立ち退き迫る黒服の男たち 嫌がらせ恐怖“家族分断”も…“地上げ”不動産会社を直撃(2023年6月7日)

立ち退き迫る黒服の男たち 嫌がらせ恐怖“家族分断”も…“地上げ”不動産会社を直撃(2023年6月7日)

 東京都内で地上げが目的とみられる悪質な立ち退きトラブルが相次いで確認されています。番組の取材で「黒い服の男たち」の存在が浮かび上がってきました。

■騒音にごみ散乱…地上げ業者“嫌がらせ行為”

 住宅の周囲に張り巡らされた、こうこうと光る電飾に、赤色灯。発電機の騒音が近隣に響き渡ります。これは、住人に立ち退きを迫る地上げ業者が行った嫌がらせ行為です。

 ターゲットになっているのは、高齢者が住む2軒の家。周りを白い幕で囲われ、日差しが遮られています。玄関前には、バリケードが立てられ、「借りたものは返せ!」といわれのない貼り紙も貼られています。

 嫌がらせが続くなか、悲劇も起きていました。

 母親を亡くした男性(30代):「父から私の携帯に電話が入り、第一声で『お母さんが死んじゃった』と。本当にストレートに怒りしかない」

 地上げを巡るトラブルで、都内の閑静な住宅街が揺れています。

 現場は、東京・練馬駅から徒歩5分ほどの閑静な住宅街にありました。

 雑草が伸び放題の空き地に、たくさんのバリケード。その隣に、2軒の住宅が空き地を挟んで立っています。

 バリケードと住宅の間には大量の家庭ごみが捨てられ、虫が湧いていました。近隣住民はこう話します。

 近隣住民:「すごく汚い。ごみがたくさん捨てられていてちょっと怖いなと思っていた。ここは避け向こうを通ったりしていた」「クリスマスじゃあるまいし。電気をカチカチ。あれでは眠れないのではないか」

 昼間は、ごみが散乱した様子が目につき、日が沈むと夜明け頃まで電飾が光り、発電機の音もうるさかったといいます。

■“黒服の男”座り込みに付きまとい…BBQも

 このような行為をしたのは一体、誰なのでしょうか。道路に面する家に住む高齢の夫婦に話を聞くことができました。

 住人の男性(82):「地主が(土地を)会社に売って(業者が)突然来て、『ここ俺たちのもんだから出ていけ』と」

 元々この一帯は、1人の地主が所有する土地で、複数の世帯が土地を借り、家を建てて暮らしていました。

 男性は、60年ほど前から住んでいるといいます。しかし、2、3年前から黒い服の男たちが現れ、嫌がらせを始めたというのです。

 公園に座り込み、住宅をじっとみつめる4人の黒い服を着た男たち。

 黒い服を着た男たち:「今晩はカレーだな!」

 男たちは、日中、住宅を監視するように座り込み、わざと住人に聞こえるように大きな声で話したり、「借りたものは返せ!」と張り紙を貼ったり、外出する際には、つきまとったりしたといいます。

 住人の女性(75):「私も買い物行くとき後をついてくる。若い人。ここに自転車置いてあって、スーパーを出たらそこで待っている。『返してくれ、返してくれ』と言いながら、土地を。怖いわよ」

 住宅の周囲には白い幕が張り巡らされ、見通しも風通しも悪い状態にされてしまいました。

 住人の女性:「白い幕を張っていた。全部ずっと。もう日も当たらない」

 夜になると、黒い服の男たちは2軒の家の間に、ソファーなどを持ち込み、バーベキューパーティー。白い幕にプロジェクターでサッカー中継や映画を流し、ワールドカップの時期には、毎日のように大騒ぎしていたといいます。

 住人の女性:「ライトで向こう(の家)を照らして、すごいモーター回してバーベキューしていた。10人くらいで、夜」

 住人の男性:「眠れないんですよ。イルミネーションと音楽を鳴らして。『あんたたち地上げ屋じゃないの?』と言ったら『そうだ』と自慢げに言う」

 夫婦は、数年前に地主に対して更新料を支払ったばかり。2036年まで土地を借りる契約を結んでいるため、立ち退きを拒んだところ嫌がらせがエスカレート。

 男性は退職金を使い、家を建て替えていて“ついのすみか”にするつもりでした。

■家族を分断 命絶った母…「怒りしかない」

 黒い服の男たちに嫌がらせを受けたもう一つの家では、最悪の事態が起きていました。

 取材したのは、この家に住み、独立した30代の男性です。玄関までの道は、以前はきれいに舗装されていましたが、土地をぐるりと囲うようにバリケードを使い、コの字型の細い道に変えられてしまいました。

 住人の男性:「まともに歩けないようにこんな状態で、全部迷路みたい。回っていかないと家に着かない」

 道には雑草が生え放題。雨でぬかるむ土の道で、夏場は虫が湧くといいます。

 住人の男性:「人ひとり歩くのが精一杯。病気になった時に救急隊員が来てもストレッチャーとか入れない。そういう心配もある」

 迷路のような道の先にある男性の実家に入らせてもらうと、あるものが目に入ってきました。

 住人の男性:「ここが仏壇になります」

 数々の嫌がらせが続くなか、おととし、男性の母親は自ら命を絶ちました。78歳でした。

 母親を亡くした男性:「やっぱり孫を連れてくると、本当にいつも喜んでくれて。(孫に)会うのを楽しみにしていたので、もうちょっと会わせてあげたかった」

 男性は、母親への後悔の念を口にします。

 母親を亡くした男性:「(母は)心配させたくないというのもあったと思う。あまり僕のほうには言ってこなくて。実家にたまに来ても、つらそうな雰囲気は出さずに『こんなこと今やられていて、本当に頭に来ちゃうわ』と、愚痴をこぼすように言っていた。そこまで真剣に悩んでいるそぶりは見せなかった」

