いま、全国のガソリンスタンドが消滅の危機に立たされています。経済産業省によると、1994年度に約6万カ所あったガソリンスタンドは、年々減少を続け、2023年度には半数以下となっています。
街からガソリンスタンドが消えていく、いわゆる「ガソリンスタンド過疎地」が深刻な問題になっています。岐阜県関市内でも、2005年に61カ所あったガソリンスタンドが、この20年で約半分の32カ所まで減りました。
「これ以上続けて、何になるのか」
岐阜県関市で長年、地域住民の生活の足を支えるガソリンスタンド「ミヤチ」。ガソリンを入れに訪れた70代の客は「もうはや60年くらいやっとるから、ここで。僕ら地方だもんで、バスも通ってないし、何にも通ってない。車なかったら生活できない」と話します。
スタンドの片隅で見守るのは、2代目社長の宮地潔（みやち・きよし）さん。損益計算シートを見せてもらうと、4200万円の赤字となっていました。
宮地潔さん：
「これ以上続けて、果たして何になるのかなと」
宮地さんのガソリンスタンドは、1955年に先代の社長が創業し、その約40年後には、4店舗まで規模を拡大しました。しかし他店との価格競争や、ガソリン需要の減少などで赤字が拡大。現在は、この1店舗のみです。
宮地さん：
「価格競争が、いやになっちゃって、本当に。隣が3円安い、うちも一緒にしようでやっていると、仕入れよりも安くなりそうなときが出てくるでしょ？ 1円や2円で食っていけないですよね」
経済産業省によると、1994年度に約6万カ所あったガソリンスタンドは、年々減少を続け、2023年度には半数以下となっています。
宮地さん：
「本当に寂しいもんがありますね。僕もずいぶんお世話になった先輩が店辞めたりとかね。2～3年前にやめたところもありますし、2025年4月にはっきり『やめる』と言っているところもあります。関から飛騨金山までにガソリンスタンドがなくなっちゃうというのは、現象として起きているのは事実ですね」
「災害時のインフラ」として重要
宮地さんは、この日、他のガソリンスタンドの経営者らと、ワークショップに参加していました。自社の強みや歴史を見つめ直し、ガソリンスタンド以外の新サービスを始めるきっかけにしてもらおうと、中部経済産業局が主催しました。
国が支援に力を入れる理由は、ガソリンスタンドが「災害時のインフラ」として重要だからです。
主催者の1人である中部経済産業局の資源・燃料課の二村 真基係長は「能登半島地震でも、SS事業者が発災直後から営業したおかげで、消防・警察・自衛隊のような緊急車両の燃料を供給することができた」と話します。
中部経済産業局 二村さん：
「今後、SSがなくなっていくわけにはいきません。燃料需要が減っていく世の中になったとしても、我々としては支援をして、持続可能な経営を実現させたいです」
宮地さんも持続可能な経営のため、中古車の販売やレンタカーなど、幅広い経営を始めていました。
さらに、カーライフと親和性の高い、ゴルフの中古クラブの取り扱いをスタート。事業のすそ野を広げることで、ガソリンスタンドの経営を支えています。
宮地さん：
「私たちみたいに、地域を支えなきゃいけない。ただ単に平和なときは、燃料入れていれば動くんですけど、やっぱりなんかあったときには、僕らが先頭になって車のことに関しては、助けに行ってあげられるような、自覚を持った商売を僕はみんなに言っているし、そういう商売を続けていきたいです」
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