“祖国大戦争” 演説からみるプーチン大統領の焦り【後藤部長のリアルポリティクス】(2022年5月13日)|TBS NEWS DIG

“祖国大戦争” 演説からみるプーチン大統領の焦り【後藤部長のリアルポリティクス】(2022年5月13日)|TBS NEWS DIG

後藤部長のリアルポリティクスです。プーチン大統領は5月9日に行った演説で、ウクライナへの軍事侵攻は「唯一の正しい決定」であると強調しました。しかし、演説の内容をつぶさにみていくと、プーチン大統領の苦しい状況が伺えます。G7がさらなる経済制裁を強化する中、ウクライナ情勢はどうなっていくのか。後藤部長の解説です。(聞き手:高柳光希キャスター)

後藤政治部長:
5月9日、ロシアでは国家的なイベントがありました。地元では「祖国大戦争77周年記念行事」といわれ、第二次大戦で当時のソ連がナチスドイツに勝った、その記念の行事です。この場でのプーチン大統領の発言をみていきます。
 
ロシア プーチン大統領(5月9日)
「私たちの義務はナチズムを打ち負かした方々の記憶を持ち続けることです。NATOはクリミアを含め私たちの土地に侵攻する準備をしていた」
 
後藤部長:
毎年5月9日は、ロシアにとって第二次世界大戦でナチスドイツを打ち破った記念の日になります。
 
ーーアメリカなどでは5月8日が記念の日になっていますね?
 
後藤部長:
そうなんです。これには当時の経緯があります。ドイツ側の降伏文書の調印が、欧米側とソ連側で2回あった。ソ連は当時スターリンが指導者でベルリンでの調印を求めたことから、時間差が生じて、8日が欧米側、9日はソ連側で調印を行い、戦勝記念日が分かれるということになったんです。
この日はロシアにとって言わば“ハレの席”、重要な日。プーチン大統領も演説を毎年行っているので、ここで何を言うのか注視していました。ウクライナ侵攻の正当性を訴えるであろうとみられていて、冒頭聞いてもらった一節でも正当性を主張していました。
 
その発言をもう少しつぶさにみていくと、注目したい点は「NATO陣営は我々に隣接する領土の積極的な軍事開発を開始した」といった発言で、ウクライナ侵攻をした大義を訴え、NATOが東方に拡大している、加盟の動きがあるということへの批判をしたのだと思います。また、自分たちの行動、侵攻については「ロシアは侵略に対する予防的な反撃を行った」と発言し、これまでの主張を繰り返した上で、この軍事侵攻は「唯一の正しい決定」であると強調しました。
 
さらに、最も注目したいのは、ロシア軍や義勇兵に対しての「祖国のため、その未来のため、第二次世界大戦の教訓を誰も忘れることのないようにするために戦っている」という発言です。つまりプーチン大統領は“第二次大戦を思い出せ”という、ある意味、ナショナリズムの高揚を訴えていると思います。
 
ただ、この演説を聞いて、“プーチン大統領は苦しいんだな”と感じました。プーチン大統領はこの演説の場で、ウクライナ侵攻のことを戦争である、あるいは戦争状態であると認定するのではないかとみていました。ロシア側は今、侵攻を特別な軍事作戦であるとして“戦争”ではないというスタンスでした。演説でもこのスタンスを変えていませんが、第二次大戦を思い起こしてもらいたいと言っているということは、戦争をしていないのに、戦争状態だった77年前を思い起こしてほしいという趣旨の発言は、今のロシアの侵攻の状況がうまくいっていない、長期化も避けられない。経済制裁も含めた厳しい状況であるということを、図らずもプーチン大統領が認めた形になっていると思います。
 
ーー演説ではNATOを名指しで厳しく批判していますが、アメリカは反発していますよね。
 
後藤部長:
はい。この演説について、アメリカはすかさず反発しました。ホワイトハウスのサキ報道官は、この演説について「偽の情報を使った歴史の修正主義」、または「不当な戦争を正当化するため歴史を曲解し歴史を変えようとしている」と厳しく批判しています。
 
そしてアメリカを中心としたG7は8日に、オンラインで首脳会合を開きました。岸田総理も日本から参加しています。これがなぜ8日かといえば、ロシアに先立ってということもあるが、8日は欧米にとって第二次大戦でナチスに勝利した日だということもあるのではと思います。
ここではロシアへのさらなる制裁が決められています。岸田総理も会合の終了後、コメントを発表しています。
 
岸田総理(5月9日)
「大変厳しい決断ではありますが、G7の結束が何よりも重要なときであり、今回のG7首脳声明も踏まえ、ロシア産石油の原則禁輸という措置をとることといたしました」
 
後藤部長:
かなり厳しい措置だと岸田総理も発言していますが、日本がエネルギーでかなりロシアに頼っているなかで、石油の輸入を原則、これから禁止していくという決定でした。岸田総理はこの場で、いつからとは言明していません。日本にとって苦渋の選択だったと思います。
G7各国は本気で、ロシアに対してさらなる強い意思表示をしたのではないかと思います。また、この経済制裁はロシアにとっても厳しいものになります。
 
こうした中、ロシアの国営ガス会社は、ポーランド経由でドイツにつながるパイプラインを通じ天然ガスを供給していましたが、それを停止すると表明しています。これはG7の制裁に対しての対抗措置だと思いますが、ロシア側が軍事面も経済面も徐々に追い詰められてきている、厳しい状況にきているということを改めて感じます。

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