中国ではインフラの過大投資が相次ぎ、地方の政府は2000兆円ともいわれる巨額の債務を抱えています。その実態と今後の行方、日本への影響を探りました。
■“2000兆円”巨額債務の影響は
高速道路の真ん中を迷いなく歩く人々。2017年、中国・貴州省に作られた道路。去年開通するまで使われていませんでした。
住民
「(Q.なかなか開通しなかったのは政府にお金がないから?)その可能性がある。具体的には分からない」
中国で目の当たりにしたのが過大なインフラ投資事業の事例です。
雲南省昆明市郊外に作られた駅。入口は高い塀でふさがれていて、中に入ることができません。地元メディアによると、駅を建て終えた後、採算が取れないことが分かったため使われていないといいます。
住民
「人があまり多くないからだろう。惜しいと思ってもしょうがない。走っても電気の無駄だよ」
別の駅でも…。こちらも完成後、一度も使われることがなく、市民の憩いの場になっていました。こうした駅は中国全土で20以上に上っているとみられます。
駅に合わせて建てられたマンションも…。
住民
「とても少ない。部屋は2000室もあるけれど、入居率は1%以下だと思う。本当にかなり無駄遣いだと思うわ」
過剰な投資を進めてきたのが、地方政府が出資した投資会社「融資平台」です。しかし、中国で不動産事業が低迷するなか、巨額の負債を抱え、地方政府の重荷になっています。その金額について、専門家の試算は…。
東京財団政策研究所 柯隆主席研究員
「100兆元で2000兆円ですから、天文学的数字」
資金不足で開発が滞るケースも起きています。道路標識は矢印だけ書いてあり、行き先が何も書いていない状態です。本来なら、こんな標識ができるはずでした。ところが途中で工事がストップ。行き先は今も書かれていません。
さらに、こちらの巨大な建物はかつて長距離バスのターミナルでしたが、今は宅配便の会社などが建物を使っています。バスターミナルは閉鎖される事態に。駐車場は自動車の教習所に変わりました。
不景気のあおりを受けるのは国民です。賃金の未払いも発生し、一部では抗議デモが起きています。
柯主席研究員
「怖いのがこの点が面に広がっていった場合、ただじゃ済まないので、そうなった時に大変なことになる」
景気の回復を中国政府に期待しようにも、簡単にはいかない事情もあるといいます。
柯主席研究員
「習近平政権の中には経済の専門家が一人もいないのがまず難しいところで、借金をたくさん抱えすぎていて、どっちから手を付ければいいのか分からなくなっている。恐らく右往左往して最終的に弱者を犠牲にしていく」
影響は中国国内だけにとどまりません。海外企業の「脱中国」が進むことで、日本には意外なメリットがあるといいます。
柯主席研究員
「日本に一部、特にハイテクの半導体などが来て調子が良くなっている。日本だけでなく、インド・ベトナム・インドネシア・タイなど企業の業績が急に改善しているわけです」
ただ、中国のマーケットに依存する日本の企業は業績の悪化は避けられず、対策が必要になるといいます。
一方で中国の李強首相は24日、不動産の不況について「困難や問題は想像より悪くない」として中国経済の先行きに自信があると強調しています。
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