“大西洋のハワイ”も緊迫 衛星が捉えた同時多発する山火事「負のスパイラル」指摘も(2023年8月20日)

“大西洋のハワイ”も緊迫 衛星が捉えた同時多発する山火事「負のスパイラル」指摘も(2023年8月20日)

史上最悪の山火事が続くカナダでは、2つの都市に火の手が迫っています。
ハワイやスペインなど、世界中で同時多発的に発生する山火事。
番組は、なぜ山火事が頻発しているのか検証しました。

■カナダ2都市に炎迫る…現地に残る日本人は

(CNN)「カナダの山火事は非常に深刻な事態となっています。ある州の当局者は、この48時間で、かつてなく最悪の状態になったと述べました」
炎が迫っているのは、カナダ北部のオーロラの街・イエローナイフ。3つの方向から街を取り囲むように迫っていて全住民のおよそ2万人に避難命令が出されました。
一時、幹線道路が大渋滞するなどの混乱が起きましたが、軍用機による移送なども行い、これまでに1万9000人以上が避難したといいます。
市街地までおよそ15kmまで迫っているという炎。今も現地に残る日本人に状況を聞きました。
(イエローナイフ在住の日本人)「ほぼゼロと言っていいほど開いているお店はありませんし、歩いている人も町歩いて1人2人すれ違うかくらいで、車も通っているのは片手で数えられるくらいですかね。きのう一昨日と雨も降っていますし、今時点では落ち着いているのかなと思います。今後天気によっては変わると思うんですけども」
一方、退避期限ギリギリの18日当日にバスで空港に向かい、飛行機で避難できた日本人にも話を聞くことができました。
高柳さんは、前に住んでいたカルガリーでも山火事を経験していたので、直前まで危機感はなかったといいます。
(飛行機で退避した高柳美緒さん)「カルガリーでもけっこうひどい煙が来ていたので、慣れた感じで。そんなに濃くもなかったですし、その時は危機感は無かったかなと。避難するかどうかも迷ったんですけど、やっぱり安全第一という事で飛行機がちゃんと出ている間に逃げておこうかなと」

さらにカナダでは、西部のブリティッシュコロンビア州のケロウナでも大規模な火災が発生し、非常事態宣言が発令されています。
(ブリティッシュコロンビア州 イービー首相)「現状は厳しいものです。現在約3万5000人に避難命令が出ています」
「火がすごい勢いで山腹を降りて行っている。これは…なんて言えばいいのか分からない」
森に設置された定点カメラの映像を見ると…
風にあおられた炎が瞬く間に森を焼き尽くしています。こちらはNASA・アメリカ航空宇宙局が公開している世界中の火事の発生状況をモニターできるサイト。16日にはまだ小さかった炎が数日で一気に広がり、湖の対岸にまで達していました。
このサイトでカナダ全体をみると、ケロウナとイエローナイフ以外でもあちこちで山火事が発生していることが分かります。元々、山火事が多いカナダですが、今年の焼失面積は8月時点ですでに例年のおよそ6倍になっています。

■世界中で山火事…“負のスパイラル”懸念も

さらに山火事による被害はスペインのカナリア諸島でも…消火活動を行うのは軍の飛行艇です。
“大西洋のハワイ”と呼ばれるリゾート地で多くの観光客が訪れるカナリア諸島のテネリフェ島。
(地元住民)「本当にひどい状況だった。きょうは少し落ち着いているように見えるがきのうの夜は火の海だった」
15日に発生した山火事が今も広がっていて、住民ら1万2000人以上が避難する事態となっています。

一方、8日に発生した山火事で街が廃墟と化したハワイ州のマウイ島。
これまでに確認された死者は114人。災害救助犬が投入され今も行方不明者の捜索が続いています。猛暑が続き、世界同時多発的に起きている山火事。

(日本大学 生物資源科学部 串田圭司教授)「常に世界のどこかで火災が起きている。日本の面積くらいがアフリカでは毎年燃えている」
このように話すのは、人工衛星の観測データを使って世界の森林火災を研究する専門家です。
NASAが公開したデータを見ると2000年3月から20年以上毎月、世界のどこかで火事が観測されています。
(日本大学 生物資源科学部 串田圭司教授)「アフリカがCO2放出量の半分くらいを占めている。北半球の夏はシベリアや北米で火災が起きている。オーストラリア、インドネシアなども火災が起きている」
こちらのリアルタイムで火災発生状況を把握できるサイト。特に目につくのが…
アフリカ大陸の南部。真っ赤なホットスポットが集中しています。
(日本大学 生物資源科学部 串田圭司教授)「この点の半分くらいは実際の火災だったと検証されています。」
世界各地で相次ぐ大規模火災。例年にない高温、乾燥、強風が引き起こしたものだとみられています。この状況が続くと、二酸化炭素を吸収する森林の再生が追い付かず、より事態を悪化させる可能性があるといいます。
(日本大学 生物資源科学部 串田圭司教授)「(森林が)元通りになる前にもう1回火災が起きるということが起きているのではないかと。そうしますとそのCO2はさらなる温暖化を引き起こすことにつながる。さらなる温暖化はさらなる乾燥を多くもたらして極端な乾燥をもたらして、森林火災を起こすと。そう考えると循環する“負のスパイラル”というものが大変危惧される」

8月20日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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