日本防衛“中枢“に残る旧日本軍「大本営」の記憶…「過去の戦争」を研究する意味とは(2022年8月14日)

日本防衛“中枢“に残る旧日本軍「大本営」の記憶…「過去の戦争」を研究する意味とは(2022年8月14日)

ウクライナ侵攻や台湾情勢の緊迫など、戦争を身近に感じる出来事が相次ぐなか迎える、あす15日の「終戦の日」。「国を守る」とはどういうことなのか?日本の防衛の中枢を訪ねました。

▽迎撃ミサイルも
(小木アナウンサー)「防衛省ですよ。もういきなり門からして迫力ありますね」
(防衛省大臣官房広報課報道室 松本俊二さん)「こんにちは」
(小木アナウンサー)「サンデーステーションの小木と申します」
(松本俊二さん)「防衛省の松本です。よろしくお願いします」
(小木アナウンサー)「よろしくお願いします」

案内してくれるのは、大臣官房広報課の松本さんです。
(小木アナウンサー)「おー。いや、表からも迫力がある建物だなっていつも見て思うんですけど」
(松本俊二さん)「正面がA棟と言いまして、防衛大臣がいらっしゃるところ。屋上にヘリポートがございまして離発着できるようになっています」

防衛省本省がある市ヶ谷の敷地は東京ドーム5個分もあり、およそ1万人の職員が勤務しています。
陸海空の自衛隊を統べる統合幕僚監部などがある日本の防衛の中枢です。

(小木アナウンサー)「あ!真っ白な制服ということは…あの方たちは」
(松本俊二さん)「海上自衛官」
(小木アナウンサー)「海上自衛隊の方ですよね」
A棟の脇を抜けて運動場に向かいます。
(小木アナウンサー)「柔道着姿の方もいますね。訓練する場所もあってってことですね」
(松本俊二さん)「そうですね」
(小木アナウンサー)「なんか、いろんな人たちが入り乱れているような雰囲気がありますね、制服も違うし」
(松本俊二さん)「そうですね」

市ヶ谷にも、陸・海・空の部隊が常駐しています。
(小木アナウンサー)「どうもよろしくお願いいたします」
(航空幕僚監部広報室 熊谷拓哉3佐)「熊谷3佐と申します。お願いします」
(小木アナウンサー)「いや、迫力ありますね~」

弾道ミサイルを地上付近で迎撃する「PAC3」です。
(小木アナウンサー)「おー!回った、回りましたよ」
2019年から、航空自衛隊の第1高射隊(市ヶ谷分遣班)が配置されています。

(小木アナウンサー)「ことがあるかもしれないという想定をどこかで持っている?」
(熊谷拓哉3佐)「そうですね。どこかで、やはり意識しておかないと、いざというときに動けないとなると、それでは国民からの信頼関係のもとにやっている自衛隊ですので、やはりその信頼をしっかりと維持するためにも、応えられる能力を保持していくことが大事かなと私は思います」

厚生棟には、こんな施設もあります。
(小木アナウンサー)「このコーヒーショップのマークはあれじゃないですか。防衛省内にスターバックスがあるんですか?」
(松本俊二さん)「休憩する隊員がよく利用していたりしますね」
(小木アナウンサー)「ここはまあ普通のコンビニエンスストアですね。隊員の方がスタバで休んでらっしゃいますね」
(松本俊二さん)「はい、ちょっと今休憩をしていて」

自衛官御用達のこんなお店も…

(店員)「これドーランと言ってね、化粧する道具」
(小木アナウンサー)「顔に迷彩を施すための」
(店員)「そうそう」
(店員)「これは指で塗らなくちゃいけないんですけど、これはスティックタイプ」
(小木アナウンサー)「スティックタイプの方が人気があったりする?」
(店員)「そうです」
(小木アナウンサー)「そうなんですか?」
(店員)「手を汚さないですから」

