“踏切に係員”の異様な光景 安全性揺らぐ「ことでん」社長辞任で変わるのか?【急上昇ニュース香川】 (23/09/06 18:30)

“踏切に係員”の異様な光景 安全性揺らぐ「ことでん」社長辞任で変わるのか?【急上昇ニュース香川】 (23/09/06 18:30)

今話題のニュースやネットで関心を集めたニュースを詳しく解説する「急上昇ニュース」。配信担当の堀さんです。

地域の暮らしを支えてきた足は、今後どうなるのでしょうか?今回は香川の私鉄、ことでんの問題を取り上げます。相次ぐトラブルで安全への信頼が揺らぎ、社長が辞任。しかし、このニュースに対し、「社長が変わって解決する問題なのか?」という声も上がっています。

列車が通過するたびに、旗を持った係員が安全を確認する異様な光景。

「こちらの踏切では8月19日の夜、手前の遮断機が降りずに、2本の列車が通過したという事です」

車の進入やけが人はいなかったものの、同様のトラブルは、2023年に入って3件目。ここ数年相次いでいました。

(利用者は…)
「事故があったら怖い。機材が古いんでしょうか?経営も厳しいと思うけど、安全面も改善してほしい」

トラブルの原因についてことでんは、8月21日の記者会見で、設備が老朽化しているにも関わらず、資金不足で対応が遅れたことを挙げました。また運転士が異常を見落としていた事も明らかに。

(ことでん 真鍋康正社長(当時))
「社長がどういった人物かで会社の安全に対する取り組みが変わってくる。私の社長の交代を含め、役員体制の刷新を検討」

真鍋社長は辞任を発表しました。このニュースがYahoo!のトップに掲載されると、「社長が辞任しなければ改善できない事なのか」「そもそも地方の鉄道はどこも厳しい」などのコメントが相次ぎました。

1911年の開業から112年を迎えることでん。総延長は60キロあり、県都・高松市と、香川県の西部・東部を結ぶ3つの路線があります。年間の輸送人員約1200万人はピーク時から半減したものの四国の私鉄でトップ。県民の足として定着しています。

(利用客は…)
「通学に使っている」
「綾川イオンに行くのに使う」
「車や自転車より速度が速くて便利」
「一つ一つの駅の間が短くてJRより交通手段として使いやすい」

一方で経営は紆余曲折してきました。拠点となる瓦町駅にオープンしたコトデンそごうが不振に終わり、2001年に民事再生法の適用を申請。創業一族が退陣し、自動車ディーラー、香川日産から真鍋前社長の父が社長に就任、再建を進めました。

新しい駅の開業など、利便性向上に取り組むも経営は厳しく、2023年度は安全設備の更新に国と県から約3億円の補助が予定されています。

「私鉄ローカル線が抱える慢性的な問題。解決の手立てはあるのでしょうか?」

(岡山大学 橋本成仁教授)
「安全に目的地に着くのは前提条件。もしかしたら踏切で事故になるかもしれない電車に乗るのか」

岡山大学の橋本教授は、ことでんの安全意識の低さを指摘する一方、地方の鉄道は今や自家用車に勝てないという現実もあるといいます。

(岡山大学 橋本成仁教授)
「色んな需要を一つにまとめて、同じ方向に同じタイミングで移動する人が沢山いて成立する交通手段なので、目的地をばらけさせられると弱い」

鉄道沿線に新しい商業施設が作られる事は少なく、自動車で行ける郊外の開発が進んでいます。同じ場所に大量に人を運ぶ鉄道の需要は、人口の少ない地方では、少なくなっています。それでも鉄道を維持するために必要なのは、行政の関与だといいます。

(岡山大学 橋本成仁教授)
「単純に経営だけで判断したらやめるのが正解。赤字しか出ないんだから。でも都市交通としてはそれでは困る。インフラ部分に公的資金を投入するかどうか」

公的資金を投入すれば経営は安定しますが、住民の理解が必要です。また、安全性などについて自治体がより口を出しやすくなるのは確かですが、客は増えるとは限りません。

鍵となるのは利便性の向上です。高松市は「MaaS(マース)」というシステムを積極的に提案しています。これは、鉄道やバス、タクシーを一つに結びつける取り組みで、スマホ一つあれば、出発地から目的地までのルート検索や、タクシーの予約、支払いまでできるようになります。もちろん時刻表も、乗り換えしやすいように調整します。ここまで便利になれば、自動車に対抗することができるかもしれません。

健康・暮らし動画カテゴリの最新記事