派閥による政治資金問題をめぐり、岸田派・安倍派・二階派に続き、森山派も解散を決定。派閥のあり方が焦点となる中、党内では安倍派幹部の政治責任を問うが出てきています。
自民党の党則に基づく処分は、全部で8段階あります。最も重たい処分は「除名」です。2021年、コロナ禍で緊急事態宣言中、深夜までクラブに滞在した”銀座3兄弟”は一段階低い「離党勧告」という処分でした。今回、この“銀座3兄弟”より軽い処分にするわけにはいかないということで、「離党勧告」の案が出てきました。
政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏は、「安倍派幹部の7人全員が離党とはならず、塩谷立座長が離党して決着するのではないか」分析しています。一方で、世論・党執行部・若手議員などからは「幹部らが責任を取るべきだ」という声が非常に強まっています。そうなると、歴代事務総長の誰かが今後、責任を取らざるを得なくなる可能性もあると見ています。
ABCテレビの木原善隆コメンテーターは、「処分する・しないは論点のすりかえだ」と分析します。
「疑惑のあった安倍派の幹部を離党させてはどうか?」という議論がなされているようですが、そうなると疑惑のあった二階派や岸田派も離党などの処分をしなければ道理が立たないのではないでしょうか。また、茂木幹事長が処分を求めているのも、政治と金で疑惑を持たれたのは他の派閥なのに、なぜ疑惑のなかった茂木派が派閥を残すことで悪者扱いされなければならないのか?という不満もあるのでしょう。
今回の問題は「派閥」ではなく「政治と金」であり、自民党内で派閥を解散する・しない、処分する・しないと議論することは論点のすりかえです。いみじくも二階氏が「人は自然に集まってくる」と表現していますが、派閥なんて解散しても結局またできます。派閥は“舞台“になっただけで悪いのは政治と金の問題ですから、安倍派の処分よりも政治と金にまつわるルールの改正、「透明性を高める」「政治家が責任を取る」を実現してほしいと思います。」
こうした中、25日、裏金事件の再発防止等を検討する、自民党の「政治刷新本部」による中間取りまとめが決定しました。
その中身は、派閥を「”お金”と”人事”から完全に決別する」という内容です。具体的には・・・
●派閥の政治資金パーティーの禁止
●「もち代」「氷代」(冬と夏の所属議員への手当)の廃止
●派閥の推薦人事の禁止
●法令違反した場合、派閥の活動休止か解散
●会計責任者が逮捕・起訴されたとき、議員本人も処分
などが明記されました。一方で、政策集団として、派閥は残り続けるということです。
中間取りまとめについても伊藤惇夫氏に話を聞きました。伊藤氏はこの内容について、「百歩譲って10点、具体性がゼロ」と答えます。理由について、焦点となっている「連座制」と「政策活動費」の記載がなかった点を挙げています。
連座制・・・会計責任者だけでなく議員本人も処罰の対象になる制度
政策活動費・・・党から議員個人に支給されるもので、使い道などを公表する義務なし。そのため裏金の温床といわれている。
ただ今後、連座制について世論や野党から追及された場合は、岸田総理が支持率回復のために取り入れようという考えが生まれるかもしれないと、伊藤氏は推測します。
【木原コメンテーターの解説】「中間とりまとめはまだまだぬるい」
政治刷新本部は中間とりまとめで、
●派閥の収支報告書の提出は外部監査を義務づける
●会計責任者が逮捕・起訴された場合は、議員を処分できるように党則を改正
●国会議員の政治資金パーティーの収入は銀行振り込み
●収支報告書はオンラインで提出
など、金と人事から完全に決別すると説明していますが、私はこれが「最低ライン」だと思います。このとりまとめにはまだまだぬるい部分があります。
例えば「会計責任者が逮捕・起訴された場合は、議員を処分できるように党則を改正」とありますが、これは刑事罰ではなく党内で処分をするということを念頭に置いているとみられます。収賄罪やあっせん収賄罪で有罪判決を受けると議員は一定期間、選挙に出られなくなります。確かに自民党は与党で、自民党の公認が得られなければ当選が難しくなるとするならば、党内で処分をするということも議員にとっては同じような意味があるのかもしれません。また、刑事罰とする場合は会計責任者の逮捕・起訴で議員も罪に問われる「連座制」の導入が検討されることになりますが、議員たちがこれに慎重になる理由として「失脚させるためにわざとミスを犯す人物を他陣営に送り込む可能性がある」という論があります。否定できない話ではありますが、党内の処分というローカルルールではまた「抜け穴」を作るのではないかという疑念が残ります。
国会議員の仕事は「法律を作る」こと。しっかり立法してほしいと思います。