手足の自由が利かなくなる神経難病患者に対し、長岡保健所が声で操作できる“スマートスピーカー”を通じて支援しています。導入によって新たな生きがいを見つけた人、取り組みを展開しようとする人たちの思いから、県内外から注目を集める試みの可能性を探りました。
長岡市の竹島久一郎さん(75)。体に震えなどが起きる『パーキンソン病』を患っています。徐々に体の自由が利かなくなるなか、生活の一部になっているのがリビングに置いた“スマートスピーカー”です。
■竹島久一郎さん
「アレクサ、今日の天気は?」
“スマートスピーカー”とは、インターネットと接続し、AIが人の声に応じて質問に答えたり暮らしをサポートしたりするもので、竹島さんが使っているのはアマゾン社のAI音声サービス「アレクサ」を搭載した製品です。
定年退職後、肩のコリがひどいと感じるようになった竹島さん。まっすぐ歩けないこともあり、病院で検査したところ『パーキンソン病』と診断されました。10年前のことでした。
■竹島久一郎さん
「不治の病となると、展望がないので・・・。」
最初はふさぎ込み、自宅に引きこもりました。
■竹島さんの妻・良子さん
「病気が分かったときはショックだった。今よりもよくなることはまずないわけだから。」
医師に言われたのは、『進行は畳一本分』という言葉でした。
■竹島さんの妻・良子さん
「いかに悪くなることを押さえるか、できるだけ正常な状況に近い状況を維持することが大目標になった。」
自ら患者会を立ち上げ、悩みを打ち明けるうちに前向きになっていった竹島さん。2024年9月、長岡保健所がスマートスピーカーを貸し出していることを知って試したところ、手軽に使えることに驚きました。音楽を聴くのが趣味になりました。
■竹島久一郎さん
「アレクサ、吉幾三の歌かけて。」
この日、自宅を訪れたのは丸山雄也さん(30)。丸山さんは県地域おこし協力隊の一員で、長岡保健所と連携してスピーカーの設置を担当しています。竹島さんは、丸山さんに機能の追加をお願いしました。薬を飲む時間を知らせてもらうためです。
■県地域おこし協力隊 丸山雄也さん
「パーキンソン病の方は、1日7回とか8回とかお薬を飲む方が多いので、一言声がけするだけで家族も楽になります。」
スマートスピーカーは、何ができるのでしょうか。
■県地域おこし協力隊 丸山雄也さん
「スマートスピーカーとスマートリモコンと呼ばれるものを連携して使うことで、声でテレビやエアコンが動かせる仕組み。」
患者仲間にも使ってほしいと、竹島さんはチラシを作りました。強調した言葉は〝転ばぬ先の杖〟。
■竹島久一郎さん
「(今後)寝たきりになったときは、様子を見守るテレビとかいろいろ活用法はあると思う。」
進行した時は、声で家電を操作することを想定する竹島さん。今は孫と遊んだり、発病後に始めた“切り絵”に打ち込む時間が生きがいといいます。
■竹島久一郎さん
「AIの技術が進歩して、あれもやりたいこれもやりたいと興味が発展してくるわけですよね。前向きに生きていくことが大事だなというのを感じた。」
この取り組みは、長岡保健所が2年前から始めました。手足や喉などの筋肉が衰える『ALS』をはじめとする、神経難病の患者と日々接していた看護師の発案でした。
■長岡保健所保健師 室岡真樹さん
「しゃべるのが難しくなったりだとか、手先の動きがなかなか思うように動かすことが難しくなってくる。そういったところを補う支援の一つとして。」
まず無償で1カ月間貸し出し、続ける場合は別途買う必要がありますが、声で動かせる手軽さから試した人のほとんどが購入。用途は様々で夜中にトイレへ行く際、声で照明をつけたりエアコンを調節したりするほか、テレビ電話に使う人もいます。
■長岡保健所保健師 室岡真樹さん
「今まで少し病気で自信がなくなっていたところが、ちょっとやる気が出たり意欲が上がるっていうところは、効果としては見られていると思います。」
患者宅を回っている丸山さんは大学卒業後、会社員を経て青年海外協力隊員として東南アジアへ。ラオスでソフトウェアの使い方などを教えていました。2023年4月に帰国後、ネット上で目に留まったのが県地域おこし協力隊の募集「情報通信機器を使った難病患者の支援」とありました。
■県地域おこし協力隊 丸山雄也さん
「障害がある方や難病を持った方に効果があるということで、かなり衝撃を受けまして、全国的にもかなり珍しいということだったので、自分がやってみてもいいかと。」
採用を機に長岡市へ移住。丸山さんの着任後、利用者は増えていて、今は県内で約15人が使っています。
〝難病患者〟と〝スマートスピーカー〟
長岡保健所の取り組みを支える国立病院機構・新潟病院の中島孝院長は、「人間と機械の関係」を研究してきた立場から「自然な組み合わせ」だといいます。
■国立病院機構新潟病院 中島孝院長
「機械を使って補うだけじゃなくて、今までやったことがないような探検も“コト”も機械を使えばできるだろうということで、神経難病患者とICT技術は融合できるだろうと考えた。」
さらに、中島さんは患者自身が新たな〝物語〟を紡ぎだせるといいます。
■国立病院機構新潟病院 中島孝院長
「ナラティブ(物語)を書き直すということは、過去自体は書き直せてないかもしれないけれども、過去の解釈を変えている。『病気になって最悪だった』じゃなくて、病気になったけれども『自分はこんなことができるし、自分は家族との関係をこういうふうに見いだせている』ということ。」
こうした使い方について、開発者はどうみているのでしょうか。
アマゾン社の担当者は、海外では活用が進んでいたものの、国内では見られなかった動きだと言います。
■アレクサ技術本部長 福与直也さん
「これを日本でもぜひ進めたいと思って、そういった事案を探していたところ、長岡の保健所からご連絡をいただいた。」
実際の使い方を聞いたところー
■アレクサ技術本部長 福与直也さん
「奥さんが散歩の風景をビデオ通話を使って、その光景を映してあたかも一緒に散歩しているようなそういったことをしていると聞いて、我々も新しい使い方だなと感銘は受けた。」
今後は、利用者の会話に対応できるよう改良を進めるといいます。
2024年4月、丸山さんは県内全域で活動するための団体を立ち上げました。
■県地域おこし協力隊 丸山雄也さん
「本人もそうですし、家族が本人の変化を見て喜ぶ体験をしてすごくいい活動なんだなと。難病のICT支援をとにかく続けていきたいという思いがあるので。」
地域おこし協力隊の任期は3年。残り2年となったなか、今後を見据えたものです。
■県地域おこし協力隊 丸山雄也さん
「高齢者の方とか障害がある方に対しても効果があると言われているので、そうしたところにも広げていきたい。」
事業として確立するために乗り越えるハードルはありますが、「それを上回る可能性がある」という丸山さん。長岡保健所の取り組みを全国に広げたいといいます。
2024年12月11日放送時点の情報です。
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