今週、鉄道の日を迎えたが、実は全国の無人駅は過半数となっている。そこで、番組では無人駅を「住める駅舎」に変え、有効活用する取り組みを取材した。
■萩の風土や日常生活の状況を体験
国内最長の在来線、JR山陰本線。京都駅から山口県・下関の幡生駅を結ぶ、全長673.8キロの路線だ。
三見駅は萩市の中心市街から西におよそ5キロ。のどかな三見地区に位置する。
1925年(大正14年)4月に開業した三見駅は今年、100周年を迎えた。しかし、止まる列車は一日上下線、各8本。平均乗降客数はわずか30人で、1991年からは無人駅となっている。
全国の無人駅の割合が50.9%と過半数を占めるまでとなった今、ここ三見駅は“住める駅舎”として活用されている。その名も「さんちゃんち」。
萩市の担当者、総合政策部の堀理恵子さんに“住める駅舎”を案内してもらった。
「『お試し暮らし住宅“さんちゃんち”』のダイニングキッチンとなっています」
“さんちゃんち”は、萩市への移住や小規模なオフィスの開設などを検討している人を対象に、一定期間、萩の風土や日常生活の状況を実際に体験してもらうための施設だ。
間取りは、1LDKでおよそ57平米。1週間から最長4週間利用でき、1組最大4人まで、6泊7日、7000円とリーズナブルな価格で貸し出している。
こちらの最大の特徴が、目の前がホームという、出窓のスペース。列車の往来を間近に見ることができるのだ。
「ちょっと小上がりの和室スペースもありまして、こちらは出窓になっていまして下に足をおろして、目の前を走る電車を眺めながらくつろいでいただけます」
「ぜひ、こういった所でお試し暮らしをしながら萩の暮らしを楽しんでいただけたら」
一体なぜ、行政が駅舎を「お試し暮らし住宅」にしたのか?
「2021年にJR西日本から駅舎を解体するような話がありまして、萩市で活用されるなら『無償譲渡します』という話がありました。その時に100年間続いた三見駅舎の建物を残したいという思いと、地域における人口減少に何とか対応するような施設として活用できないかという検討をすすめた」
2022年8月、老朽化した駅舎の改修工事がスタート。景観に溶け込んだ駅舎の外観は残しつつ、室内は快適に暮らせるようにしたという。
玄関には落雷の高い電圧から信号機器を守ってきた「保安器」を駅舎の思い出を残すために設置した。
琉球畳の寝室は、駅員が仮眠室として使っていた部屋を改修。室内でも萩市の魅力を感じてもらおうと、日々使う食器は市民からの寄付で集めた名産の陶器「萩焼」が用意されている。
2023年4月にオープンした「お試し暮らし住宅“さんちゃんち”」。これまで、2年半の間に43組が利用し、そのうち3組が萩市に移住した。
■お試し暮らしで魅力を発見
今年5月に広島から萩市に移住した、田窪日出男さん(61)。仕事は、聴覚障がい者向けの字幕作成などをテレワークで行っている。
「(Q.(“お試し暮らし”は)何がきっかけ?)僕、ソロキャン(1人キャンプ)が好きで、萩とか長門とかの山陰地方は結構キャンプに来ていた。その時に食のおいしさや自然の豊かなところに心をひかれて」
田窪さんは去年5月からおよそ1カ月、お試し暮らし住宅に滞在した。
「僕らの年代になってくると、ゆっくりと過ごしたいところがある」
三見地区は日本海に面し、三方を山々に囲まれた自然豊かな場所。ゆったりとした時間が流れていくという。
そこにある駅で実際に暮らして初めて気づいた、この地区ならではの魅力があったという。
「1カ月いるので、どうしてもごみを捨てに行かないといけなくて。ごみを捨てに行くのはすぐそこですが、帰ってきた時にこのバス停にいたおばあさんたちが『いつ来るん?』という声をかけてもらって、それが心に響いたというか、地元の人はこんなに外の人を簡単に仲良く受け入れてくれる街なんだ。『ああ、適度な距離感がいいなあ』と移住の最終的な決断になりました」
その後、田窪さんは「空き家バンク」で城下町の風情が残る地区の古民家を紹介され、現在5DK、家賃4万5000円の一軒家で暮らしている。
萩市の無人駅の活用の仕方に、全国の自治体から注目が集まっている。
堀さん
「こういった利活用もあるぞというところで(他の)行政のみなさんからも視察を年間20本くらい受けていて、全国的にも発信していきたいと思っています」
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月17日放送分より)
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