今年9月30日、宝塚歌劇団に所属する女性(25)が、自宅マンションの敷地内で死亡しているのが見つかりました。警察は自殺を図ったとみています。
遺族の代理人弁護士が10日に会見を行い、“上級生によるパワハラ”と、月400時間を超える“過酷な労働実態”について訴えました。
遺族側の代理人 川人博弁護士:「同じ期のメンバーが(組に)当初8人いたが、亡くなった当時は2人しか活動していませんでした。2人とも娘役で、男役の様々な詳細は分からないことも多く、ところが上級生の指導を受け、彼女たちが下級生に全般的な指導や援助をしなければならなかった。例えば、衣装を1つ買うのも大変苦労したという経過があります。本来8人でやるところを2人で行うのは無理な体制で、極めてまれなこと。劇団はこうした状況を当然、知っていたわけですけど、改善措置を取らなかったということで、過重な業務を課すことになった」
さらに、遺族によると、上級生が「下級生の失敗は、すべてあんたのせいや」「マインドが足りない」「嘘つき野郎」など、稽古中に暴言を浴びせたといいます。1カ月ほど前、宝塚歌劇団は第三者による調査チームを発足させましたが…。
宝塚歌劇団 渡辺裕企画室長:「まず否定させて頂きたいのは、加害者・被害者という言葉。加害者も被害者もいない。一部報道に、上級生が下級生の前髪をつくる時に“ヘアアイロンを長く押しつけた”と報道があったが、ヒアリングの結果、本人たちもそんなことはなかったと。(誤って)当たった事実はあり、そこは確認している」
遺族側によると、女性は上級生からヘアアイロンを額に当てられたといいます。調査結果をまだ公表していないなかで、いじめがあったとする報道を否定しました。
遺族の代理人が明らかにした資料には、一日の拘束「15時間」が並び、「22時間5分」の日もありました。
川人弁護士:「同居している家族の証言では、3時間程度の睡眠時間が続いた。彼女は俳優として演じる準備と、演出家を補佐して、シナリオとか配置の決定などをしなければいけなかった。過労の極みにあったわけだが、本来は上級生がサポートするところ、逆にパワハラと言わざるを得ない言動を続け、劇団の演出家もしっかりした仕事のサポートを行わなかった」
亡くなる直前1カ月の総業務時間は437時間35分、残業とされる時間は277時間35分(遺族側の記録などから)。法律が定める時間外労働の上限「80時間」いわゆる“過労死ライン”を大きく超えています。休日は1カ月半にわたりありませんでした。
川人弁護士:「入団5年目までは雇用契約の扱いで、6年目からは委託契約という形式。実際は使用従属関係にあったことは明白で、形式上、委託契約と呼んだとしても安全配慮義務違反。安全配慮義務が劇団には存在すると思います」
夢を叶え、宝塚歌劇団7年目。下級生の責任者の長を務めていました。遺族は、パワハラや過酷な業務環境があったとして、上級生と劇団などに対し、謝罪を求めています。宝塚歌劇団は「大変重く受け止めており、ご遺族に対しても誠実に対応してまいりたい。今後、外部弁護士らの調査結果を踏まえて、真摯に対応してまいる所存です」、運営する阪急電鉄は「阪急電鉄としても、大変重く受け止めています」とコメントしています。
両親と妹の訴えです。
遺族の訴え:「娘の笑顔が大好きでした。『どんな辛いことがあっても舞台に立っている時は忘れられる』と娘は言っていました。けれど、それを上回る辛さは、忘れられる量をはるかに超えていました」
女性は、来年の春に退団する予定でした。本当は、この夏を希望していましたが、同期2人の退団の意向を知り、責任感から延期したといいます。
遺族の訴え:「8月半ば以降、娘の笑顔は日ごとに減って、辛く苦しそうな表情に変わっていきました。それは、新人公演の責任者として押し付けられた膨大な仕事量により睡眠時間も取れず、その上、日に日に指導などという言葉は当てはまらない、強烈なパワハラを上級生から受けていたからです」
見かねた家族は、辞めるよう諭したといいます。
遺族の訴え:「娘は『そんなことをしたら上級生に何を言われるか、何をされるかわからない、そんなことをしたらもう怖くて劇団には一生行けない』と涙を流しながら必死に訴えてきました。25歳の若さで、生きる道を閉ざされ、奪われてしまった娘の苦しみ、そして、あの日どんな思いで劇団を後にしたのかと考えると、胸が張り裂けそうです」
厚生労働省は、悩みを抱えている人には、1人で悩みなどを抱えずに「こころの健康相談統一ダイヤル」や「いのちの電話」などの相談窓口を利用するよう、呼び掛けています。
▼「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556
▼「#いのちSOS」0120-061-338
▼「よりそいホットライン」0120-279-338
▼「いのちの電話」0570-783-556
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