9月から本格的にスタートする大学入試。今年度の傾向について、長年大学入試の動向を分析する「河合塾」教育研究開発本部 主任研究員の近藤治さんに話を聞きます。
受験生のチャンスが広がる
――大学入試が早期化・長期化しているとのことですが、詳しく教えてください。
従来の大学入試は年明けの1月から3月まで行われるのがメインでした。しかし最近は推薦や総合型選抜という年内入試の割合が非常に増えてきています。総合型選抜は、9月からスタートします。そうすると、9月から翌年3月までの約半年間が受験シーズンになります。
――画像は2009年度と2022年度の大学入試の選抜方法を比べたものです。年内入試は黄色と赤色の部分です。この割合が増えています。その結果、受験生にはどのような影響が出ますか。
受験生はさまざまなバリエーションの入試が増えていることになります。勉強が少し苦手な子も違う能力で選抜されるので、チャンスが広がると思います。
そして大学にもメリットがあります。何回も入学試験が行われるので、入学者を段階的かつ計画的に確保できるメリットもあります。一方でデメリットもあります。受験生が早く合格してしまうと、半年後の大学に入学する際には、勉強の習慣がなくなっているケースもあります。
大学に合格することがゴールではない
大学に合格し入学することがゴールではなく、そこがスタートラインだと思います。大学側も生徒を受け入れる高等教育機関としての使命があるので、生徒の勉強習慣をうまく実施するような仕掛けも必要かと思います。
――年内受験のメリットを生かしながら、学力を保つためにはどうしたらいいのでしょうか。
早く合格できるという受験生のメリット、そして入学者を早期に確保できるという大学のメリット、それぞれを生かすことになると思います。一方で、学習習慣を維持するために年内には仮合格という形で合格を出し、年明けに最終的なペーパーテストや高校時代に勉強したことの再確認をするという手法も考えられます。“高大接続”という言葉もありますが、真の意味での高大接続はまだまだ工夫する余地があると思います。
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