【報ステ解説】国内反発でプーチン氏が追い込まれている?“次の一手”は?(2023年1月4日)

【報ステ解説】国内反発でプーチン氏が追い込まれている?“次の一手”は?(2023年1月4日)

今年に入ってから、ロシアのプーチン大統領は、異例の対応をいくつも取っています。まず、一つ目の異例の対応は、プーチン大統領が国民に向けた新年の演説です。これまでは、クレムリンを背景に演説していましたが、今回は、軍人を自分の周りに囲む形で行っていました。また、演説時間も9分間と、過去20年で最長となりました。

◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.プーチン大統領の演説から、何を感じましたか)
年末に向けて、ロシア国民に語りかける演説がキャンセルされたので、新年、何を語るのか注目されていました。今回、大きく二つの内容がありました。一つは、軍人をねぎらって、寄り添う姿勢を見せる。だから、背景に軍人とみられる人がいるということです。31日に、軍人に対する勲章の授与があって、そのときに、この演説を収録したとみられます。そして、もう一つ。ロシア国民に対して、改めて欧米を批判したうえで、理解・支援をつなぎとめたいという異例の新年の演説となりました。ある意味、プーチン大統領は追い込まれているともいえます。

年が明けてすぐに、ウクライナ軍がロシア軍の兵舎を攻撃しました。ロシア国防省は、ロシア兵89人が死亡したと発表しました。一度に多くの人的被害を公表するのは異例です。国防省は、兵士に禁止していた携帯電話の使用がきっかけで、ウクライナ側に位置を特定されたと発表しました。一方で、ロシアの有力議員からは、大勢の兵士を1カ所に集めていた軍上層部の対応に批判も出ています。

(Q.なぜ、ロシア国防省は、異例の公表をしたのでしょうか)
二つあると思います。一つは、侵攻当初から、作戦がうまくいっているというプロパガンダ、情報統制が国内できかなくなってきているので、あえてマイナスの情報を公表することで、ロシア国内からの批判や反発を早めに抑え込む。ダメージコントロールの狙いがあると思います。そして、今回、動員兵が現場に携帯を持ち込んでいたため、位置を特定されたと公表。つまり、これは現場に問題があると、一種の責任転嫁です。これによって、軍の上層部、さらにはプーチン政権の中枢部に非難の矛先が向かわないようにするという狙いもあると思います。

(Q.異例の対応を取らざるをえないプーチン大統領の周りで、いま、何が起きているのでしょうか)
以前は、絶対的な政治力があったので、プーチン大統領の命令や指示というのは、みんな従っていました。プーチン大統領自らが、軍人に低姿勢で寄り添う姿勢を見せざるを得ない。それぐらい軍と大統領の関係がうまくいっていない側面があります。さらに、一部の強硬派から突き上げられて“4州の併合”を宣言するとか、30万人の部分動員に踏み切らざるを得ないような状況がありますので、プーチン大統領のリーダーシップに陰りが見えてきたといえると思います。

(Q.かつてないほど追い込まれているプーチン大統領は、今後、どういった行動を取ると考えられますか)
今後、注目される動きが、『国民総動員』『追加の部分動員』。この二つの選択肢がありますが、『国民総動員』は、ロシア国民からさらなる批判・反発が上がるので、それをプーチン大統領は懸念していると思いますので、そう簡単にはしないと思います。そうすると、ロシア国内やウクライナの一部では『追加の部分動員』は、あり得るのではという見方が高まっています。そのタイミングですが、当初、踏み切った30万の部分動員の訓練が終了して、戦力化が行われるのが2月。この部分動員を使って大規模な攻勢を仕掛けてくるのではと、ウクライナ側は警戒しています。それでも、戦況がロシアにとって好転しない場合には、追加の部分動員に踏み切る可能性もあるのではないかと思います。ただ、部分動員に踏み切ると、戦闘は長期化していくし、来年3月、プーチン大統領自身、大統領選挙を控えています。そうなると、国民のプーチン離れがさらに強まっていくことになります。プーチン大統領は、大きなジレンマに直面しつつあるのではないかと思います。
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