世界最大の氷山、南極の氷から分離し漂流 ペンギン・アザラシ生息地に衝突の恐れ【ワイド!スクランブル】(2025年1月27日)

世界最大の氷山、南極の氷から分離し漂流 ペンギン・アザラシ生息地に衝突の恐れ【ワイド!スクランブル】(2025年1月27日)

 世界最大の氷山が南極海を漂流している。その巨大氷山が「野生生物の楽園」と呼ばれる島に衝突する恐れがあり、専門家は警鐘を鳴らしている。

■ペンギンの群れ 16万羽から1万羽に

 一面、真っ白な氷が果てしなく続く。これは陸地ではなく氷山だ。これがゆっくりと移動しているという。

北海道大学 杉山慎教授
「想像を絶する大きさですね」

 氷山についてこう話すのは、南極の氷河調査を10年以上続けている北海道大学の杉山教授だ。

 杉山教授が驚く氷山の面積は、東京都の1.6倍のおよそ3500平方キロメートル。厚さは東京タワーを超えるおよそ400メートル。世界最大の氷山だ。なぜこんな巨大なものが漂い始めてしまったのだろうか。

杉山教授
「基本的には少しずつは溶けていきますので、引っかかった氷が外れたんですよね。浮かび上がったという」

 氷山は1986年に南極の氷から分離。30年以上海底に接してとどまっていたが、おととし11月ごろに漂い始めたとみられている。

 そして、この氷山について科学者たちが警鐘を鳴らしている。

 それはペンギンやアザラシなどが生息する南大西洋の島、イギリス領「サウスジョージア島」に氷山が接近し、あと数週間で衝突する恐れがあるという。

 サウスジョージア島はおよそ3700平方キロメートルで、氷山とほぼ同じ面積だ。もし氷山が島に衝突したら、どのような影響が考えられるのか?

杉山教授
「海底にたまっている土砂が巻き上げられるでしょうし、氷が砕けてその周辺は氷山が散らばる。生き物にとっては餌(えさ)を取りに行くルートが断たれるので影響があるでしょうね。彼らは陸の上に生活しながら海で餌を取っている動物ですので、その途中に大きな氷山があったり、氷が海を埋め尽くしてしまうと餌を取りに行くのに困る」

 CNNによると、2010年には南極大陸に生息するペンギンの群れがおよそ2900平方キロメートルの氷山によって餌場までの道を閉ざされ、16万羽だった群れが1万羽まで減ったという。

杉山教授
「我々が南極のことを知ってからまだ時間が経ってない。せいぜい100年ぐらい。これまでの我々の経験ではわからないようなことが起きる可能性は、もちろんあります」

■今後も巨大氷山の漂流が相次ぐ?

 専門家は「南極から切り離される氷山が今後増えるのではないか」と懸念している。

 南極大陸の面積はおよそ1400万平方キロメートルで、日本の面積のおよそ37倍。大陸の98%が分厚い氷で覆われていて、南極氷床の体積はおよそ2700万立方キロメートル。琵琶湖の貯水量100万杯分にあたる。

 南極の氷河調査を10年以上続けている北海道大学・杉山教授は「地球温暖化などの影響で海水の温度が上がり、南極氷床から氷山が切り離されるケースが増えている」と述べている。将来、そのような傾向に拍車がかかると、「今回の巨大氷山のようなものがより多く発生する恐れがある」と話している。

 漂流する氷山が増えることの影響について、杉山教授は「南極氷床からたくさんの氷山が切り離されると、陸にあった氷がとけて海に入るので、海水面の上昇につながる」と指摘している。

 実際、毎年少しずつ海水面は上昇していて、世界の研究者による予測では「このまま温暖化対策が進まなければ、100年後には海水面が1メートルほど上昇する」とされている。

 地域によって、ばらつきはあるが、1メートルの海面上昇は日本に多大な影響を与えると考えられている。

 環境省の資料によると、日本全国の砂浜の9割以上が失われることが予測されているという。

 また杉山教授は、「何も対策をとらないまま海面が上昇すれば、東京では江東区・墨田区・湾岸地区など海抜が低いエリアで都市機能や住む場所、生活のありようなどを大幅に変えなければいけない事態になる」と指摘している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年1月27日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

科学ニュース動画カテゴリの最新記事