雪の中に顔をうずめる黒い物体は14日に撮影されたヒグマの映像です。クマの痕跡が4日連続で見つかっている町を緊急取材しました。
■4日連続“出没”の町 ヒグマ「走っていた」
北海道の北西部、日本海に面した小平町。19日の最低気温はマイナス20.8℃。今季2番目の寒さです。1月も後半に入り、真冬にもかかわらず、この町で今、ヒグマの出没が相次いでいます。
小平町 経済課 三口卓人さん
「朝方6時すぎ、ここの近辺にクマが走っていて、見たところクマがいた」
町の職員が14日午前6時40分ごろ、雪深いこの場所でヒグマを目撃したといいます。
その時に撮影した映像です。雪の上に黒い物体が…。映像を止めて確認すると、耳のようなシルエットが。ヒグマの顔のように見えます。スローで見ると初めは顔が雪に隠れて映っていませんが、その後、顔を上げる動作が確認できます。雪に顔をうずめて何をしているのでしょうか。
小平町 経済課 三口卓人さん
「シカの残滓(ざんし)があった所。シカの死骸」
ヒグマが出没した場所に以前からシカの死骸があったのを町の職員と猟友会が確認していました。ヒグマはシカの肉を食べていたとみられます。
小平町 経済課 三口卓人さん
「川に落ちて死んでいたシカを引っ張り上げて食べていた可能性」
映像を撮影したのは14日で、集落の近くを流れる川の周辺です。その後16日から19日まで4日連続でヒグマの足跡が見つかっています。さらに、小平町はこの川岸にエゾシカの死骸があったのを確認していました。
小平町 経済課 三口卓人さん
「地区の人の話を総合すると、今月4日からうろついていた可能性。連日のように足跡が確認でき、実際(ヒグマを)見た人もいる」
■眠らぬヒグマ 背景にエゾシカ
冬でも餌(えさ)があることで「穴もたず」と呼ばれる「冬眠しないクマ」が増えることが危惧されています。
北海道大学大学院 下鶴倫人准教授
「餌があり続ければ冬眠しない。森の中にシカの残滓がたくさん冬でも落ちている状況が生まれれば、その地域のクマの一部は冬の間それを食べて、冬眠せずに冬を乗り過ごすクマも出ないとは限らない」
19日まで4日連続でヒグマが出没している小平町では、緊急の対策を取っています。
小平町 経済課 三口卓人さん
「クマの捕獲用の箱ワナ。この中にクマの餌となるものを仕掛けて中にクマが入って行って、引っ張ると扉がドンと落ちる構造になっている」
ヒグマが通っているルートを推測し、その「通り道」にわなを設置しました。中にはシカの脚が入っています。
小平町 経済課 三口卓人さん
「人家にも近く、危険個体だろうと判断して箱わなの設置を決めた」
すぐ近くには…。
小平町 経済課 三口卓人さん
「足跡が奥の方まで続いている」
ヒグマのものと思われる足跡が。さらに…。
小平町 経済課 三口卓人さん
「どうやらシカの毛。エゾシカがいればヒグマも同じくそこにいるのではないか」
■調査員襲われる被害も…
ヒグマが冬眠する場所にも異変が起きています。札幌市では住宅地からわずか500メートルの位置で巣穴が見つかっています。
札幌市熊対策調整担当 坂田一人課長
「市民の利用も多い三角山という小さな山があるが、そこを散策している人から巣穴ではないかという情報があって、市で穴について調査していたところ、調査業務にあたっていた委託業者2人がクマに襲われてけがをした」
巣穴から出てきた体長2メートルほどのヒグマに襲われたといいます。札幌市はこの冬も警戒を緩めていません。
坂田課長
「ヒグマの出没は冬眠だからといって100%ありえないことでもない。365日、札幌市のヒグマ防除隊にいつヒグマが出没して出動要請しても、すぐに駆け付けてもらう体制は整えている」
■ハンター試験に殺到 危機感募る町
クマ対策のエキスパートとして重要な役割を担うのが札幌市の「ヒグマ防除隊」です。
北海道猟友会札幌支部 奥田邦博支部長
「言うまでもなくこのクマ防除隊は札幌市の生活安全のインフラを支えています。よりエキスパート、皆さんから信頼されるハンターを選ぶ」
ヒグマ防除隊の隊員は北海道猟友会札幌支部のハンター約500人から選りすぐられた30人ほどの精鋭です。市街地でヒグマが出没した場合などに自治体からの緊急要請を受けて現場に出動し、追い払いや捕獲などを行います。
19日、射撃場で「ヒグマ防除隊」の試験が行われました。
新規メンバーの募集にはハンター22人が名乗りを上げ、書類選考と面接試験を通った人が実射試験を受けます。
初めて挑んだ51歳の浅利さん。
ヒグマ防除隊の試験を受ける浅利裕志さん
「猟銃の所持許可と狩猟免許を持っている人は周りを見ても少ないし、自分の持っているもので社会貢献という大きい目標。できる範囲でやっていきたい」
ハンターの高齢化が大きな課題です。
北海道猟友会札幌支部防除隊 玉木康雄隊長
「エントリーする人は若い人が増えた。実際には若いといっても40、50代。今のうちから次世代を育てていかないと、次どういうふうに対処していくのか非常に問題になってくる。誰でもできる仕事ではないので、そういった技術を社会のために役立てたいという志がある人が、非常に多くエントリーしてきたのは我々の救い」
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