4年前の京都アニメーション放火殺人事件で、36人を殺害した罪などに問われている青葉真司被告(45)の裁判員裁判が5日、京都地裁で始まりした。
事件から4年がたち、ようやくはじまる裁判。多くの人が傍聴を希望することが予想されたため、裁判所に近い京都御苑の敷地内で整理券が配布されるという異例の対応となりました。
阿部頼我記者「午前10時です。青葉被告を乗せたとみられる車が京都地裁に入りました。窓はカーテンで仕切られていて、中の様子を見ることはできません」
そして午前10時半すぎに始まった裁判員裁判。青葉真司被告は車イスに乗せられたまま、証言台の前に誘導されます。
裁判長「名前を教えてください」
青葉被告「青葉真司です」
多くの遺族や関係者が見つめる中、聞き取るのがやっとの小さな声で答えます。その後、検察官が読み上げる起訴状をうなずきながら聞き……。
青葉被告「間違いありません」
起訴内容を認めました。
青葉被告「事件当時は、こうするしかないと思って犯行に及んだが、こんなにたくさんの人が亡くなるとは思っておらず、現在ではやりすぎたと思っています」
これに対し弁護側は、青葉被告は犯行時、責任能力が失われていたため無罪だと主張し、無罪にはならないとしても減軽されると主張。また、責任能力があったとしても、ビルの構造が原因で被害が広がったため、いずれにせよ減軽されると話しました。
一方、検察側は、「責任能力は完全に残っていた」と主張。青葉被告は、逮捕時、犯行の理由について「京アニに自分の小説を盗まれたため」と話していましたが、「妄想に支配された犯行ではなく、青葉被告の自分勝手な性格が現れたものに過ぎない。筋違いのうらみによる復讐」などと指摘しました。
京都アニメーション第1スタジオにガソリンを撒いて放火し、36人を殺害した罪などに問われている青葉被告。「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い実行した」と容疑を認めていました。
争点となるのは、犯行時の青葉被告に「刑事責任能力」があったかどうかです。
刑法は、責任能力が完全にない「心神喪失」や、ほとんどない「心神耗弱」の人たちについて刑を軽くしたり罰しないと規定しています。
では、なぜ責任能力がなければ罪に問えないのか。専門に研究する大学教授は次のように説明します。
京都大学法学研究科 安田拓人教授
「(刑法では)悪いことが悪いことだとわかって、その犯行を思いとどまれた場合にだけ非難を加えることができると考えられています。思いとどまることができない人に、非難を加えることができないじゃないかというのが話の骨格になる」
つまり、病気などに支配され、犯行を踏みとどまる能力が欠けている状態では、刑罰を科すべきではないということです。
一方で、病気であれば必ず罪を免れるわけではなく、病気全体の支配力の強さや行動に不自然な点がないかがポイントになると話します。
安田教授
「犯行前にどういう状況であったのかとか、犯行がどういう風になされているのか。あるいは犯行後に罪証隠滅のための行動があったってことになると、それは正常だったのではということが伺える」
青葉被告は、裁判までに二度の精神鑑定を受けていて、鑑定書の内容や鑑定した医師の証言が、裁判の結果に大きな影響を与えるとみられています。
5日の裁判では、犯行前後の青葉被告の行動も明らかになりました。
検察によりますと、青葉被告は事件の3日前から京都に滞在して現場を下見し、ガソリンなどを購入。犯行当日は、ガソリンが入ったバケツを持って、建物に侵入し従業員6人がいる方向に浴びせかけ、「死ね」と怒鳴りながらガスライターを近づけ、点火したということです。
7日には、青葉被告に対する被告人質問が行われ、裁判は来年1月25日の判決まで、最大で32回、実施される予定です。
◇◇◇
裁判が行われた京都地裁前から阿部頼我記者の報告です。
(Q.裁判には多くのご遺族も『被害者参加制度』を利用して参加されました)
「私の目測ではありますが40人ほどの方が法廷内にいました。こうした方々は、例えば被害の状況を直接、目にすることであったり、青葉被告と直接、対峙することへ不安を抱えている方もおられます。そのため、京都府警は『被害者公判支援本部』を設置し、希望者には最寄り駅などからの付き添いをしたり、裁判中に体調不良になった際に対応したりするなど、ケアを行っているということです。裁判の後半の日程で、青葉被告の罪の大きさを審理する際には、遺族が直接、青葉被告に質問したり、意見を陳述する場も設けられます。争点は刑事責任能力の有無ではありますが、ある遺族は、『なぜ家族が殺されなければならなかったのか。その理由を知りたいんだ』と話していました」
(Q.刑事責任能力が争点になるということですが、どのような点に注目すればよいですか)
「ポイントは、青葉被告の精神鑑定が、起訴前と起訴後の2回行われている点です。検察は、起訴前の鑑定で責任能力を問えると判断しましたが、弁護側は、鑑定が不十分で2度目の鑑定を求めたと考えられます。これまで数百人もの刑事精神鑑定を行ってきた医師に聞いたところ『裁判員裁判になるような大きな事件は、実力がある医師でも判断が食い違う場合もある』ということです。そのため、2人の医者の鑑定のどちらがより説得力があると裁判員らが判断するかが、一つ注目のポイントとなりそうです」
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