「政府の立場」連発の官房長官を更迭か 公邸から出た黒い車に乗っていたのは…(2023年12月9日)

「政府の立場」連発の官房長官を更迭か 公邸から出た黒い車に乗っていたのは…(2023年12月9日)

自民党の最大派閥・安倍派の幹部が、政治資金パーティーで集まった金の一部を「裏金」としていた疑惑が自民党を揺るがしています。

注目は、内閣の「要」とされる松野博一官房長官。岸田総理大臣が更迭を検討しているとされていますが、9日夜、松野氏らをめぐり「密談」が行われた可能性があることがわかりました。総理公邸を出てきた黒い車に乗っていたのは……。 9日午後5時半、総理公邸に車がつけられました。降りてきたのは、この日、長崎での核軍縮関連の催しに出席した岸田総理。そそくさと公邸内に入っていきます。

そして約3時間後……。

飯山雄矢記者:
麻生副総裁を乗せた車が総理公邸から出てきました。岸田総理と松野官房長官の進退や今後の政権運営について協議したものとみられます。

報道陣が押し寄せた総理公邸から出てきた黒い車。後部座席に乗っていたのは、黒っぽい帽子を目深にかぶった麻生太郎・自民党副総裁でした。どんな話をしていたのか、今は推し量るしかありません。

安倍派の政治団体「清和政策研究会(清和会)」の政治資金パーティーをめぐっては、各議員に割り当てられた「ノルマ」を超えてパーティー券を販売すれば、その分が売った議員個人に「キックバック」されたとみられています。問題なのは、複数の派閥幹部議員が、それを政治資金収支報告書に記載していなかった疑惑があること。内閣の「要」とされる官房長官を務める松野氏にも、およそ1千万円を収支報告書に記載しなかった疑惑が浮上しています。

なぜ松野氏が注目されるのか。
それは、松野氏が清和会の「事務総長」だったからです。事務総長は清和会の運営を担う立場。キックバックなどお金の流れを把握していた可能性が高いとみられているのです。

では、松野氏とはどんな政治家なのでしょうか。

民間企業を経て2000年に衆議院議員に初当選。第2次安倍政権が森友・加計学園問題で揺れているときに文部科学大臣を務め、岸田政権が発足したおととし10月、官房長官につきました。選挙区は、市原市などを含めた千葉3区。衆院選は8回連続当選しています。地盤の千葉では、今回の疑惑がどう見られているのか。実際に訪ねてみました。

20代男性:
投票って国民の信頼だから、その信頼を無にしている。これ以上だったら恥をさらさないでくれって。

厳しい言葉が続きます。一方、松野氏に投票したという人も……。

70代女性:
誠意が足りないなって。やっぱりちゃんと明らかにしてほしい。

支持者でも、残念に感じているようです。

官房長官として平日は毎日、記者会見を開いている松野氏は「裏金疑惑」の報道が出てからも、徹底して正面から答えることを避けてきました。

「政府としてお答えすることは差し控えさせていただきます」(7日の会見)
「この場は政府の立場としてお答えしているものと認識しています」(7日の会見)
「政府の立場として、個々に関するお答えは差し控えるべきだと認識しています」(8日の参議院予算委員会)

政府の屋台骨、官房長官が更迭されるのは、きわめて異例なことです。もし松野氏が退けば、19年前、2004年、年金問題をめぐって辞めた、福田康夫氏以来の、現職官房長官の辞任となります。

「裏金」疑惑は、自民党の中枢に広がっています。その一人、世耕弘成・自民党参院幹事長は9日、党会合で講演しました。

「お詫びから始めさせていただかなければなりません。私の所属する政策集団と、私に関しても、パーティー券についての疑惑が報道をされております」「このことによって国民の皆さんの政治不信を非常にかきたてているということについては本当に申し訳なく思っています」

まずは参加者への謝罪から始まりました。しかし、疑惑の目が向けられている中……。

「私の立場で発言をすると捜査そのものに影響を与えかねないということで、なかなかご説明できない状況にあります」と、疑惑についての説明は避けました。

世耕氏は講演後、報道陣の取材にこたえ、「これは国民の政治不信を招くことになっている。大変厳しい影響が出てくるだろうと思いますし、私自身もその責任の一端を感じているところであります」と話しました。

党内での疑惑の嵐に、政権へのダメージはどうなるのでしょうか。

テレビ朝日政治部の澤井尚子記者は、「(岸田政権の)支持率は危機的な水準に下がっていました。今回の政治と金の問題は自民党全体を揺るがす問題で、対応を間違えると内閣総辞職までちらつく状況です」と説明します。澤井記者は、松野氏が更迭された場合、後任選びは難航するとみています。

「政治とカネの問題での更迭となれば、後任には、クリーンな人を選ばなければなりません。難しいのは、今回の疑惑は官房長官だけにとどまらず、他の閣僚や自民党幹部などすでに多くの名前が挙がっていることです。いわゆる身体検査が相当難しいということです」

連日、新たな事実が判明する政治資金問題、火種は当分くすぶり続けそうです。

◇◇◇

高島彩キャスター:
松野官房長官が近く更迭される可能性が出てきましたが、裏金疑惑が浮上しているのは、松野さんだけではありません。

板倉朋希アナウンサー:
「疑惑の6人」ですけども、西村さんは、経済産業大臣、萩生田さんは自民党の政調会長など、いずれも政権や党の要職についている人ばかりです。そして、6人は自民党最大派閥の安倍派の幹部でもあります。今後、どこまで捜査が及んでいくのか、政治資金問題に詳しい法政大学大学院の白鳥教授に伺いました。まず、松野さん、西村さん、高木さんは派閥運営の実務を仕切る「事務総長」経験者だったことから、「お金の流れを知らなかったというのはあり得ない」と指摘しています。さらに、「金額も1000万円単位で記載漏れの可能性がある人もいるということで、悪質性が高い上に額も大きいことから特捜部も捜査に本腰を入れるのではないか、政治家本人まで捜査が及ぶ可能性も否定できない」としています。

高島彩キャスター:
こういったお金が何に使われていたのかを、どこまで追求できるのかというのも注目されますが、柳澤さん、そもそも裏金というのは政治家にとってどういったものなんでしょうか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
本来だったら政治資金収支報告書の中に記載しないといけないわけです。記載していないということは、表にしたくないという金、有り体に言えば「やましい金」というふうな言い方もできるかもしれない。こういった裏金については入りだけではなくて何に使ったのか、とても重要なんですよね。金の流れの追及次第では新たな展開も十分予想されますね。

高島彩キャスター:
お金の流れの中で、キックバックを受けた疑いというのが次から次へと出てきていますけども、これは…

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
最大派閥の安倍派と言っても、安倍元総理に近いグループと距離を置くグループがあって、決して一枚岩ではないんです。今回名前が出てきている政治家というのは、安倍元総理に極めて近い人たちなんです。そういった派閥内の事情が今回の疑惑にどういうふうに関係しているのか、してないのか、その辺も気になるところですね。

高島彩キャスター:
今のところ不誠実な対応というのが続いていますが、早く国民が納得のいく説明を聞かせて頂きたいと思います。

(サタデーステーション取材班)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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