【少子化対策】「1人500円」でも“実質負担なし”本当?……首相「増税ではありません」 賃上げが頼みの綱【#みんなのギモン】

【少子化対策】「1人500円」でも“実質負担なし”本当?……首相「増税ではありません」 賃上げが頼みの綱【#みんなのギモン】

政府の「異次元の少子化対策」で、全体の予算3兆6000億円のうち1兆円について、国民1人あたり平均で月額500円弱を負担する見通しとなりました。岸田首相は「実質的な負担は生じない」と言いますが、目論見通りに予算を確保できるのでしょうか?

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https://news.ntv.co.jp/category/politics/36a0f6bd826140d8bd26943daa7ee3a4

そこで今回の#みんなのギモンでは、「子育て支援“負担なし”本当?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●1人500円で何する?
●500円以上のケースも?

■首相は「実質的には負担は増えない」

加納美也子・日本テレビ解説委員
「『異次元の少子化対策』で、国民1人あたりの負担額が平均で月500円弱となる見通しが明らかになりました。岸田首相は『国民の実質的な負担は生じない』と説明していますが、野党からは7日の国会でも厳しい質問が飛びました」

立憲民主党の奥野総一郎議員
「1人最低でも月500円、年間6000円、世帯で見ればもっと1万円を超すというような支援金。国民に負担を求める子育て増税ではありませんか?」

岸田首相
「賃上げと歳出改革によって社会保険負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金の制度を構築いたします。全体として実質的な負担は生じないということを申し上げております。これは増税ではありません」

加納委員
「岸田首相は、賃上げなどで実質的には負担が増えないと説明しました」

藤井貴彦アナウンサー
「賃上げを目指して動いているのは様々な会社でもあると思いますが、だからといって全員が賃上げされるという状況に達するまではもう少し時間がかかりそうです。実質的な負担がないとまで言い切れるのかどうか、こういった疑問も出てきますよね」

■「月に500円弱」への受け止めは?

加納委員
「疑問がたくさん湧いてきます。街で皆さんに、500円弱という金額について聞いてみました」

子どもが1歳の会社員(30代)
「負担は結構大きくはなるので、それに見合った何か対策があるのであれば、いいなとは思うんですけども…」

子どもが5歳と1歳の会社員(30代)
「結構大きいですよね。児童手当とかで支給していただいたりしているのに、そこからまた出さないといけないのは、何なんだろうなって気はします」

未婚の会社員(24)
「現時点では自分はつらい。(手取りが)減らされちゃうっていうのはつらいんですけど、後々を見たらいいのかな?っていう部分はあります」

未婚の会社員(26)
「年収高ければ税金多く払ってる実態がある中で、なんか『またか』って感じはあるのかなと思います」

徳島えりかアナウンサー
「少子化対策はもちろん必要だと思う一方で、1人月500円、年6000円ぐらいと思うと、少なくはないので、何がどう使われて、きちんと効果を見せられるのか、というところが気になりますね」

■人口減で社会保障制度の維持も困難に

加納委員
「まずは、どんな少子化対策をやろうとしているのかを見ていきます」

「厚生労働省ホームページによると、日本の人口は2020年に1億2615万人でしたが、推計では50年後の2070年には8700万人まで減少する見通しです。しかも15~64歳の現役世代はぐんぐんと減り、65歳以上の高齢者の割合は増加していきます」

「子どもが増えないと、ドライバーや介護士など労働者はますます不足して、年金・医療・介護など社会保障制度の維持も難しくなります。とにかく日本の国民、全世代にとって少子化対策は待ったなしの課題です」

■「異次元の少子化対策」の中身と予算

加納委員
「政府が掲げる『異次元の少子化対策』をおさらいしていきます。まずは児童手当の拡充。所得制限を撤廃し、給付の対象年齢を中学生から高校生まで延長するなどします」

「さらに10万円の『出産・子育て応援金』や、親が働いていなくても時間単位で保育園などに通える『こども誰でも通園制度』の創設などもあり、こうした対策の予算は、最終的には年間3兆6000億円です」

「このうちの1兆円を『支援金制度』でまかない、こうした政策を行おうとしています。それが、国民1人あたり平均月額500円弱の負担になる見通しです。徴収は2026年4月からです。残りの2兆6000億円は、歳出改革や既定予算の最大限の活用で確保するということです」

