その国の経済規模を示す名目のGDP=国内総生産で日本がドイツに抜かれ、世界4位に転落しました。円安も一つの要因ですが、さらに、ドイツとの働き方の違いも浮き彫りに…。
※動画内で紹介したアンケートは16日午前8時で終了
■「労働者が強い」ドイツの会社文化
小川彩佳キャスター:
1つの指標にすぎないとはいえ、名目GDPでドイツに抜かれて世界4位に。どう受け止めますか?
株式会社 QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
中学生の頃に習ったときは2位だったんですけどね・・・名目GDPとはいえ、一方の実質GDPも上がってない。また、株は上がっていても、中小企業は儲かってない状態です。実体経済を支えている中小企業への支援というのは、技術の面でもお金の面でも必要になってくるのかなと思いますね。
藤森祥平キャスター:
では、日本と名目GDP世界3位になったドイツを比較してみます。
<日本>
人口:約1億2400万人
平均賃金:約41500ドル(OECD 2022年・米ドル)
ビッグマック指数:480円
<ドイツ>
人口:約8400万人
平均賃金:約58900ドル(OECD 2022年・米ドル)
ビッグマック指数:約800円
平均賃金はドイツの方が約1.5倍高く、またビッグマック1個の値段で物価の水準を表す「ビッグマック指数」では約300円以上の差がついています。
23ジャーナリスト 片山薫 記者:
なぜこんなに差がついてしまったのかというと、はっきり言って、“賃金の問題”ではないかと。
30年間の賃金の伸びを比較すると、日本は30年前から1.1倍、ドイツは2.1倍になっているんです。
なぜ賃金の伸びに差がついてしまうのか?ドイツ出身の経済学者イェスパー・コールさんに話を聞くと、1つは会社の「文化」が違うそうです。
日本は「会社」が強いのが特徴です。そのため、働き方は残業を織り込み済みの長時間労働が当たり前です。一方で、ドイツの会社は「労働者(労働組合)」が強いのが特徴です。働き方は基本的に1日8時間で、残業しないのが基本。より効率的に働いていると考えられます。
次に、「利益配分の仕方」も違います。日本の場合、利益を「内部留保」として貯める傾向にあります。また、人件費をコストカットの対象としており、非正規雇用が増えているというのもその証です。一方、ドイツでは残った利益は「賃金に回そう」という考え方があります。この背景には、経営に労働者側の代表者が入っているというのも要因の1つとされています。
■「休むために働く感覚」ドイツ人の働き方
小川キャスター:
ドイツでは、日本とは違った仕事への向き合い方というのが根付いているということなんでしょうか。
ドイツ公共放送東京支局 プロデューサー マライ・メントラインさん:
ドイツ人の多くは「休むために働く」感覚なんです。
例えば、ドイツには「閉店法」というものがあって、日曜日はレストラン以外のお店は営業してはいけないんです。そのため、日曜日はショッピングなどができないため、逆にしっかり休みます。
加えて、一部企業では週末に会社がサーバーを止めるため、仕事の電話もかからないし、メールも届かない。加えて、有給とは別に病気用の有給もあります。ドイツは病気のために有給を貯めなくていいため、長期休暇が取りやすく、有給消化率が高いのです。
伊沢さん:
「これをいきなり真似しよう!」と言われても、ジョブ型雇用にするのか、長期の雇用にするのか、雇用制度から変えていかなきゃいけないので。これを国ぐるみでやれたら理想だなと思います。本当に文化を変えないというレベルですね。
小川キャスター:
名目GDPで3位になったことを、ドイツの人たちはどう受け止めてますか?
マライ・メントラインさん:
ドイツにいる親に話したら、逆に「そうなの?」って言われるくらい全然実感がないそうなんです。
というのも、今のドイツは物価高ですし、G7の中で唯一のマイナス成長と言われています。長年、国内インフラに投資してこなかったため、ここ最近は海外企業がドイツで新しい拠点をあまり設けないといったマイナス面も非常に大きい認識です。
■3年後にはインドに抜かれ5位に転落と予想も…
小川キャスター:
今後、日本の立ち位置は?
片山記者:
IMF(国際通貨基金)の予想だと、3年後、日本はインドに抜かれて5位になるという予測も出ていいます。当然、GDPはあくまで国の経済規模なので、規模が大きければ良いというわけではないですが、日本の生産性の低さ、賃金上げ進まない状況は改善しなくてはいけないというのはあります。
伊沢さん:
今、年齢が上の方を見ていると、GDPは2位であるということが誇りだった部分もあるわけじゃないですか。その「誇り」を再定義しなくてはいけないのは結構辛いことだなと思います。
我々も変えるということを恐れず、テクノロジーなどによる労働の効率化にも踏み込んでいく必要があるのかなと思います。
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