メキシコで、就任からわずか10月6日目の市長が惨殺された。相次いで起きている政治家たちの殺害事件の背景には麻薬カルテルの存在があるという。
■麻薬カルテルが背景に?
メキシコの首都・メキシコシティから南西におよそ300キロ離れた海辺の街アカプルコ。海岸沿いに大規模なリゾートホテルや、豪華な別荘が立ち並ぶ、人気リゾートだった。
この映像からおよそ30年。麻薬カルテルが暗躍し治安が悪化したアカプルコは“危険な観光地”となり、外国人観光客が減少してしまっていた。
そんなアカプルコがあるゲレーロ州で今回、凄惨(せいさん)な事件が起きた。
10月6日、ゲレーロ州の州都・チルパンシンゴ市で、アレハンドロ・アルコス市長が、何者かによって殺害され、切断された頭部が車の上に置かれていたのだ。
市長就任からわずか6日。一体、何があったのか。
メキシコで麻薬戦争を取材
ジャーナリスト 丸山ゴンザレス氏
「こんなことやるの、麻薬カルテル以外いません」
メキシコで数々の麻薬戦争を取材してきたジャーナリスト・丸山ゴンザレス氏。今回の事件の背景に麻薬カルテルの存在を指摘した。
■殺害の謎…丸山氏「メッセージを込めている」
ゲレーロ州では、政治家が麻薬カルテルへの取り締まりを強化すると、命を狙われるケースがこれまで繰り返されてきた。
殺害されたアルコス市長も、警察官の増員や、捜査システムの強化などを含んだ新たな警備計画を発表していた。
丸山ゴンザレス氏によると、ここ数年、麻薬カルテルは殺害した被害者の死体を出さず、行方不明にするやり方に変えていたという。
丸山氏
「今回のように殺したことを見せつけるのは単に残虐な行為をしたいわけではなく、そこにメッセージを込めているんですね。市長を殺すことで圧力を掛けたい相手がいるのかもしれないですし、対象の当事者でないと分からないメッセージというのも込められたりします」
そして丸山氏は市長が殺害された背景に、ゲレーロ州で繰り返されてきた、政治家などと麻薬カルテルの癒着の歴史があるのではと推測した。
丸山氏
「(麻薬カルテルの)息がかかった、大量に賄賂をまいた政治家、公務員、そういう人たちがもし今の市長のもと一掃されてしまったら、投資したお金が無駄になってしまうので先に市長をつぶしたという可能性もあります。すべてはただ、推測の域を出ないので分かりませんけれども」
今月1日にメキシコ初の女性大統領として就任したシェインバウム氏は、事件について「言語道断」だと非難し、犯人逮捕と動機解明に向けて捜査を進めていると明らかにした。
■メキシコで後を絶たない暗殺事件
メキシコでは政治家などを狙った暗殺事件が後を絶たない。背景にある麻薬カルテルの状況を見ていく。
アメリカのシンクタンクによると、メキシコ南部に位置するゲレーロ州は麻薬の原料となるマリフアナやケシ、コカなどの栽培の中心地として知られ、アカプルコ港は麻薬ビジネスにおける北米向け麻薬輸送の重要中継地点だという。
BBCによると、ゲレーロ州の州都チルパンシンゴ市ではロス・アルディジョスとロス・トラコスという2大カルテルが長年抗争を続けているという。日本の外務省は2018年から、このチルパンシンゴ市及びその周辺に渡航中止勧告を出している。
そのチルパンシンゴ市では、今年6月に行われた大統領選と総選挙の際には立候補者のうち6人が殺害され、さらに、ロイター通信によると今回の市長殺害3日前にも市の秘書官も射殺されるなど、政治家や公務員を狙った殺人事件が相次いでいるという。
今回、犠牲になったアルコス市長も秘書官射殺を受けて治安部隊の配置増強を表明したばかりだった。
メキシコの麻薬戦争に詳しいジャーナリストの丸山ゴンザレスさんは、「アメリカは世界最大の麻薬消費国で、他にヨーロッパや日本にも彼らの麻薬は来ている。もはや一つの国家の話ではない」と話す。
そのアメリカも、メキシコの麻薬へ対応しようとしている。CNNによると7月、アメリカの司法省はメキシコの麻薬組織「シナロア・カルテル」のリーダー、イスマエル・サンバダ容疑者をアメリカ国内で拘束したことを明らかにしたという。
そして、ロイター通信によると、トランプ前大統領は去年9月、メキシコへの軍隊派遣やミサイル攻撃を提案したという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年10月9日放送分より)