【報ステ解説】同じ部屋にいるだけで“感染”…海外往来増加で『はしか』拡大懸念(2023年5月24日)

【報ステ解説】同じ部屋にいるだけで“感染”…海外往来増加で『はしか』拡大懸念(2023年5月24日)

発症すると赤い発疹が全身に広がり、高熱が出る『はしか(麻疹)』が、国内で感染が広がる懸念が指摘されています。

感染力が極めて強い、はしか。今年すでに、去年を上回るペースで感染が確認されています。

先月23日に同じ新幹線の同じ車両に乗っていた3人が、相次いで感染していたことが分かりました。インドから帰国した30代男性は先月27日、都内に住む30代女性と40代男性は今月10日と11日に、はしかと確認されました。3人に面識はありませんでした。

クリニック『ばんびぃに』時田章史院長:「はしかは、ウイルスが空気中をふわふわ浮遊していますので、ある程度、狭い空間に人数がたくさんいて、1人のはしかの方がいると、12~20人近くうつす可能性のある、非常に感染力の強いウイルス。治療薬が全くありませんので、2回のワクチン接種をしっかりやっていただくことに尽きる」

近年では、2008年前後や2018年前後に感染が広がった時期がありました。コロナ禍ではしかウイルスの流入も抑えられていましたが、今年は医師も危機感を強めます。

自分がワクチン接種を受けているかどうかは、抗体検査で確認できます。

検査を受けに来た人:「調べたら(ワクチン)1回だった。念のため(抗体)検査を。介護もしているので、ちょっと気になって」

厚生労働省は、ワクチンを2回接種していれば、感染を防ぐ十分な抗体を持っているとしています。ただ、任意のため、接種していなかったり、1回だけの人も多くいます。

加藤厚労大臣:「免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%(近くの人が)感染する。母子手帳で過去2回の麻疹(はしか)のワクチン歴が明らかでない場合、過去に感染したことがない場合は、予防接種の検討をいただきたい」

空気感染する、はしかの感染力は、新型コロナウイルス従来株の何倍もあります。

田伏純子さんの娘・文さんは、はしかウイルスによって引き起こされる『SSPE(亜急性硬化性全脳炎)』で闘病しています。

田伏純子さん:「国内のはしかは、なくなっているという状態だが、海外からの持ち込みはある。それを防ぐには、ワクチンしかない」

文さんはワクチンを打つ前、生後11カ月の時、はしかに感染し、治っていました。

田伏純子さん:「病気は本当にしないし、陸上とピアノと」

潜伏期間10年ともいわれる難病。高校2年の6月に、異変がありました。

田伏純子さん:「(娘が)寝たと思ったら起きてきて『お母さん、足がぴくっとする』と言うので『お母さんも、そういうことある。大丈夫』って言って。その次の日も同じように言って、すごく不安そうに言っていた。今思うと、それが痙攣(けいれん)の始まりだった。その間隔がどんどん短くなって」

文さんは、40代の今も寝たきりです。ワクチンの普及によって減少しましたが、SSPEは、はしかにかかった人の“10万人に1人”が発症します。

田伏純子さん:「だから仕方ないじゃないか、というぐらいの確率の希少難病。自分の身に起こった時、私はそれでも親だから、本人はどれだけ悔しいか。それを思うとやっぱり、確実な予防方法といわれる、ワクチンで防いでほしい」

“コロナ後”動き出した世界で、新たなウイルスを拡大させないために。私たちができること。

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“極めて強い”感染力 予防策は?
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はしかの発生状況は、コロナ直前の2019年は744例。それに比べると、現在は8例と圧倒的に少ない状況です。ただ、コロナ禍で人の接触が少なかった去年やおととしは1年間で6例だったので、今年は、わずか数カ月で数を上回っている状況です。

この現状をどう見ればいいのか。感染制御学が専門の大阪大学・忽那賢志教授に聞きました。

忽那教授:「流行はしていないが、極めて感染力が強いので、免疫がないと、すぐに広がる可能性がある」

流行につながる懸念材料として、人の流れが戻り、海外から持ち込まれる機会が増加。コロナ禍の病院控えで、1歳児のワクチン接種を逃した人が一定数いるということです。

(Q.極めて強い感染力とは、どれくらいなのか)

何も免疫を持たない状態で患者1人から何人に感染を広げるかを示す『基本再生産数』でみると、新型コロナ(従来株)は2~3人、はしかは12~18人となっています。

忽那教授:「免疫を持たない場合、感染者と同じ部屋にいるだけで、空気感染で“ほぼ確実”に感染するほど」

(Q.それだけ感染力が強いのであれば、感染者はもっと増えているはずでは)

はしかは1度感染すると、それ以降かかるリスクが下がる免疫を、すでに獲得している人が一定数います。また、生涯で2回、ワクチン接種すれば、十分な免疫を持つことができるとされ、50歳までの多くは“ワクチン免疫”をすでに獲得。十分な抗体を持っている割合は、日本全体で平均88.2%に達しているというデータもあります。

ただ、国が推奨するワクチンの定期接種は、年代によって受けた回数が違います。

1972年9月30日より前に生まれた人:接種機会なし
1972年10月1日~1990年4月1日生まれ:1回接種
1990年4月2日~2000年4月1日生まれ:2回接種の人も(特例の追加接種を受けた場合)
2000年4月2日生まれ以降:2回接種

(Q.定期接種を受けておらず、子どもの頃にかかったかどうか分からない人はどうすれば)

忽那教授:「かかったことか分からない、2回接種したか不確かな人は、抗体検査で、抗体が十分あるかどうかを確認することができる。抗体が少ない場合は、ワクチン接種を検討されるのが良いのではないか」

抗体検査は、最寄りの病院で数千円で可能だということです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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