福島第一原発の処理水を巡り、日本政府が海洋放出を正式決定しました。中国は猛抗議を続けていますが、その背景には、国際社会で輪が広がらず焦っている可能性もあります。中国の今後の対応は読みにくく、日本政府は水産物の輸入規制強化に気をもんでいます。
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■国際会議で「日本批判」は中国のみ
有働由美子キャスター
「(処理水放出で)さまざまな反応が出ていますが、特に中国はどうしてここまで強く非難し続けるのでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「中国総局の富田記者に聞きました。中国には焦りがあるのではないか、ということです」
「ヒントになる映像があります。中国の国営テレビで、福島第一原発の処理水問題を特集しているものです。日本への批判の声を取材していますが、出てくるのはペルーの漁師たちで、ザンビアやレバノンにも行って話を聞いています」
有働キャスター
「日本から遠い国ばかりですね」
小野委員
「表立って日本を批判する国が中国以外にあまり見当たらない中、こういった国に行ってまで、『いろんな国が批判している』と演出しようとしているとみられます」
「7月から8月にかけて行われた、核問題について話し合う国際会議『NPT再検討会議準備委員会』では、日本の処理水放出について、10か国以上が意見表明しました。ただ、日本を批判したのは中国だけだったといいます」
有働キャスター
「中国は、一緒になって日本を批判する仲間がほとんどいないから焦っているということですね」
■処理水を放出後…中国の出方は?
小野委員
「富田記者によると、中国は『処理水が安全だとは思えない』という批判の急先鋒に名乗りを上げましたが、気付けばその輪が広がらず、国際社会の中で中国だけになりました。ただ上げた拳をもはや下ろせないため、猛抗議し続けるしかない状況にあるとみています」
有働キャスター
「そんな中で日本政府は海洋放出を決めましたが、この後はどうなっていくのでしょうか?」
小野委員
「日本政府が一番気にしているのは、日本の水産物の輸入規制強化です。官邸関係者は『中国は何をしてくるか読めない。規制をさらに厳しくするのか、品目を増やすのか、どう反応するのか注視している』と話します」
「また外務省幹部からは『中国とは、こうしたらすぐ改善するという“魔法のレシピ”はない。中国が言っているのは非科学的なことなのでどこかで苦しくなると思うが、こちらは粘り強くやるしかない』という声が聞かれました」
■落合さん「論理立てて説明しても…」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「最近、猫のフードを変えました。味見してみたのですが、周りの人にそれを話すと『あまり食べたくない』と言われました。つまり、理屈ではなく嫌なものというのはそれぞれにあるので、その感覚を変えるのは結構難しいと思います」
「どれだけ論理立てて説明してもダメな時は残念ながらダメで、完全な同意を得られるのは難しいので、やると決めたのであれば、主権国家としてすべき対応をすべきではないでしょうか」
有働キャスター
「これは、日本がいくら科学的に安全というデータをそろえても、中国政府が拳を振り下ろすタイミングは中国側の事情によりそうです」
「日本や東京電力ができる大切なことは、正直に、放出を始めてからも出した水や海のデータを正確にモニタリングして、公開し続けるしかありません」
(2023年8月22日放送「news zero」より)
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