【解説】韓国大統領「日本はパートナー」と“異例の発言” 反日から転換 背景に“2つの問題”

【解説】韓国大統領「日本はパートナー」と“異例の発言”  反日から転換  背景に“2つの問題”

1日に行われた韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の演説が注目されています。歴代政権にみられた日本への厳しい姿勢から一転、日本を「パートナー」と呼ぶなど、未来志向を強調する姿勢が打ち出されています。

◇“異例”の発言
◇過去に日本製品不買
◇“反日”路線 なぜ変更?

以上の3点について詳しくお伝えします。

■「日本はパートナー」 韓国大統領が“異例の発言”
演説が行われたのは、104年前の1919年3月1日に日本からの独立運動が起きたことを記念する式典「3・1独立運動」の舞台でした。歴代の大統領は、この場で日本との歴史問題に触れ、厳しい発言をしてきましたが、1日はかなり様相が異なりました。

韓国 尹錫悦大統領
「日本は、過去の軍国主義侵略者から我々と普遍的価値を共有し、安全保障と経済、地球規模の課題で協力するパートナーになりました」

尹大統領は、日本を“普遍的価値を共有するパートナー”と表現して、「歴史を忘れてはならない」としつつも、「日本と協力し、世界の自由と繁栄に貢献しなければならない」と訴えました。
尹大統領のこの発言は、歴代大統領の発言と比較してみると、大きな路線変更であることがよくわかります。2011年の李明博(イ・ミョンバク)氏は、「日本は、誠実な行動と実践に出なければなりません」と発言。そして、2013年の朴槿恵(パク・クネ)氏は、「加害者と被害者という歴史的立場は、1000年たっても変えられない」。そして去年の文在寅(ムン・ジェイン)氏は、「日本は歴史を直視し、歴史の前に謙虚でなければなりません」と述べていました。

歴代大統領は、慰安婦問題や竹島問題、元徴用工問題などを前面に押し出して、日本の姿勢を改めるよう要求してきました。中でも、去年までの5年間の文前大統領時代、日韓関係は“戦後最悪”といわれるまでに悪化しました。

その象徴的なシーンの1つが、4年前の2019年、韓国・ソウルの日本大使館前で行われた、日本製品の不買運動を呼びかける集会です。参加者は日本のメーカーのビールや飲み物を捨てるパフォーマンスを行うなど、反日感情をあらわにしました。
こうした不買運動のきっかけは、いわゆる「元徴用工訴訟」をめぐって、日本政府が韓国に対して、事実上の対抗措置として半導体の材料などの輸出管理を強化したためです。

この措置に反発して、韓国では日本製品の不買運動が起きて、自動車メーカーやアパレルブランドが韓国から撤退。そして、日本からのビールの輸出額も大幅に減るなどの事態に発展しました。

■前政権とは“真逆の考え” その背景にあったのは…
尹大統領は、選挙期間中から日韓関係の改善の必要性というのを訴え、文前大統領とは“真逆の考え”を打ち出していました。そして、1日の演説で関係改善を前面に押し出したのにはどんな背景があるのか。NNNソウル支局の原田支局長に聞きました。
1つは、“北朝鮮の脅威”があるといいます。北朝鮮が着々と核やミサイル開発を進める中で、日本やアメリカとの連携はますます重要になっていて、「日韓が仲たがいしている場合ではない」と関係改善への意思は本気だと示す必要があったといいます。

そして、もう1つの背景に、来年春に控えている「国会議員の総選挙」があります。選挙前になると“選挙モード”一色となり、外交問題は棚上げされてしまうため、それまでに元徴用工問題にきっちり片を付けたいという思惑があるということです。まさに、今が正念場だということです。

■若者の意識に変化 7割以上が「日韓関係の改善が必要」と回答
この「元徴用工問題」の解決に向けて、今、事態は大きく動き始めています。2月28日、韓国の朴振(パク・ジン)外相が、原告らに説明する様子がありました。韓国政府は、政府傘下の財団が寄付をもとに、日本側の賠償を“肩代わり”するという解決案を提案していて、原告らに理解を求めています。

一部の原告は、(朴外相が参加した)この説明会に不参加で、この案への賛否は割れていますが、韓国政府の対応もこれまでと変わってきているのは確かです。

また最近、韓国の経済団体が若者を対象に行った世論調査でも、半数以上がこの解決案が進められた場合、日韓関係に「肯定的な影響を及ぼす」と回答しています。
さらにこの元徴用工問題にとどまらず、日韓関係の改善そのものについても、7割以上の若者が必要だと答えています。

特に若者の間での意識の変化が大きいです。韓国国内でも、日本映画の「SLAM DUNK」が公開されて大ヒットしています。

また、3年半前にソウルに赴任した原田支局長も、「赴任当時は、若者が『日本のアニメやタレントが好きだ』などと人目をはばからず言える状況ではなかった。ただ、尹政権になってその雰囲気は確実に変化している」と話しています。

■演説に反発も…最大野党の代表が激しく批判
一方で、今回の演説には、韓国国内で反発する意見も出ています。最大野党の代表は「歴史的責任と法的賠償なしには、信頼構築は不可能だ」「独立運動の精神を毀損した」とSNSに投稿するなど、尹大統領を激しく批判する声も出ています。

   ◇

尹大統領は、日本との歴史問題を持ち出すことで、政権支持率の浮揚を図ることもあった歴代政権とは一線を画し、歴史問題を政治利用しないとのスタンスを打ち出しています。今後、政敵や反対勢力からの批判に屈することなく、このスタンスを維持していけるのかが注目されています。
(2023年3月2日放送「news every.」より)

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