兵庫県神戸市にある病院で医師として働いていた26歳の男性が、うつ病を発症し、去年5月、自ら命を絶ちました。亡くなる直近1か月の残業は、月200時間を超えていたといいます。息子を失った母親が31日、厚生労働省に嘆願書を提出し、2度と同じことが起きないよう医師の長時間労働を改善してほしいと、涙を流しながら訴えました。
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31日、厚生労働省で、医師の長時間労働の改善などを求めたのは、医師だった息子を過労による自殺でなくした母親です。
「甲南医療センターに勤めておりました、高島晨伍の母です。嘆願書をお渡しに参りました」
「優しく親切な医師になりたい」……そう話していたという、高島晨伍(たかしま しんご)さん(26)。研修を受けながら診療にあたる「専攻医」として、神戸市の甲南医療センターの消化器内科に勤務していましたが、去年5月、自ら命を絶ちました。
両親に宛てた、手書きの遺書には――。
「知らぬ間に一段ずつ階段を昇っていたみたいです。おかあさん、おとうさんの事を考えて、こうならないようにしていたけれど限界です」
31日午後、過労自殺した医師の高島晨伍さんの母、淳子さんは、会見で涙を流しながら語りました。
「(息子は)『しんどい。誰も助けてくれない』と言い、右往左往しながらも、最後の日まで、定時まできちんと勤めあげ、その夕方に命を絶ちました」
「労災認定を受けても、あの心優しい息子は、私たちの元に帰ってきません……。甲南医療センターにとって、医師の代わりはいくらでもいるでしょうが……私たち家族にとっては、泣いて、笑って、大切に育てた、かけがえのない宝物なのです」
今年6月、労災が認められた高島さん。
遺族によると、患者の治療のほか、学会の準備などにも追われ、“100日間連続勤務”だったといいます。また、亡くなる直近1か月の「時間外労働」は“200時間を超えていた”といい、これは「過労死ライン」とされる月80時間の、2倍以上にあたります。
ところが8月、病院側は「時間外労働には、自己研さんの時間も含まれていた」などとして、長時間労働の指示を否定しました。
甲南医療センター 具英成 院長
「時間外労働については、自学自習の時間と、生理的な欲求に応じて寝て過ごすということも多々ございます。正確にはなかなか把握できない、ということがございます」
学会での研究発表の準備などに費やした時間は、労働時間に含まれるのか、それとも「自己研さん」だったとして含まれないのか、焦点になっているのです。
自身も医師の、高島さんの兄は会見で次のように訴えました。
高島さんの兄(医師)
「私の弟が、命と引き替えに、最後まで働きました……その時間は決して、自己研さんではありません。どうか、労働時間と認めてください」
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医師の労働組合「全国医師ユニオン」は、若い医師ほど、精神的に追い込まれている実態があると訴えます。代表の植山直人さんによりますと、「20代の医師の14%が、日常的に“死”や“自殺”について考える、という(調査)結果が出た」といいます。
来年4月からはルールが変わり、勤務医については年間の「時間外労働」の上限は960時間になりますが……救急医療や研修目的などで特別に認められた場合、上限は1860時間になるというのです。
全国医師ユニオン 植山直人 代表
「このこと自体が、非常におかしなことで、(1860時間という)労災の認定基準にひっかかるようなものが、医師だけに認められていると」
高島さんの母、淳子さんは――。
「もう息子は、優しい上級医になることも、患者さんを救い、社会に貢献することもできません。病院の労務管理の改善が履行され、医師の労働環境が改善されることを、切に希望します」
(2023年8月31日放送「news zero」より)
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