■会社員なら…健保組合で保険料を上乗せ

河出奈都美アナウンサー
「岸田首相は『増税ではありません』と言っていましたが、1人月500円はどうやって集めようとしているのですか?」

加納委員
「私たちが支払う医療保険料に上乗せする形で、高齢者を含む医療保険料を払っている全ての人と企業などから集めます。会社員なら、加入する健康保険組合で定率で保険料を上乗せして集められる見通しで、加入する組合や年収で負担額は変わることが想定されます」

藤井アナウンサー
「私たち(会社員)はあまり、自分の給料からいくら、いろいろなものが引かれているか1つ1つ確認しないんですよね。そうすると、500円引かれたのかどうか分からないまま引かれているということが今後出てくるかもしれませんね」

■実際に負担する平均額の試算は?

加納委員
「続いて、500円以上のケースもあるのかについて考えます。実際にどれだけ負担することになるのか。日本総研の西沢和彦理事が、医療保険の加入者1人あたりが負担する平均額を試算しました」

「西沢さんによると、中小企業の会社員が入る協会けんぽ(全国健康保険協会)では月638円。大企業の会社員が入る健康保険組合で月851円、公務員の共済組合は月898円、国民健康保険は月746円です」

「協会けんぽ、健康保険組合、共済組合については勤務先と折半になるので、個人の負担は半額となります。また、所得が高い人ほど負担額がさらに増えることになります。会社員など現役世代の負担が大きい一方で、高齢者の負担は少なくなる見通しです」

刈川くるみキャスター
「納得できないまま支払うとしたら、たとえ500円だったとしても半額になったとしても、高いなと思ってしまいます。なぜ医療保険で上乗せという形になったのでしょうか?」

加納委員
「医療保険なら、75歳以上の後期高齢者を含めて広い世代からお金を集めることができるからです。有効な少子化対策で若い世代が増えれば、労働力を確保できるなど日本の経済全体にとっても重要な意味があります」

■物価高に追いつかず…賃上げできる? 

河出アナウンサー
「そのためにも、私も含めて若い世代が安心して子育てができるなという実感が欲しいんですよね。賃上げをして実質負担がないと(岸田首相は)言っていますが、実質賃金が下がっていることもあって、本当にそこを頼みの綱にして大丈夫?というのはありますね」

加納委員
「そうですよね。問題は本当に賃上げできるの?負担ないの?というところですよね。政府は今年、物価上昇を上回る賃上げを実現させると繰り返し強調していますが、そのメドは見えていません」

「実際、今は物価高に賃上げが追いつかない状態が続いています。仮に大企業は賃上げできたとしても、中小企業などは賃上げが実現できるか不透明ですし、決して約束できるものではないですよね」

■国民が理解できる誠実な説明を

藤井アナウンサー
「実際に新しいことをすると、政策であろうと会社の方針であろうと、必ず『それはどうなんだ』と言う人は出てくると思います。ただ、そう思う方もやる気にさせる、頑張っていこうと思わせるためには、どう伝えるかがとても大切です」

「少子化対策という言葉がありますが、子どもを産んで、これからの世代を支えるための労働力のような扱い方にして数字だけ上げても、絶対、新しく子どもをつくろうなんて思ってくれるはずもないんですよね」

「本当に子どもを産んでも大丈夫なのか、育てられるのか。安心できるような方法を作ってもらいたい。そのためならば月500円は安いんじゃないの?と思えるくらいになればいいと思います」

「人口の多さというのはある意味、国力に比例してくるところがあります。ですから、数字だけを上げようという気持ちになってしまうところもあるかもしれません」

「ただ、一生懸命1人の子どもを育てて、この子の人生が楽しくなるように、と親の気持ちがどんどん注がれていきます。その過程で、きちんとしたお金が使われるような仕組みをぜひ作って、説明してもらいたいと思います」

加納委員
「まさに今、少子化対策と子育て支援は、社会全体で支えていく仕組みに変わろうとしています。しかし、それを実現するには国民の理解が何よりも重要です。聞こえのよい説明で終わらせず、政府には国民が理解できる誠実な説明が求められています」
(2024年2月7日放送「news every.」より)

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