいえる政策で支持を拡大しています。そして今週末には、アメリカのトランプ次期大統領が、当選後初の外遊先としてフランスを訪問します。トランプ氏はウクライナ支援に消極的とされるなかで、ヨーロッパが政治的混乱に陥っています。そんななか、トランプ氏とどう対峙していくのか、不透明な状況になっています」
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