無痛分娩などで使用される麻酔薬が全国的に不足しています。医療現場からは影響を心配する声が上がっています。
静岡県浜松市にある産婦人科クリニック。月に50件ほどのお産を受け入れています。このうちおよそ2割が麻酔で陣痛を緩和する「無痛分娩」だといいます。
12月に出産予定の女性も「無痛分娩」を希望。しかし…
木村産科・婦人科 木村聡 院長
「(無痛分娩で)硬膜外麻酔のときにはアナペインっていう薬を使っている。アナペインが製薬会社の工場の関係で出荷停止になっている」
アナペインという局所麻酔薬の供給が不安定になっているのです。
11月出産予定の女性
「妊娠前から、痛みとかに弱いので無痛はそのときから希望していて。当たり前にできると思っていたので、覚悟というか」
国内で「アナペイン」を販売しているのは「サンド社」1社のみ。製造所を海外から国内へ移す際に設備の不具合が発生し、6月から限定出荷が続いていますが、出荷量が回復する見通しは立っていません。
濃度や量が異なる製品によって違いますが、こちらのクリニックで使っているアナペインの出荷予定量は通常の半分以下にも落ち込みました。(7月時点)
木村産科・婦人科 木村聡 院長
「今あるこれがなくなると、次がいつ入ってくるかわからない状況」
アナペインは長時間作用し、副作用も少ないというメリットがあります。ほかの麻酔薬で代替した場合も、その薬が不足することが心配されています。
無痛分娩以外にも影響が広がっています。
浜松医科大学病院 薬剤部 田中達也さん
「通常は1本あたり1人に使用をしているが、現場で1本を複数名に分割して使用する形で運用している」
こちらの大学病院では、整形外科などの手術の際、アナペインを使うケースを絞って、ほかの薬も使用していますが…
浜松医科大学病院 麻酔科医 成瀬智さん
「ある程度、代替できることも多いが、鎮痛力が少し弱いということと副作用。局所麻酔薬による注射の代わりに完全になるということではない」
厚労省が8月にアナペインのジェネリック医薬品を承認したため、12月下旬にも供給が始まる見通しだとしていますが。
木村産科・婦人科 木村聡 院長
「(後発薬の承認で)少しだけ安堵しているけれど、日本の医療のリスクマネジメントとして、代替薬があるかないか、供給不足に1社がなったときに、ほかの会社が作れるような体制をすぐ取れるのかどうかということは、国全体で考えてもらう必要があるかなと」
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