”人と暮らしを診る” 「在宅医療」と向き合う医師  患者がその人らしい日々を支えるために…

”人と暮らしを診る” 「在宅医療」と向き合う医師  患者がその人らしい日々を支えるために…

広島県の65歳以上の人口の割合、「高齢化率」は、推計で、来年30%を超えます。
こうした中、増加するのが「医療需要」、中でも国の方針とともにニーズが高まる「在宅医療」に積極的に取り組む一人の医師を取材しました。

「おはようございます」

慣れた様子で遠慮なく家に入る一人の男性。
私服姿で、一見、そうには見えませんがお医者さんです。
福井英人医師。
在宅医療をはじめて5年です。
月に2回のペースで患者の家を訪問し、診察にまわります。
広島市安佐南区の広い範囲を車で診療しています。

【福井内科医院・福井英人医師】
Q:いつも先生が運転なんですか?
「自分が運転したほうが、道を覚えるんで」
Q:急に呼ばれたときとか?
「僕、患者さんの家全部頭に入ってますね。基本、地図を見ずに全部行ける」

「在宅医療」それは医師が定期的に訪問をして診療をする「訪問診療」と、かかりつけ医が患者の急変時に自宅に駆け付ける「往診」があります。
福井医師は「訪問診療」しながら「往診」にも24時間対応しています。

「おはようございます」

診察はまるで友人を訪ねるようです。
こちらのおじいさんは1人暮らし、心不全などを抱えています。
一人暮らしでも必要なサービスとつなげば在宅医療は可能だと言います。

【福井内科医院・福井英人医師】
「デイサービスだったり、小規模多機能っていうサービスがあったりだとか。訪問入浴っていうサービスがあったり、そういったものを複合して、それぞれにあったオーダーメイドの医療を作っていくというのが在宅医療ですかね」

子だくさんの福井家、自分の生活もある中でこうした診療を続けるのは簡単なことではありません。
大阪や沖縄の病院で救命救急医をしていた福井医師。
ドクターヘリにも乗り、様々な局面に対応。
経験を積みました。
故郷広島に帰り、5年前父親の病院で始めたのが救命医の経験が生かせる在宅医療でした。

【福井医師】
「変わらない暮らしの中で医療が受けられる病院が病気を見るところだとしたら在宅は人と暮らしを見るところ。人を見る、暮らしを見る医療だと思います」

福井医師により、自宅療養が可能になった人もいます。
長年みてきた患者の一人、西本幸子さん。
重度の心臓病を抱え、肺の病気もあり余命1~2年だと大学病院で言われていました。
自宅療養してからは娘の康子さんが付き添います。

【西本幸子さんの娘・佐々木康子さん】
「ここならわがままも言えるし、お互い近所の人もね覗いてくれたりね。友達も来たり」

患者は、高齢者や認知症が8割、他にもがんや、パーキンソン病など難病を患う若い人もいて、およそ150人を診察しています。

【広島市民病院研修医・林理香さん】
「広島市民病院から来ました研修医2年目の林理香です。1カ月お世話になります。よろしくお願いします」

福井医師は、広島市民病院から今年度5人の研修医を1カ月間ずつ受け入れています。

【福井医師】
「9月が7人み取り、家が5人、大体7割くらい在宅みとりをしています」

患者には大きな病院を退院した人、逆に病状が悪化し入院する人もいて連携は不可欠です。

【研修医・林さん】
「自分が普段見ている診療が終わってから継続それをしてどういう風に過ごされているのか、そこをしっかり勉強できたらと思います」

「今月から新しい研修医の先生」
「痛くないです?」
「ちくっとしますよ」
「痛かったら痛いっていうんよ」

実践あるのみです。
次に訪れた女性は、持病とは別におなかが痛く体調がすぐれません。
行ったのは…エコー検査。
さらに、心電図検査も。
携帯用の医療器具で在宅でもできることが多くあります。

【福井医師】
「典型的な内蔵の痛みじゃない。ちょっと痛み止めを出して様子見てみよう」

【研修医・林さん】
「ゆっくり話を聞く時間も病院だとそんなに取れないし、ご家族の方と話をするタイミングもそんなになくって貴重だなと思います」

【福井医師】
「やっぱり患者さんと距離が近いんで、その人の生活背景も含めてみるというのが在宅なんで」

2週間後、元気になった姿も確認できるのは在宅医療ならではです。

この日、福井医師は花を手に車に乗り込みました。
仏壇に供えるためのものでした。
およそ1ヵ月半前。
あの西本さんが亡くなっていました。
享年86歳。
余命1~2年と言われましたが、3年を自宅で過ごしました。
最後は体調を崩し連携する病院へ入院。
自宅に戻ろうとした矢先のことでした。

【福井医師と娘・康子さん】
「病室行ったら酸素しながら外を眺めてね。先生もう1回家に帰りたい、帰りたいって手をこうやられてね」
「あれで帰らしちゃる言ってくれちゃってね」
「あれだけがちょっと心残りがあるんだけど」
「やっぱりちいと心残りがあったかなと思ってみたり、精一杯自分じゃやったかなと思いながら」
「あれからは長生きされたと思いますけどね」

「グリーフケア」亡くなった方のご家庭に、四十九日を過ぎたころ訪れ話をします。

【福井医師】
「残された遺族の方の気持ちを聞いたりだとか自分たちがやっとったことがほんまによかったんかなって、自分たちへの確認の意味もありますし両方の心のケアみたいな感じがあるかなとか思ってます」

娘さんの想いは?

【娘・康子さん】
「在宅診療はすごくうれしかったです。十分にしてもらいました。やっぱり家でみられるなら在宅がいいなと思いました」

この日、林医師は、1ヵ月の研修を終え、そのまとめを発表していました。

【研修医・林さん】
「私にとって訪問診療は、自分らしく過ごす日々を支える医療なんじゃないかなと思いました。病気になったりとか、年齢を重ねることでどうしてもできないことが増えていったりとかしんどい瞬間がたくさんあることもあると思うんですけど、今、その人にとってできる中で、自分らしく過ごしていくのを支えるのが訪問診療の役割なんじゃないかなと思いました。10年か15年後ぐらいに雇ってもらえたらいいなと思ってます」

福井医師は、来年度も8人の研修医を受け入れる予定です。
大きな病院との連携を深めると共に、医師たちが将来経験を積み在宅医療に携わる種まきを続けていきます。

人と生活に寄り添う「在宅医療」。
これからどのような広がりを見せるでしょうか。

(スタジオ)
人生の中で家族の死に関わる医療と向き合う時は必ず来る。

【TSSコメンテーター:元広島東洋カープ・安部友裕さん】
「病院にいるのではなく自分から訪問するのは非常に労力がかかる。研修医を育てて必要とする人のために在宅医療が広まるといいと思う」 *************************************
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