(山内彩加アナウンサー)
水道水の水源から発がん性の疑いなどが指摘される高濃度の有機フッ素化合物「PFAS」。そもそもどんな物質で、何が問題になっているのか見ていきましょう。
「PFAS」というのは、有機フッ素化合物の総称で、水や油を弾く、また熱に強いなどの性質があります。そのため、過去にはフライパンのコーティングや洗剤、また防水加工の衣類などに使われてきました。ただこの「PFAS」の中の「PFOS」と「PFOA」は特に毒性が強くて、製造や輸入など一部の用途を除いて原則禁止となっています。環境下で分解されにくく、蓄積されやすいという性質もあるので、永遠の化学物質と呼ばれているんです。では、毒性がどのくらい強いのか。国際がん研究機関によりますと、ヒトに対しての発がん性が「あり」「おそらくあり」「ある可能性あり」「分類できない」の4段階に分けられる中で、「PFOA」はかつて「ある可能性あり」のところに分類されていましたが、去年12月から2段階引き上げられて「あり」に変化しました。
また「PFOS」は、昔はこれらの分類に入っていなかったんですが、去年12月から「ある可能性あり」に分類されるようになりました。(夏目みな美キャスター)
この「PFAS」が全国各地の川や水源地で、高い濃度で検出されるということが相次いでいるんです。環境省によりますと「PFOS」や「PFOA」に関して、水の中にどれくらいの濃度で含まれていていいものか。暫定的な目標値というものを設定しているんですが、2020年度までに、この東海地方でも、愛知県の名古屋市内の川、また愛知県豊山町で飲料水に使っていた地下水で、目標値を超えて検出されたと公表しました。さらに、各自治体の調査などを進めていくと、名古屋市と豊山町以外にも、岐阜県の各務原市では、市内の約半数に水道水を供給する三井水源地の水、また三重県の四日市市、そして愛知県の犬山市内の川からも目標値を超える「PFAS」が検出されたということです。(夏目キャスター)
国際機関は、この発がん性のリスクというものを指摘しているんですが、日本では国はどう考えているんでしょうか。
「これまでの調査・知見を軽んじている結果」
国は内閣府の食品安全委員会が、これまでの議論を踏まえて「PFAS」の健康影響評価を1月26日に公表しました。その結果、全部で8つの項目に評価を加えています。肝臓・脂質代謝・免疫に関しては「可能性は否定できないが、証拠不十分」
発ガン性は「証拠が限定的・不十分」
神経や生殖・発生については「知見不十分・不明」
甲状腺は「影響があるとは言えない」
一方で、遺伝毒性については「直接的な遺伝毒性はない」と否定。
ほとんどがわからないという評価なんですね。(夏目キャスター)
日本と国際機関で健康リスクについて、温度感が違うような気がします。(大石アンカーマン)
そうですね、その辺りがどういうことなのか。この「PFAS」問題を調査している京都大学の原田浩二准教授に伺いました。今回の評価については「これまでの調査・知見を軽んじている結果。今の目標値を見直すべきだったのでは?」と言っているんです。今の「PFOS」と「PFOA」の目標値というのは、1リットル当たりどれだけ含まれているのかということですが、日本はこの2つを合わせて50ナノグラム。ナノグラムとうのは、10億分の1グラム。注目はこの数字です。
アメリカはどうかというと、4ナノグラム。やはりアメリカと比べて日本の目標値が甘いなというのは、これを見てもわかりますよね。これを見直すべきだったのではないかと原田さんは言っているわけなんです。もうすぐ国は新しい都道府県別の「PFAS」の調査結果を出しますが、血液検査などは、市民団体や大学が独自でやっているだけなんです。国は国民の健康を守るのも大きな仕事だと思いますので、国独自で調査も進めてほしいと思います。
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