マダニが媒介する感染症、SFTSが国内で急速に広がっています。今年に入り確認された患者数は死者13人を含む131人で、過去最多となったおととしを超える見込みです。
■国内でSFTS患者数が急増
夏休みシーズン。山登りやキャンプなどアウトドアを楽しむ人も多いなか、今、問題になっているのが“森の吸血鬼”とも呼ばれるマダニです。
国立環境研究所 ダニ学者 五箇公一さん
「口にハサミを持っていて、皮膚を切って頭を突っ込み吸血をする。特に最近問題なのが“SFTS”ですね」
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、ウイルスを持つマダニにかまれて起きる感染症の一つです。
発熱や吐き気、出血症状などを引き起こし、重症化すると死に至る恐れもあります。現在、SFTSに有効なワクチンはありません。
今年に入ってからの患者数は131人。過去最も多かった2023年の134人を超える見込みで、死者は少なくとも13人に上っています。
これまでマダニ感染症は西日本を中心に広がってきましたが、北海道でも初めて確認されるなど、全国的に広がりをみせています。
なぜ、こんなにもマダニの生息域が拡大しているのでしょうか。
五箇さん
「シカやイノシシやクマが山から下りてきて、人里の近くに出現する確率が上がっていて、彼ら(動物)が持っているマダニも人の生活圏に近づいてきている」
野生動物に寄生していることが多いマダニ。野生動物を扱っている動物園の職員も、マダニには細心の注意を払っています。
iZoo 白輪剛史園長
「(肉食動物に)餌(えさ)としてシカなどを使う。園に持ち込まれる時は、シカからマダニが逃げ出す動きが活発。無防備にしているとかまれてしまう可能性が高い、相当気を付けています」
マダニの危険性は、SFTS以外にも…。
■「チーズや牛乳もダメに」アレルギー発症
それがマダニにかまれたことで肉が食べられなくなる肉アレルギー、通称“アルファガル症候群”という病気です。
マダニの唾液によって体内にできた抗体と、肉に含まれる物質「アルファガル」が反応することで、じんましんや呼吸器症状などのアレルギー症状を引き起こす疾患です。
実際にマダニにかまれてアレルギーを発症したという人は、こう話します。
マダニにかまれてアレルギーを発症した方
「チーズやバター、牛乳やヨーグルト、ゼラチンなどがダメだった。お菓子作りが好きで(乳製品は)日常的に使っていた、全部ダメなんだっていう衝撃があとから来た。人生において大きな失敗だなと思った」
マダニにかまれるのを防ぐためには、野外活動をする際に長袖・長ズボンを着て肌の露出を減らすほか、虫よけ効果がある「ディート」や「イカリジン」を含む虫よけスプレーを塗ることが有効だといいます。
五箇さん
「これだけ気候が非常に温暖化してしまっているから、遅い時期までマダニはいる可能性が高い。十分注意する必要がある」