【報ステ解説】カギは“経済事情”“中東問題”中国の狙いは?1年ぶり米中首脳会談(2023年11月16日)

【報ステ解説】カギは“経済事情”“中東問題”中国の狙いは?1年ぶり米中首脳会談(2023年11月16日)

アメリカ・サンフランシスコで15日、1年ぶりとなる米中首脳会談が行われました。

アメリカ バイデン大統領:「首脳同士が誤解なく理解し合うことが重要だからこそ、この話し合いを大事にしたい。“競争”が“紛争”にならぬよう、双方が責任を持つこと。それがアメリカの望みであり、私たちの狙いです」

中国 習近平国家主席:「中米のような2つの大国は、付き合わないわけにはいかず、相手を変えようとするのは非現実的で、衝突と対抗がもたらす結果には誰も耐えられない。この地球は中米両国を受け入れられる。中米それぞれの成功は、お互いにとってのチャンスです」

4時間行われた首脳会談。休憩中は庭園を歩き、2人きりの時間も作られました。中国外交部、華春瑩報道局長によると、こんな場面もあったといいます。バイデン大統領は、かつてサンフランシスコを訪れた習近平国家主席の写真をスマホで見せ、こう話しかけました。

バイデン大統領:「この若者に見覚えは?」
習主席:「もちろん。38年前の写真ですね」

貿易摩擦に台湾問題など、アメリカと中国の関係は過去最悪な状態が続いています。特にペロシ元議長の台湾訪問以降は、様々な交渉チャンネルが閉じられていました。そのうちの1つはドラッグの『フェンタニル』に関してです。フェンタニルはモルヒネより強い鎮痛剤ですが、アメリカで乱用が大問題になっていました。主な製造・輸出元は中国ですが、規制について話し合っている最中、関係悪化でチャンネルが閉じていました。しかし、今回…。

習主席:「麻薬取り締まりチームを立ち上げることに一致し、さらに協力し、アメリカでの麻薬乱用の対策に協力します」

また、安全保障でも軍同士の連絡窓口が再開しそうです。気球事件の時に中国側が電話に出ないなど、ここも悪化していました。

バイデン大統領:「米中は軍隊同士の直接的な連絡を再開します。途絶えていたため『不慮の事故や誤解が生じる』と心配の声が上がっていました。どちらかが読み違えれば、中国や主要国との深刻なトラブルが生じかねないので、ここでは大きく進展がありました」

その他にも経済や文化、ITなど多くの分野で合意に至ったとしています。

バイデン大統領:「『信ぜよ、されど検証せよ』が私の姿勢です」

ただ、CNNの記者が聞いたこの質問に対しては…。

バイデン大統領:「(Q.本日の会談を経て、習主席をいまだ『独裁者』と呼びますか)独裁者でしょう。1人で国を動かすという意味でいえば。中国は統治形態がまるで異なる共産主義国家ですから。とにかく進捗はありました」

◆“融和ムード”演出 中国の狙いは

中国の政治・外交が専門の学習院大学・江藤名保子教授に聞きます。

(Q.今回の首脳会談でどんな印象を持ちましたか)

江藤教授:「具体的成果よりも、良い関係を演出することに重きを置いた会談だったと思います。合意内容としては、軍同士の対話・薬物の規制・AIのルール共有など、いくつか出ていますが、いずれも元々、利害が一致する部分です。お互いの利害が一致しない部分については、踏み込んだ結論は出ていません。話し合いをするとして、入口に立ってはいますが、具体的な成果はまだ出てきていません。ひとまず、演出。特にリーダー同士の関係性を演出する場面が目立ったと思います」

(Q.バイデン大統領が、習主席の若い時の写真を見せる場面もありましたね)

江藤教授:「興味深かったですね。この写真は数日前からSNS上などに出ていました。中国では習主席の写真を勝手に流すことはできないため、恐らく意図的に流出されたのだと思います。それをアメリカ側が拾って、バイデン大統領が自分のスマホに入れて、話のきっかけにした。いわば、アメリカが応える形。さらに、同行している中国外交部の高官がSNSで広めると。お互いに歩み寄って、個人の関係性を演出していたと思います」

(Q.中国がアメリカとの距離を縮めた狙いはなんですか)

江藤教授:「第一に経済です。中国は今、経済が振るわない。大きな理由としては、不動産と失業率の高さ。特に都市部の若年層の失業率が高く、漠然とした不安が共有されています。こうしたなかで、アメリカとの関係を良くすることで、外国の企業が投資を回復してくれることを期待する。あるいは、国内の経済が喚起されることを期待する。それがひいては、習近平政権の外交成果につながっていきます」

江藤教授:「もう一つは、今じゃなきゃできない部分があります。来年1月には台湾総統選挙、3月にはスーパーチューズデー、秋にはアメリカの大統領選挙があります。アメリカはそれに向けて、より中国に融和的な姿勢が出しにくくなることを見越して、今年中にやったと」

(Q.イスラエルとハマスの中東問題で、アメリカが難しい立場にいることも影響しましたか)

江藤教授:「それは中国にとって非常にプラスに働いたと思います。この問題が生じたことで、中東とウクライナ戦争があるアメリカにとっては、台湾での緊張の高まりは避けたい。それに加えて、中東のキーアクターである、イランとの関係性。アメリカとイランの関係性はよくないですが、中国は今年3月、イランとサウジアラビアの国交正常化を仲介したように、イランと密接な関係を持っています。イランに効果的に働きかけることをカードとして、中国はアメリカから何らかの譲歩が引き出しやすい」

(Q.米中の関係安定化は期待できますか)

江藤教授:「安定するという意味にもよります。基本的にアメリカと中国は、中長期的な目標が一致していません。なぜなら、中国は経済的・技術的にアメリカに追い付きたい。アメリカは追い付かれたくないので、中国を押しとどめようとしている状況です。これはずっと続く構造的な競争です。今回も双方は『競争を管理する』と言っています。すごく仲良くなって密接な関係ができるということではなく、競争を管理して安定させる。これが最大の目的だったので、安定はしますが、良くなるとは言えません」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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