 息子に心配を掛けたくない一心だったのか、軽い口調で打ち明けていたという母親。男性によると、地上げ目的の嫌がらせが、家族の分断を生んでいました。

 母親が「嫌がらせをするような人たちとは、早く関係を断ち切りたい。出ていきたい」と訴えるなか、父親は「嫌がらせは気にする必要はない。住む権利はこちらにある」と意見が分かれ、母親は悩んでいたといいます。

 母親を亡くした男性:「父から私の携帯に電話が入り、第一声で『お母さんが死んじゃったよ』というふうに急に言われて、全然意味が分からなくて。職場から警察に行くまで電車を乗り継いでいったが、その時は頭の中が真っ白で。電車に乗っている時に、涙をこらえるのが大変だった。あまりにも急だったので」

 その後、警察や弁護士と話をするなかで、数々の嫌がらせについて詳しく知らされました。

 男性は、母親が自ら命を絶った一番大きな原因は、嫌がらせだったと感じています。

 母親を亡くした男性:「母を追い込んだ地上げ屋に対して、ストレートに怒りしかない」

 母が好きだった鉢植え。2年経った今、枯れてしまっても捨てることができないといいます。

■別の地上げトラブルも 高級住宅街に“生魚”

 住人たちに嫌がらせを行ってきた黒い服の男たちは、一体、何者なのか。

 番組が土地の登記簿などを調べると、5年前にこの土地を持つ地主が亡くなり、相続した息子から大阪の不動産会社・A社に一帯の土地の所有権が移っていたことが分かりました。

 この会社は去年11月、番組が取材した別の地上げトラブルがあった土地を所有する会社と同じでした。

 マンションの入り口にスプレーで書かれたとみられる「持久戦」「バンザイ」という乱雑な文字。「干物」と書かれた先には、複数の魚がつり下げられ、地面には「卵育て中」という文字とともに、生卵が。家電製品などのごみも散乱していました。そこは、都内でも屈指の高級住宅街、港区・白金台です。

 このマンションでは所有者がA社に代わった後、男たちが訪ねてきたといいます。

 元住人(33):「いきなり(新しいオーナー会社が)夜来て、書類を持って来て、ここにハンコ押してくれと。賃貸者契約を解消するのでと。唐突でしたね。もう、きょう押してくれと。考えますって言ったんですけど、いやダメだって」

 元住人の男性は、30分以上男たちに玄関先で居座られたため、泣く泣く立ち退きを承諾したといいます。その後、立ち退かない住民に対しても嫌がらせが始まったのです。

 元住人:「肉とか魚が干してあって結構ハエも飛んでいて、傷んでいるなという感じです。干物ではないです。水分が抜けていないので。生魚・生肉臭かったです」

 近隣住民は、マンションの前で不審な動きをするスーツ姿の男たちを目撃していました。

 近隣住民:「夜9時、10時ごろに見たことあります。魚をつるしていたころは日替わりじゃないですけど、色んなものを少しずつ積み上げて、座り込んでたばこを吸ったり、携帯で電話したりしていました。地上げをやっている会社がやっているということは聞いていました」

■不動産会社を直撃「嫌がらせは行っていない」

 現代では信じられないような嫌がらせ行為が行われていました。番組は、不動産会社・A社に電話やメール、訪問を重ね、直接話を聞くことができました。

 A社の会議室に通されると、2人の男性幹部が表れました。

 幹部:「(Q.地上げ行為はしたのですか?)“地上げ”というのは貸したものを返していただく。ただ、それだけの話です」「(Q.練馬の公園に座っていた4人組の男は、御社の従業員ですか?)うちの従業員だと思います」

 黒い服の男たちは、会社の従業員だと認めました。では、なぜ嫌がらせ行為をしたのでしょうか。住人から証言を得た9つの嫌がらせについて、それぞれ話を聞くと次の答えが返ってきました。

1.電飾について
 幹部:「(Q.電飾をつけたのはなぜですか?)うちの敷地なので何か問題があるのかなという認識です。クリスマスの日でイルミネーションの点灯は地域の方と交流を深めるためにさせていただきました」

2.サッカー中継・バーベキューについて
 幹部:「(Q.サッカー中継を白い幕に映したりバーベキューで騒いだりしたのは?)周りの方に見に来てもらったらどうかなと、させてもらった行為です。地域の皆さんに肉を食べていってもらい交流を深める目的でした」

3.赤色灯について
 幹部:「(Q.赤色灯は?)不審者が土地に入らないようにするためにつけました」

4.鉄骨と白い幕について
 幹部:「(Q.鉄骨と白い幕は?)どこまでが相手方の借地であるかなど明確にするために行いました」

5.住宅前の道について
 幹部:「(Q.住宅前の道をコの字型にしたのは?)残りの更地部分を有効活用するためにあのような形になりました」

 5つについて、行為自体は認めましたが、嫌がらせではないと主張。さらに、こう述べました。

6.家を照らしたことについて
 幹部:「(Q.投光器を住宅に向けて光らせたのは?)地面が暗いのでつけていました。たまたま風か何かで動いて、住宅のほうを向いたのではないでしょうか」

 眩しいライトが住宅に向いたのは、偶然起きたことだと言います。残り3つについては、行為自体を否定しました。

7.貼り紙について
 幹部:「(Q.『借りたものは返せ!』の貼り紙は?)うちの従業員は貼っていません。
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