連日の猛暑で高温障害に悩む農家。そんな農作物を救う突破口となるのでしょうか。理化学研究所が注目したのは意外な液体でした。
■異例の猛暑 農作物に大打撃
東京・立川市の農園では、カボチャやミニトマトなど約160種類の野菜を育てていますが、高温障害で4割ほどが出荷停止に追い込まれました。農園がある立川市の周辺、八王子の20日の最高気温は36.3度。これで4日連続の猛暑日です。
小山農園 小山三佐男代表
「40度以上の体感でも危険な暑さがあって、3日くらいで終わるのが毎週のように来ていた。作物もダメージが大きかったと考えている」
水まきをしても地中にまで行き届かず、意味を成さないといいます。
小山農園 小山三佐男代表
「『危険だな』と思っていたら一気に枯れてしまった。何も対策はできないんじゃないか」
■高温障害対策に 適切に希釈した“エタノール”
高温障害と雨不足。そんな環境下の“切り札”となるかもしれない研究があります。
理化学研究所 環境資源科学研究センター 関原明チームディレクター
「エタノールを与えたものと、与えていない植物がある。エタノールを与えたほうが植物は元気に育っている」
3日間、水だけで育てたキャベツと、0.1%に薄めたエタノールを与えたもの。2つを比べると結果は一目瞭然です。
理化学研究所 環境資源科学研究センター 関原明チームディレクター
「作物ごとに最適なエタノールの濃度・回数があるので、その辺は作物・場所・気候条件などを参考にしながら、条件を最適なものにしていくのがとても大事」
植物は、成長のために必要な光合成の過程で、二酸化炭素を吸っています。ところが連日の猛暑で、植物は“身を守る”ために二酸化炭素を吸い込む孔(あな)を閉じます。結果、光合成が弱まり、成長が阻害されてしまいます。そこでエタノールを土に与えると、高温から細胞を守るたんぱく質の増加がみられたといいます。また、植物の中では糖が作られ、高温を耐え抜けるエネルギーが供給されたといいます。
■エタノール散布で“収穫倍増”
これをさっそく、取り入れた農家があります。
ソイルパッション 深川知久社長
(Q.1日にどれくらいの量のエタノールを散布)
「量で言うとそんなに。今からまくのは7~8%くらいの希釈になっている」
この暑さによるサツマイモへのストレスや乾燥を防ぐため、今年から取り入れた“エタノール農法”。そのキッカケとなったのは。
ソイルパッション 深川知久社長
「一番大きかったのは枝豆。暑すぎて植えてもすぐ枯れちゃうことがあって。このまま同じように作っていたら、この静岡で枝豆を作るのは厳しいなと正直感じていて」
何か策はないか必死で探したところ、理化学研究所の研究を見つけ、試しに導入。収穫量は倍近くまで増えました。
ソイルパッション 深川知久社長
「エタノールは今までの作業にプラスアルファするだけですので、誰にでもとっかかりやすい対策なのかなと」
効果を確かめるには今後、場数を踏む必要があります。
理化学研究所 環境資源科学研究センター 関原明チームディレクター
「色々試してもらうことによって、問題点とかどうすればいいかが分かってくるので、データは多ければ多いほど技術開発するうえでプラスになる」
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