栃木県日光市の強盗事件で奪われたキャッシュカードを使ったなどとして、ベトナム人の男が逮捕されました。周辺では、山あいの一軒家を狙う強盗事件が相次いでいましたが、男が使っていた車とよく似た車が、長野県と群馬県の事件現場近くの防犯カメラに映っていたことが新たに分かりました。
■ATMで複数回…現金引き出す
強盗事件発生から5時間後、男は奪われたキャッシュカードを使い、佐野市にあるコンビニのATMで現金を引き出そうとしました。ただ、カードは利用停止の措置が取られていて、防犯カメラには引き出しに失敗する様子が映っていたということです。
15日に窃盗未遂の疑いで逮捕されたのは、ベトナム国籍で自称内装工のホアン・フー・ホア容疑者(25)。ホアン容疑者が持っていたカードは、先月30日に栃木県日光市で奪われたものです。
被害に遭った男性によると、押し入った男は20代くらいの2人組。2人で話す時は外国語だったといいます。
事件発生は日光市、先月30日の午前0時ごろ。コンビニは40キロほど離れた佐野市にあります。警察の調べで、ホアン容疑者は佐野市のコンビニに行く前に複数回、現金を引き出していたことも分かりました。
■車のナンバー付け替え移動か
ホアン容疑者は群馬県高崎市内の宿泊施設にいたところを逮捕されました。その時、一緒にいたのが、ベトナム国籍のマイ・ヴァン・シー容疑者(23)です。マイ容疑者はビザが切れ、不法滞在の状態でした。
警察は、この2人が一連の強盗事件に関与している可能性があるとみています。
身体の自由を奪って金品を強奪する“緊縛強盗”。この半月で栃木を含め4件ありました。栃木だけではなく、長野や群馬の現場近くの防犯カメラには、逮捕された2人が使っていたものと特徴の似た車が映っていたといいます。警察は、犯行に使われた車両について、ナンバープレートを付け替えて各地を移動していたとみています。
■背景に違法行為誘う投稿も
去年摘発されたベトナム人は2621人。その半数以上にあたる1357人は、技能実習生として日本に来ていました。来日した時期などは不明ですが、マイ容疑者も元実習生です。
群馬県で実習生などベトナム人を支援する団体。会長のブイさんは実習生特有の事情があるといいます。
群馬県ベトナム人協会 ブイ・バン・フィ会長
「技能実習生は1つの仕事しかできない。違う会社に行けない。帰国か逃げるか。帰国すると借金を返済できない。困っている父母家族に仕送りができない。となると、違う道を選ぶ。不良なコミュニティーで色んな仕事を受け入れて、間違った行動をしてしまう」
見せてくれたのはSNSのコミュニティーサイトです。
群馬県ベトナム人協会 ブイ・バン・フィ会長
「不法滞在者が集まっているコミュニティーです。完全に悪質な投稿が毎日してある。『ボロイ』というのが、ベトナムの言い方で『兵士』。“会社から逃げて入隊した”という隠語。(Q.不法滞在の人を集めて仕事を)そうですね。その間にいるのは不良な派遣会社」
ベトナム語で検索すると、実習生を続けられなくなった人に向けて、違法な行為を誘う投稿が並んでいました。
群馬県ベトナム人協会 ブイ・バン・フィ会長
「(Q.これは何と書かれている)不法滞在のための賃貸を宣伝している。『備品は全部そろってます』『家賃は4万8000円』。(Q.外国人に必要なサポートは)仕事に関わること、生活に困った時に、協会に相談してもらい、本人たちが抱えている問題を聞き、行政機関に相談して、正しい情報を本人に説明して最後まで解決してあげる」
■カードで“発覚”捜査線に浮上
元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんに聞きました。
(Q.容疑者が防犯カメラに捉えられてから2週間以上経っています。その間にも、似た事件が3件発生しました。容疑者の姿が映っていても、たどり着くのは難しいのでしょうか)
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん
「捜査の経験上、外国人の身元と所在地の特定は難しい。今回は、容疑者が街中でキャッシュカードを使ったことで、付近の防犯カメラで追い、乗っている車が分かったのではないか」
捜査を意識してか、容疑者たちは車のナンバープレートを付け替えて各地を回っていたとみられます。こうした手口を佐々木さんはこう話します。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん
「捜査かく乱の“常習手口”。一般論として、外国人の不法滞在者は犯罪コミュニティーと関係を持ち、犯罪を繰り返すこともある。その結果、捜査をかく乱する手法を覚えることも」
警察は、2人が使っていたものと特徴がよく似た車が、栃木・長野・群馬の現場近くの防犯カメラに映っていたことから、ホアン容疑者らが日光市の強盗のほか、他3県の強盗事件にも関与している可能性もあるとみて捜査しています。
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