パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織『ハマス』とイスラエルの戦闘で、これまでに双方合わせて1600人以上が死亡しました。
ハマスの戦闘員は、7日に境界線を越え、陸と空からイスラエル側に侵入してきました。殺された人は、イスラエル側の発表では少なくとも900人とされています。
レスキュー隊:「33年間、この仕事をしてきて、すべてを見てきたと思っていましたが、あんな光景は初めてでした」
安全が確保されたとして、メディアに公開されたガザから2キロの集落では、至る所に遺体が残されたままでした。
CNN ウォード上席特派員:「この一帯では複数の犠牲者が出ていて、車両の残骸から被害の大きさが伺えます。ハマスは発砲しながら、多数の逃げる人を捕まえて、境界の反対側へ連行しました」
ガザ側に連れていかれた人たちの正確な人数は分かっていません。ただ、行方不明とされているのは、イスラエル人と外国人、合わせて200人を超えるとみられます。
イスラエルの農園には、タイからの出稼ぎ労働者が多くいますが、その人たちも連れ去られました。
タイ人労働者の母親:「息子に戻ってほしいだけ。お金はいりません。ただ息子に帰ってきてほしい」
今どういう状況なのか、一切の情報がないため、親族は生きた心地がしません。
姉が行方不明 アリエフさん:「生きているのか、けがをしてないか、水・食料・毛布など必要なものはそろっているのか。軍や政府は連絡もせず、60時間何もしないままです」
こうした人質たちについて、ハマスの報道官はこうコメントしました。
ハマス報道官:「平和に暮らすパレスチナ人が無警告の攻撃を受けたら、人質にしている民間人の中から1人ずつ処刑することを宣言する。こうせざるを得ないことの責任は、イスラエルの指導者にある。このことを世界に明らかにするためだ」
名指しされた指導者。極右政党と連立を組むネタニヤフ首相です。
イスラエル ネタニヤフ首相:「罪なきイスラエル人へのハマスの蛮行は、想像を絶する。野蛮ケダモノで『イスラム国』と同じだ。文明国が力を集結して『イスラム国』を倒したように、ハマス打倒のため、イスラエルを支援すべきだ」
イスラエルは、空爆の手を緩めていません。
ガザ住民:「空爆か!俺らは動じない。びくともしないぞ」「子どもたちがどんな悪いことをしたのか。心のある人はいないのか。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、人道はどこにあるのか」
パレスチナ側で亡くなったのは、これまでに788人。子どもは少なくとも143人です。イスラエルはガザの民間人に対し「避難しろ」と警告を出しています。しかし、狭いこの土地にそんな場所なんてありません。
アナドル通信 コウダリー記者:「避難場所は国連機関の学校しかありません。イスラエル軍からの勧告で逃げてきた家族もいれば、軍の爆撃で家を失って避難した家族もいます」
ガザ住民:「私の家族は10人が殺された。妹の子どもは頭に破片が当たり、連れてこられない。もう1人の妹の子どもは、ここに来た日に死んだ。彼を埋葬してから直接ここに。家が爆撃されたから」
イスラエルは今、ガザを完全包囲していて、医療物資や食料は一切入らないようにしています。インフラも全部止めています。
イスラエル兵:「今からガザ地区への水を止めます」
そして、境界線から数キロの場所に、続々と装甲車や戦車が集結を始めました。停戦合意することは考えづらく、地上侵攻は避けられそうにありません。
◆イスラエル“地上作戦”の可能性は
テレビ朝日・大平一郎元カイロ支局長に聞きます。
(Q.多くの国の人々を人質にとったハマスの目的は何だと思いますか)
大平元カイロ支局長:「ハマスは出身国によって、人質の扱いを変える可能性があります。出身国の世論に訴えかけるような発言をして、揺さぶってくる可能性もあります。ハマスはこれまで、イスラエル軍兵士などを誘拐し、交渉に使ってきました。例えば2011年、イスラエル軍兵士が、パレスチナの囚人1000人と交換で解放されたケースがあります。この交渉には5年くらいかかっています。これまでハマスが誘拐たのは数人規模でしたが、今回は百数十人で桁が違います。解決には年月もかかり、交渉も複雑化すると考えられます」
(Q.ハマスは何を得たいのでしょうか)
大平元カイロ支局長:「ハマスの最終目的は、パレスチナの地からイスラエルを追い出して、パレスチナ国家を建設することです。パレスチナ各地の他のグループに対しても、これを機にイスラエルに対して立ち上がるんだと呼び掛けています。世界各地で呼応する動きが出てきていて、イギリス・ロンドンではアラブ系の人々を中心に、反イスラエルデモが起きています。アメリカやフランスでも同様の動きが出ていて、ハマスのプロパガンダは一定の効果があると言えます」
イスラエルのネタニヤフ政権は報復攻撃を強めています。ガザ地区にあるハマスの拠点などを中心に空爆を続けていますが、ここに“地上作戦”を計画している可能性があります。その兆候として、イスラエル軍は約36万人の予備役を招集。ガザの住民に対し、エジプトに避難するよう勧告しています。さらには、2007年から続けられている、ガザの封鎖を強化して、イスラエルと接する検問所を通じて届けられていた、食料・水・燃料の供給を止め、電力も遮断しています。
(Q.インフラの停止に加え、イスラエル軍が地上作戦を行う可能性はありますか)
大平元カイロ支局長:「イスラエルは、軍備を整えると同時に、水や食料を止めて兵糧攻めをしていて、侵攻のタイミングをうかがっていると思います。地上戦は避けられないとみられ、双方に甚大な被害が出ることになります。ガザは世界有数の人口密度の高い場所です。非常に狭い路地もたくさんあります。ガザで市街戦が繰り広げられれば、一般市民の巻き添えは避けられません。さらに、ガザの地下に張り巡らされたトンネルを利用して、ハマスはゲリラ戦をしてくると言われていて、イスラエルの兵士にも多くの被害が出ると考えられます」
(Q.イスラエルは、双方に大きな被害が出ることを承知のうえで、地上攻撃に出るということですか)
大平元カイロ支局長:「イスラエルの政治的な状況が影響すると思われます。ネタニヤフ政権は史上最も右寄りと言われ、極右政党と連立を組み、これまでもパレスチナに対して抑圧的な政策を続けてきました。今回のハマスの攻撃は『歴史的敗北』と批判されていて、失敗を挽回するために、被害も辞さないような激しい報復攻撃をやる可能性があります」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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