“ダイエット目的”に懸念も…肥満症治療薬『ウゴービ』が保険適用に(2023年11月22日)

“ダイエット目的”に懸念も…肥満症治療薬『ウゴービ』が保険適用に(2023年11月22日)

日本では、22日から肥満症治療薬『ウゴービ』が、公的医療保険の適用対象となりました。

世界規模で進む肥満。肥満の防止に取り組む世界肥満連合によりますと、2025年までに、世界の成人の5人に1人が肥満になる可能性があり、うち3分の1は、BMIが35以上の高度な肥満だとしています。

ウゴービは、どの程度の効果があるのでしょうか。
千葉大学病院・小野啓医師:「欧米も含めた論文で、日本人のデータだと“最大量2.4mg、週1回”の注射で、10%ぐらい減量するデータがある。(期間は)半年~1年くらいで低下する」

自分で注射するタイプの薬で、満腹中枢に働きかけ、食欲や胃の運動などを抑制することで、肥満の解消につながるとされています。
千葉大学病院・小野啓医師:「いま、肥満症の治療は、これまで薬がほとんどなくて、今回、薬剤だけで10%(体重が)落ちるということは、非常にこれまで苦しんでいた人を助けるという面がある」

いま、こうした肥満症の薬が、世界的に不足しているといいます。
千葉大学病院・小野啓医師:「いま、一番、非常に少なくて、ドイツだと輸出を禁止するとか、規制をかけている国があるぐらい。現在、供給面が非常に難しいことに全世界でなっている」

世界一の肥満国といわれるアメリカでは、2021年にウゴービの保険適用が承認されました。ウゴービの人気は年を追うごとに高まっていて、今年の上半期の売り上げ高は、去年の同じ時期と比べて3倍以上に上っています。

ウゴービと共に需要が高いのが『オゼンピック』。これは、本来、糖尿病の治療薬ですが、食欲を抑えるなどの効果もあり“やせ薬”として知られています。
肥満症治療薬に詳しいウォルデン医師:「当院で1、2を争うほど人気で、オゼンピックやウゴービを処方しています。糖尿病でも肥満でもなく、美容目的で痩せたい患者も多いです。週3日で診療していますが、処方せんを求める予約でいっぱいです」

一方で、問題もあると指摘します。
肥満症治療薬に詳しいウォルデン医師:「効果は永続的ではなく、使用期間しか効きません。確かに依存しやすくなります。薬の需要は高いものの、優先すべきは糖尿病患者です」

アメリカのように、日本でも適応外使用で薬不足が起きることが懸念されます。

長年、肥満症に苦しむ永田耕一さん(46)。現在の体重は140キロ、BMIは42を超えています。永田さんは、先天性の病気で、食事制限や運動では、体重が減りにくいのです。
肥満症に苦しむ永田耕一さん:「自転車で長時間こいだり、食事制限、ウェートトレーニング。体重140キロのまま3~4年経つ。そこから1キロも動かない」

ウゴービには、代謝を向上させて、脂肪燃焼を促進する効果も期待できます。しかし、副作用の心配もあり、不安は残ります。
肥満症に苦しむ永田耕一さん:「救世主じゃないけど、期待したらそこまでいく存在。でも本当かなって疑いが…(Q.体重が落ちて、症状が改善したら何がしたい)気軽に服とか買いたいですね。今、入るサイズないんで」

※ウゴービの対象は、このような患者です。
『高血圧』『脂質異常症』『2型糖尿病』の、いずれかの健康障害があり、食事・運動療法で十分な効果が得られない人で、「BMIが35以上」または、「BMIが27以上で、肥満に関する健康障害が2つ以上ある」こと。健康障害には、ほかにも『変形性膝関節症』『睡眠時無呼吸症候群』などが挙げられます。

厚労省は、ガイドラインで「ダイエットなどを目的に投与してはならない」と示しています。

ただ、千葉大学病院・小野啓医師は、懸念もあるといいます。
小野医師は「条件を満たさなくても、保険適用外の自費診療で、ダイエットを目的に利用する人も出てくるだろう。そうした人が増えてしまうと、供給不足が起こってしまい、本来、使用したい人に届かなくなる可能性が高くなる」としています。

ほかにも、副作用の懸念もあります。小野医師は「“吐き気”や“急性すい炎”などを招くこともありうる。医師の診断のもと、用法・用量を守って、適切に使用をしてほしい」と話します。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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