国民混乱「バスでケンカ」も ハイパーインフレで経済崩壊…ジンバブエ“新通貨”流通【ワイド!スクランブル】(2024年5月14日)

国民混乱「バスでケンカ」も ハイパーインフレで経済崩壊…ジンバブエ“新通貨”流通【ワイド!スクランブル】(2024年5月14日)

 かつて100兆という額面の紙幣が発行されるなど、ハイパーインフレに苦しんだジンバブエで、新たな通貨の流通が始まった。長く続く通貨危機の解決につながるのか?

■銀行から出てきた人は…困惑の表情

 アフリカ南部のジンバブエの銀行に、長蛇の列ができていた。目的は、新通貨への交換だ。

 銀行から出てきた人は、困惑の表情で新紙幣を見つめていた。

ジンバブエ中央銀行総裁
「我が国の通貨が、なくならないようにするためにやっているのです」

 先月30日にジンバブエで始まった新通貨「ジンバブエ・ゴールド」。

銀行を訪れた人
「通勤のバスでは、通貨の変更で人々がケンカしたり叫んだりしていました」

 新通貨の導入で混乱する人々。その背景には、迷走する経済政策があった。

■長年の経済破綻状況…国民からは不安の声

 ムガベ元大統領が独裁政権を敷いていたジンバブエは、2000年代に経済政策の失敗によりインフレが進行。サンダル1足が199万9000ジンバブエ・ドルになるなど、通貨の価値は下がっていった。

 2008年には5000億%を超えるハイパーインフレになり、ついに100兆ジンバブエ・ドル紙幣まで登場した。

 このハイパーインフレを打開するため、ジンバブエ政府は2009年にジンバブエ・ドルを事実上、廃止。アメリカ・ドルなどを通貨とした。

 2017年、独立後37年にわたり政権の座にあったムガベ大統領が、クーデターで失脚。経済再生を訴えたムナンガグワ氏が大統領に就任した。

ムナンガグワ大統領
「経済を回復させ、若者の雇用を確保することで国民の貧困を減らしていく」

 ムナンガグワ大統領は経済政策を次々と打ち出し、2022年には金貨を法定通貨にする試みも行ってきた。

 今回の「ジンバブエ・ゴールド」も、こうした経済政策の一環なのだ。

ジンバブエ中央銀行総裁
「通貨が安定することで、日々の大きな価格変動が確実に起こらなくなります」

 しかし、国民からは長年の経済破綻状況から不安の声が上がっている。

銀行を訪れた人
「お金の価値が分からない。銀行に価値を聞いても、分からないといわれました」

■新通貨はインフレ防ぐこと可能だが…経済成長が停滞する恐れも

 新たに導入された通貨「ジンバブエ・ゴールド」には、これまでとは大きく違う特徴があるようだ。

 AP通信によると、ジンバブエ・ゴールドは「金本位制」を採用しているという。

 金本位制とは、政府や中央銀行などが保有している金といつでも交換できることを保証することで、その通貨の価値を担保するというものだ。

 これにより通貨の価値は安定し、インフレを防ぐことができるというメリットがある。

 一方で、金の保有量で発行できる通貨の上限が決まるため、十分な量の通貨を発行できず、経済成長が停滞する恐れもある。

 そのため、現在ではほとんどの国が、金本位制を採用していない。

 そうしたなかでも、ジンバブエ・ゴールドに金本位制を採用した背景には、ジンバブエが資源大国であることが大きいようだ。

 在仏ジンバブエ大使館のホームページによると、アフリカ大陸の南部に位置するジンバブエには豊富な鉱山資源が眠っていて、特に金は1平方キロあたりの埋蔵量が世界2位。確認埋蔵量(=現在の技術で回収可能とされる埋蔵量)は1300万トンに達するということだ。

 一方で、埋蔵量に見合った金を国が獲得できていない現状もある。

 AP通信によると、ジンバブエの2021年の金産出量はおよそ30トンだったという。

 実は、採掘業者らは金を中央銀行に売却することが定められているにもかかわらず、アメリカドルを得るために、多くの金を国外へ密輸しているという。

 その量は、年間の産出量を超えるおよそ36トンに上るという。

 こうした背景もあってか、政府のジンバブエ・ゴールドへの対応は一貫性がないように見える。

 政府は、企業にジンバブエ・ゴールドのみの使用を命じ、違反した場合は罰則も設けているという。

 その一方で、一部の政府機関ではアメリカドルのみを受け入れているという。そのため、南アフリカの経済学の専門家は「政府が最初にジンバブエ・ゴールドを受け入れなければ、国民が続くことはない」と指摘している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年5月14日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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