中国で始まった「全人代」。初日には今年の経済成長率の目標として「5%前後」という数字が示されましたが、専門家は「達成は厳しい」と見ています。なぜ今、敢えてハードルの高い目標を掲げなければいけないのか。その背景には、「新型貧困」や「消費降級」という言葉が生まれる経済状況があります。中国で何が起きているのか、手作り解説でお伝えします。
■全人代とは?
北京の人民大会堂で開かれている全人代、全国人民代表大会とはどんなものなのでしょうか?
中国の憲法では「最高権力機関」と位置付けられていて、中国共産党が決めた法律や予算、重要政策などを正式に決定する場です。参加するのは、地方政府の代表や軍の代表ら、およそ3000人。民族衣装をまとった少数民族の姿もあり、多様性がアピールされています。
■今回の注目ポイントは?
全人代では、習近平氏と李克強氏が国家主席と首相に選出されたり、習氏の国家主席の任期撤廃などが正式決定されたりしました。
そして、恒例となっている注目ポイントが、経済成長率の目標の発表。今年は、5%前後という成長目標が掲げられました。
■「目標5%」その裏には…
90年代後半から10%前後の成長を続けてきた中国。しかし、リーマンショック以降は右肩下がりの傾向で、2023年は5.2%でした。ゼロコロナ政策からのリベンジ消費が押し上げてもこの数字でしたので今年の目標5%は、かなり強気の数字だといいます。
中国経済の専門家、東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は「今の経済状況では達成することが非常に厳しい数字」だと指摘。
ではなぜ、敢えて高い目標を掲げるのでしょうか?「国民向けに『去年より生活は悪くならない』とのアピール」だというのです。
■中国に忍び寄るデフレの影
世界2位の経済大国となった中国。沿岸部の都市を中心に経済が急激に発展した一方、内陸部の農村などとの格差が拡大していましたが、今は、都市部でも不景気の波が押し寄せています。懸念されているのは、デフレです。
■「消費降級」で「貧乏人セット」人気
「消費降級」という言葉が流行。化粧品などを海外製から安い国産品に変えたり、外食も高級店から安いお店に変えたりと、節約志向が高まっているのです。
北京でも「貧乏人セット」と呼ばれる激安メニューが話題に。60円で、お粥やスープなどの朝食を食べ放題の店が活況を呈しています。
背景にあるのは不動産バブルの崩壊。「新型貧困」という言葉も生まれています。投資目的でマンションを保有していた人たちが、売り時を逸したまま、住宅ローンの返済に追われ、生活を切り詰めているのです。
■中国政府「安全」繰り返すも…
そんな中で開かれた、今年の全人代。重要政策の方針を示す政府活動報告では、「安全」という言葉が、過去最多タイの29回使われていました。
専門家の柯隆氏は、「『安全』をアピールするということは、まさに不安が広まっていることの裏返し」「中国政府はその不安を抑え込もうとして統制を強化しているため、さらに経済活動が萎縮するという悪循環に入っていて、中国への輸出に頼る国々への経済にも影響が大きい」と指摘しています。
(「サンデーモーニング」2024年3月10日放送より)
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