実は市ヶ谷には、多くの自衛官が暮らしています。
(小木アナウンサー)「あ、お待ちいただいて。小木と申します」
(陸上自衛隊中央業務支援隊 井原明 准陸尉)
「暑い中お疲れ様です。今日、案内させていただきます、井原と申します。よろしくお願いします」
(小木アナウンサー)「よろしくお願いいたします。こちら何のとこですか?」
(井原明 准陸尉)「こちらは隊員の住まいのフロアなんですけど、筋トレをする場所がこちらにいま設置されています」
(小木アナウンサー)「何キロくらいのを持ってるんですか?」
隊員「これ30kgくらいです」
(小木アナウンサー)「30kgくらいですか。胸板厚いですね」

隊舎には、理髪店やお風呂なども完備されています。
(井原明 准陸尉)「こちらが食堂になります」
(小木アナウンサー)「隊員の方の食堂?」
(井原明 准陸尉)「そうです」
(小木アナウンサー)「朝昼夜ここで食べるんですか?」
(井原明 准陸尉)「はい」

こちらの隊舎には男性がおよそ750人、女性がおよそ100人暮らしています。
(小木アナウンサー)「あ、個室ですか、上野さん。いいですか入っちゃって」
(上野竜也2曹)「はいどうぞ」
(小木アナウンサー)「失礼します」

(陸上自衛隊中央業務支援隊 上野竜也2曹)
熊本県出身の上野さんは妻と子ども2人を残し単身赴任しています。
(小木アナウンサー)「めちゃめちゃシンプルですよ。机とベッドと、きれいですね」
(上野竜也2曹)「ありがとうございます」
(小木アナウンサー)「寂しくないですか?」
(上野竜也2曹)「そうですね、寂しいところもあるんですけど、こうやってこっちで勤務させていただいて家族には本当に感謝をしていますね」

▽防衛省地下に“戦争の記憶”残す場所
市ヶ谷には“過去の戦争の記憶”を色濃く残す場所もあります。
(小木アナウンサー)「なんか今までと雰囲気の違う方が…」
(須賀芳夫氏)「おはようございます」
(小木アナウンサー)「どうもおはようございます」
(須賀芳夫氏)「今日はよろしくお願いいたします」
(小木アナウンサー)「よろしくお願いします。小木と申します」
(小木アナウンサー)「なんか今までの方と雰囲気が違うんですけど」
(須賀芳夫氏)「ちょっとオリジナル的なところもありますが」

(防衛省大臣官房広報課 市ケ谷台ツアー案内人 須賀芳夫氏)
須賀さんは、防衛省が行う一般向け見学ツアーの案内人を務めています。
(須賀芳夫氏)「実はこの広場が、儀仗広場ってところなんですが、これからご案内する大本営地下壕、まさにこの広場の地下15mほどにございます」
(小木アナウンサー)「この下にある?」
(須賀芳夫氏)「はい。まさにこの下ですね」
この場所には戦時中、日本軍の最高統帥機関「大本営」がありました。
(小木アナウンサー)「うわっ。なんかけっこう深い森のようなところに入っていきますね」
(須賀芳夫氏)「この入り口が当時の雰囲気そのまんまです」
(小木アナウンサー)「けっこう狭いですね。なんか奥からひんやりとした空気が流れてきました」

大本営の建物と2本の通路でつながっていた地下壕が現在も残されています。
(小木アナウンサー)「ここには何があったんですか?」
(須賀芳夫氏)「実はいま手前にコンクリートの基礎が残ってますが、こちら手前に大臣室がありました」
8月9日の御前会議でポツダム宣言の受諾を決断した昭和天皇。
その直後、阿南惟幾陸軍大臣は幹部をこの地下壕に集め、天皇の聖断を伝えたといいます。
(小木アナウンサー)「いやー、やっぱりなんかその…今でもこういうものがちゃんと残っているというのもそうですし、終戦のギリギリの時に中心部も攻撃される可能性が当時はあったんだなっていう、ある意味日本のギリギリの状態っていうのも、もしかしたら表してるのかなって感じがしますよね」

▽防衛省のシンクタンク「防衛研」とは
そして最後に待っていたのは…
(小木アナウンサー)「兵頭さん、よろしくお願いします。ついに来てしまいました」
(兵頭慎治氏)「ようこそ防衛研究所に」

