全国的にインフルエンザの流行が広がっていて、患者数が1カ月前と比べて8倍に増えている。今年は新型コロナウイルスやマイコプラズマ肺炎が同時に流行し、“トリプルデミック”が指摘されている。
■病院大混雑…感染の実態
18日、都内のいとう王子神谷内科外科クリニックでは、午後の診療が始まってすぐにもかかわらず、19組もの待ちが発生。入り口付近では訪れた患者が靴を脱ぎ、上がったところで立ち止まった。その後の患者は靴を脱げず、自動ドアの前で待機してしまうほどの混雑ぶり。
患者
「子どもがインフルエンザにかかって。看病してたら自分も調子が悪くなったので」
ひっきりなしに対応に追われるクリニックの受付。
受付
「暗くなってからの順番になっちゃうと思います。ご予約のほうが結構埋まってるので」
患者
「じゃあ、やめます」
診療の時間が日が暮れてからになると聞き、そのまま帰っていく人もいた。
電話での問い合わせも相次いでいた。
看護師
「発熱外来のほうが、もう予約がいっぱいになってしまっていて」
電話を切り息をついた、その直後…。
看護師
「はい。こちら、いとう王子神谷内科外科クリニックです。キャンセル待ちの方も何人かいらっしゃるので、受診できるかどうかはちょっと分からないんですけども」
患者
「きのうとか(熱は)38.6℃とか。せきも多少…」
連日訪れる多くの患者、その検査結果は…。
伊藤博道院長
「インフルエンザAの抗原検査で陽性」
こちらの患者も…。
伊藤院長
「インフルエンザA、陽性です」
次々とインフルエンザの診断が出る。流行しているのはそれだけでなく、新型コロナウイルスとマイコプラズマ肺炎への感染も…。
伊藤院長
「新型コロナのほうが陽性」
「マイコプラズマ肺炎」
さらに、インフルエンザとマイコプラズマ肺炎に同時感染。
伊藤院長
「抗原検査をさせてもらって、マイコプラズマ肺炎とインフルエンザに同時に感染している可能性」
この状況に、伊藤院長はこう話す。
伊藤院長
「この1週間でインフルエンザの患者さんは5倍に増えました。(外来は)毎日パンクしている状態で。(新型コロナ、インフル、マイコプラズマの)トリプルデミックが現実味を帯びてきた」
■医師が「薬不足」に頭抱える場面も
さらに、この状況に拍車を掛ける大きな問題があるという。
伊藤院長
「何?お薬がない?」
看護師
「サワシリン(抗生物質)とアスベリン(せき止め)がない」
伊藤院長
「えー、ちょっと待って。サワシリンもアスベリンもないの」
それは、薬不足だ。
伊藤院長
「メジコン錠(せき止め)がないから粉にしていいですかって問い合わせが薬局から?」
薬不足の影響で、薬局からクリニックへ「錠剤ではなく粉薬でよいか」という問い合わせが。クリニックが許可を出すも…。
伊藤院長
「それで粉にしていいよって言ったら、今度は本人が粉は飲めないと」
看護師
「本人は飲めない」
伊藤院長
「52歳?粉は嫌だ?」
看護師
「はい」
伊藤院長
「やだっていうのはなあ。やだって言われてもなあ」
薬不足に頭を抱える場面もあった。
伊藤院長
「八方ふさがりって感じですね。あるお薬だけをお出しして、ちょっと何とか持ちこたえてもらうように、患者さんにご不便をお願いするしかない、最終的にはね」
■薬局では…薬が用意出来ないケース相次ぐ
薬不足が深刻化している現場を取材した。
薬剤師
「なかなかこれは入荷しない薬なので、なくなったらごめんなさい」
こちらの薬局では、薬が用意出来ないケースが相次いでいるという。
遠山薬局 薬剤師 遠山伊吹さん
「たん切りであったりとか、せき止め。あとは細菌に効く抗生物質も不足しています」
実際に薬が入っている棚を見せてもらうと…。
遠山さん
「(この薬は)これしかない状況ですね…」
インフルエンザやコロナウイルスなど感染症にかかった際に処方されるせき止め薬「メジコン」。通常なら1000錠以上の在庫があるはずが、わずか8錠しかない状態に。
薬をもらいに来た人
「せきの薬って、前と違うやつですよね?」
遠山さん
「以前メジコン(せき止め)という薬を出したんですけど、メジコンが出荷調整で全然流通していなくて…。(メジコンと)中の成分は一緒になりますので」
遠山さん
「1週間処方だと42錠が1人分なので、1人分にも満たない。この処方が来ても対応出来ないような形ですね」
さらに、せき止めや抗生物質の棚には「出荷調整」と書かれた紙がある。薬がない状態が続いているという。
発注は、毎日してはいるものの…。
遠山さん
「通常でしたら翌日入る物なんですけど、(入荷の)見通しが立ってない。1個でも入ってきたらいいなっていうような状況ですね」
発注画面を見ると“欠品”の文字が並んでいる。
遠山さん
「今、本当にコロナとかインフルとマイコプラズマ肺炎と感染症も流行していて、せき止めの需要も増しているので、より欠品が加速してるような状況」
薬不足のなか、大人に子ども用を服用してもらったり「大人用の薬を粉薬にして子どもに渡す」など、今ある薬で工夫しているという。
これからが感染症のピークとなるなか、不安もあるという。
遠山さん
「この状況が改善する見込みは全く立っていなくて、むしろより事態は深刻になってくる一方だと思っています」
■追い打ちの薬不足…製薬会社の工場を取材
薬不足が深刻化するなか、薬の生産現場はどうなっているのか?
広大な敷地に建つ製薬会社の巨大な工場。昨年増設され、年間100億錠もの薬が作れるようになったというが…。
東和薬品 山形工場 菅野隆行総工場長
「今は、まずは残業、休日出勤、それから工程によっては24時間体制でフル生産している」
できる限りの生産体制をとっているが、想定以上の需要に供給が追い付いておらず、増産するのも難しいという。
菅野総工場長
「フル生産で作っていますので、何か一つ(不足薬の増産)計画を変更すると、他の製品にも影響しますので、生産計画を変更するのは非常に難しい状況です」
薬不足のなか、急拡大しているインフルエンザなどの感染症。
千葉市立轟町小学校 中村正人教頭
「こちらが、6年生の教室になります。きのう(17日)から学年閉鎖をしております」
千葉市内の小学校では、16日の段階で6年生17人ほどがインフルエンザなどで発熱し、学年閉鎖したという。しかし先週までは…。
中村教頭
「金曜までは全学年を通じても1人、2人のインフルエンザだったが、今週月曜になって一気に増えたという印象です」
各教室には加湿器を設置。給食の際は机を向かい合わせず、授業の時と同様に前を向いたままで食べるように対策しているという。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年12月19日放送分より)
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