【解説】ジェネリック医薬品“供給不足”2年以上…いつまで続く? その背景は

【解説】ジェネリック医薬品“供給不足”2年以上…いつまで続く?  その背景は

薬局で調剤されるジェネリック医薬品が深刻な供給不足となっています。なぜこのような事態となっているのでしょうか。

●約3割が品薄
●背景に“不祥事”
●いつ解消される?

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■深刻な薬不足 薬局に薬が「来ない」 「錠剤をつぶして対応」も
今、薬局では何が起きているのでしょうか。6日、都内の薬局を3か所取材しました。薬剤師によると、薬不足はもう2年以上続いているそうです。「最近は薬の卸売業者に頼んでも、注文通りに薬が手に入らない」、「2、3個注文しても1個しか来ないような状況」ということです。

こうした中、薬剤師は薬不足を補うためいろいろな工夫をしていました。例えば、粉薬が足りない時は錠剤をつぶして対応し、近隣の薬局と連携して足りない物を互いに補い合って、何とか調剤しているような状況ということです。

また最近の傾向としては、主体のジェネリック医薬品が不足した影響を受けて、先発医薬品で補おうとして、こちらも足りなくなり、代替品として漢方薬を処方した結果、今度は新たに漢方薬が手に入りにくい状況が生まれているということです。

薬不足は、東京に限った話ではありません。日本製薬団体連合会は製薬会社223社に対して、医薬品の供給状況(2022年8月末時点)について調査し、その結果を5日発表しました。

手に入りにくい状況となっている薬は「じんましん」や「高血圧」の薬のほか、「解熱鎮痛剤」、「かぜ薬」も含まれています。1099品目が出荷停止、3135品目が限定出荷となり、すべての受注に対応できない状況となっていることが明らかになりました。出荷停止と限定出荷を合わせると、生産されている薬全体の28.2%にも上ります。この出荷停止などの制限をした薬のうち9割を占めたのが後発医薬品、つまりジェネリック医薬品でした。

■薬不足の背景…製薬会社に対する行政処分相次ぐ
なぜ「出荷停止」となったのでしょうか。松野官房長官は5日、「昨年以降、後発医薬品メーカーにおける不適切な製造管理や品質管理などにより、多くの製品の出荷が長期間停止または縮小していると承知をしています。引き続き、医薬品の需給の状況を踏まえて、必要な対応をとっていく考えであります」と述べました。

官房長官の発言にもありましたが、薬不足の背景にあるのは、「不適切な製造・品質管理をしていた製薬会社に対する行政処分」です。きっかけとなったのは、2020年に発覚した福井県の医薬品メーカー・小林化工による不正です。水虫治療などの飲み薬に誤って睡眠導入剤が混入され、服用した2人が死亡、約240人に健康被害が出ました。

また、国や県の調査でずさんな管理体制が明らかになりました。調査によって、小林化工は国が承認していない工程で製造をしていたことや、50年近くにわたり一部製品の品質試験をせず、結果をねつ造していたことが明らかになりました。この問題を受けて、福井県は小林化工に対し業務停止命令を下しました。

問題はここで終わりませんでした。全国の都道府県が製薬会社に立ち入り調査を行うなど査察が強化されたほか、メーカーによる自主点検も行われました。その結果、2021年3月、ジェネリック大手3社のうちの1つ・日医工、2022年3月には共和薬品工業などがそれぞれ業務停止命令を受けるなど、各地の製薬会社で問題が発覚し、業務停止命令・業務改善命令が下されるケースが相次ぎました。そのため出荷停止も相次ぎ、薬不足につながりました。

■ジェネリック薬不足「2~3年続く可能性」 専門家に聞く
では、薬不足はいつまで続くのでしょうか。医薬品問題に詳しい神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授は「ジェネリック医薬品が不足している状況は、あと2~3年続く可能性がある」と話しています。そもそもの原因は、ジェネリック企業がいわゆる「製造手順書」通りに薬を製造していなかったことです。坂巻教授は「業務停止などの処分を受けたジェネリック企業は、全品目の製造手順書をもう一度作り直さないといけないため、これが厚労省に認められるまでに2~3年はかかるだろう」と指摘します。

一刻も早い事態の解消が求められる中、取材した薬局では、感染症が流行してる今の時期は、特に解熱鎮痛剤、たんを切る薬、のどの腫れを取る薬が入手困難になっているということです。のどの腫れを取る薬は持病がある人も使うため、風邪などが流行でさらに不足するということです。さらに不足している薬の中には、てんかんの薬など代替がきかない薬もあります。毎日欠かさず飲み続ける必要がある患者さんにとっては、本当に不安になる状況です。

毎日薬を飲む人のためにも、処方してもらう側として、どのようなことを意識したらいいのでしょうか。日比谷クリニック副院長の加藤哲朗医師は「1日でも薬を切らすことができない疾患がある人は、『処方してほしい時に薬がない』という状況を防ぐためにも、手元に残っている薬を確認したうえで、数日分の余裕をみて処方してもらうよう主治医と相談することも大事」と話していましたが、あくまでも毎日薬を欠かせない人の場合です。「そうでない場合は、念のためにと多めに薬をもらうことは控える。必要以上の処方を希望しない方がいいでしょう」と述べています。

     ◇

ジェネリック医薬品の供給不足は、しばらく続きそうです。患者の不安はなかなか解消されませんが、必要な人に必要な薬が届くようにするために、医療機関も薬局も工夫を凝らしています。薬を多めに確保することは控えるなど、みんなで乗り切っていきましょう。
(2022年12月6日放送「news every.」より)

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