2015年に導入された「機能性表示食品」の制度。なぜ、ここまで市場は急成長したのか?「特定保健用食品=トクホ」との違いは?食品安全委員会の審査を経ないリスクとは?そして健康被害が出たことで浮き彫りとなった課題とは?手作り解説でお伝えします。
■健康被害多発のサプリは「機能性表示食品」
健康被害が多発した小林製薬の紅こうじサプリメント。「悪玉コレステロールを下げる」という食品の「機能」を表示して販売されていました。裏には一日あたりの摂取目安量などが書かれています。これは、「機能性表示食品」という制度に則ったもの。食品のさまざまな「機能」を表示できる制度で、2015年に導入されました。以前からあった「特定保健用食品=トクホ」よりも手軽に売り出せるこの制度。届出数は、1000件で横ばいの「トクホ」を抜いて、およそ7000件にも上っています。「機能性表示食品」の市場が急成長した背景には、「トクホ」と比べ、「機能性」や「安全性」に関する審査や手続きなどが大きく違う点があります。
■「機能性表示食品」と「トクホ」の違い
「トクホ」は、「安全性」や「効果」を国が責任をもって審査します。実際の製品を使った臨床試験が必要なため、申請して許可を得るまで数年かかると言われます。一方、「機能性表示食品」は、事業者の責任で「安全性」や「機能性」の根拠に関する情報などを国に届け出るだけ。事業者による臨床試験は義務付けられておらず、国が審査して許可を出すわけでもないため、手続きは数ヶ月で済むと言われます。そのため、商品開発のコストは安く抑えられ、中小企業にもチャンスが開かれました。
また、「トクホ」が「健康増進」に限定されているのに対し、「機能性表示食品」は「肌の弾力を維持する」「目の疲労感を軽減する」「足の動きをサポート」など、より幅広い「機能」を表示できるようになりました。
■「機能性表示食品」のリスク
こうしたメリットの一方で、リスクが否めない部分もあるといいます。この制度の導入にあたって、消費者庁の検討会で委員を務めた森田さんは、「トクホの場合、食品安全委員会が厳しい審査を行い、安全性が疑われるものは許可しないが、機能性表示食品の場合、その審査がないので、製品に関する不都合な情報が見落とされたり、企業側が不都合な情報を届け出なかったりする可能性がある」と指摘します。
■「健康被害」に関する「報告義務」
そして、今回、健康被害が出た後の課題も浮き彫りになりました。この制度の導入にあたって参考にしたのがアメリカにある同様の制度です。しかし、「健康被害」に関する「報告義務」をめぐる規定は採用されませんでした。
アメリカの制度では、「事業者は、重篤な有害情報を入手してから15日以内に報告」することが義務付けられていますが、「機能性表示食品」のガイドラインには、「健康被害が出た場合には速やかに報告することが適当」と曖昧な表現にとどまっているのです。今回の“紅麹問題”は、最初の健康被害が把握されてから情報が公表されるまでに2か月余りかかっていて、被害を拡大させた可能性も指摘されています。市場が急拡大し、身近になった「機能性表示食品」ですが、いったん立ち止まって見直すべきところもあるようです。
(「サンデーモーニング」2024年4月7日放送より)
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