(防衛研究所政策研究部長 兵頭慎治氏)
ロシアによるウクライナ侵攻について連日テレビで解説している兵頭さんです。
(小木アナウンサー)「兵頭さんはいつからここにいらっしゃるんですか?」
(兵頭慎治氏)「わたしはもう長いです。もう27年28年くらいですかね」
(小木アナウンサー)「私のアナウンサー歴と大体同じくらいですね」
(兵頭慎治氏)「お互いベテランで」

(小木アナウンサー)「わっ、さすが、すごい文献と」
(兵頭慎治氏)「一応ロシアが専門なのでロシア語、英語…マトリョーシカも」
(小木アナウンサー)「マトリョーシカも並んでますね」
(小木アナウンサー)「ここに座って仕事されているんですね」
(兵頭慎治氏)「ネットで情報収集やったりですね、論文書いたり、打ち合わせしたりですね」
(小木アナウンサー)「コメンテーターじゃないんですよと。いつも来ていただいてばっかりだから」

今月、創設から70年を迎えた防衛研究所。防衛省のシンクタンクで日本屈指の安全保障研究機関です。
地域情勢を研究する部門のうち最も研究者が多いのは中国の6人。ロシアは4人、朝鮮半島も4人です。
この日、兵頭さんが訪れたのは自民党本部。
「領土に関する特別委員会」に講師として招かれました。
(兵頭慎治氏)「(ロシアにとって)東の最果ての地はどこかというと国後、択捉になるわけです」
国の政策立案に研究成果を反映させることが兵頭さんたちの仕事です。

2月、ロシアによる突然のウクライナ侵攻は兵頭さんにとっても衝撃だったといいます。
(兵頭慎治氏)「やっぱり現実としてまだこれだけの軍事侵攻がありうるんだということは、我々もですね、やはり衝撃を受けたと」
(小木アナウンサー)「実際の戦争が必ずしも論理的じゃないっていうところがインパクトが強かったですよね」
(兵頭慎治氏)「おっしゃる通りなんです。最終的に人間が決めることでやることなので100%合理的ってないんですよね。今回プーチン大統領も十数万人の軍隊でウクライナ全土を侵攻するという我々からすると難しいと思っていたことを実際にやってしまっているわけです。うまくいってないわけじゃないですか」

防衛研究所では、旧日本軍の戦史も研究しています。
(小木アナウンサー)「資料閲覧室。よろしくお願いします。小木と申します」
(菅野直樹室長)「菅野と申します。よろしくお願いします」
ここには、唯一ここだけにしかない貴重な史料が保管されています。
(防衛研究所戦史研究センター史料室 菅野直樹室長)
「大本営発表綴第五号という資料です。大本営発表というのは戦時中ですね。実際の被害を少なくしたりとか、戦果を逆に誇大に報告したりとか、非常に良くない意味で今でも大本営発表と言われることが多いんですけどね」

8月6日、広島への原爆投下を伝える大本営発表の原稿です。
(小木アナウンサー)「直しが入っていますね」
(菅野直樹室長)「そうなんです。『特殊爆弾により』の『特殊爆弾』をカットして、特殊の代わりに『新型』という言葉を入れております。人心の動揺をあまり刺激しないといった配慮のようなことを感じるんですけどね」

ウクライナや台湾情勢が緊迫している今だからこそ過去の戦争を研究する意味があると兵頭さんはいいます。
(兵頭慎治氏)「(日本軍の)どういう部分が非合理な意思決定だったのか。そこも含めてしっかり研究していくことによって、そういうことをいかに防いでいくのか。その教訓を過去の歴史から学び取っていく。その作業を引き続きやっていく必要があると思うんですね。知ることっていうのは超えることなんですよ。(ウクライナのような事態が)日本周辺でも起きないようにするには何をすべきかっていう、しっかりと国のレベルでも国民のレベルでも考えていく。そのためには何が起きているのかっていう状況をしっかりと認識して理解していくっていうそこから始めないといけないんですね」

8月14日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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