東京・上野の国立科学博物館が始めた、資金調達のためのクラウドファンディングが3億円7000万円を突破しました。
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国立科学博物館は動植物や鉱物、恐竜の化石など、あわせて500万点以上の標本や資料を保管する、国立で唯一の総合科学博物館です。今、夏休みでにぎわっています。この博物館が、資金不足に苦しんでクラウドファンディングに乗り出しました。
そこで8日の「知りたいッ!」ポイントは――
◇たった1日で3億円超
◇“寄付頼み”の問題点
以上の2点について詳しくお伝えします。
■電気代などの高騰が追い打ちに…コロナ禍で「入館料収入」減少
なぜ資金不足なのか、7日行われた博物館の会見をご覧ください。
国立科学博物館 篠田謙一館長
「ギリギリの運営体制だったところに、コロナ禍によって入館料収入が大きく落ち込みました。近年、光熱費や物資の高騰が状況に追い打ちをかけています。複数の打撃が重なり、自助努力や国からの補助だけでは到底追いつかず、そのしわ寄せは当然、当館の事業費・研究費等にも及んでいます」
コロナ禍で入館料収入が減少したほか、光熱費については電気代などが高騰して、今年度は3億8000万円にのぼる見通しで、2年前の2021年の約2倍だといいます。
こうしたことから、標本や資料の保管資金などが不足して、さまざまな活動の縮小や停止が余儀なくされているそうです。
茨城・つくば市にある博物館の収蔵庫では、一部の標本などが整理できないまま山積みになっていて、標本資料にとって理想とはいえない状態で保管されているといいます。これをなんとかしようと新たな収蔵庫を建設しようにも、資金が足りないそうです。
そこで7日に始めたのが、1億円を目標金額にしたクラウドファンディングです。7日午前8時に開始しましたが、わずか9時間半後の午後5時20分ごろには1億円に達成しました。
そして、8日午後4時時点をみてみますと、3億7000万円を達成しています。ホームページを確認しますと、一般向けの最高支援金額である「100万円コース」には5人の応募がありました。
■“隕石のアクセサリー”も…「返礼品」は博物館ならでは
なぜ、こんなに集まったのか。支援のコースは40以上あって、金額は5000円からです。
返礼品は博物館ならではのものになります。一番安いものでトートバッグ(5000円)、研究者が日々の研究で使用した「研究ノート」をデザインしたものだそうです。
さらに、哺乳類などの研究者が案内する「バックヤードツアー 哺乳類コース(5万円※終了)」。ほかにも、本物の隕石を研究者が1点ずつスライスしてアクセサリーにしたもの(5万円※終了)などさまざまです。
すでに在庫切れになっているものもありますが、支援募集は11月5日まで予定されています。
国立科学博物館は「公開直後から、まさかこんなに反響をいただけるとは想像だにしておらず、驚きつつも感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントしています。
■文化庁が「資金調達ハンドブック」作成…著名な寺もクラウドファンディングで資金集め
こうした資金繰りのためのクラウドファンディングは、実は著名なお寺でも続々と行われています。
奈良県にある世界遺産の「法隆寺」、京都にある「仁和寺」では、それぞれ敷地の整備や修理のためクラウドファンディングを募りました。仁和寺では約270万円以上、法隆寺は約1億5700万円と目標額を上回る支援金が集まったといいます。
こうした文化財保護のため、文化庁は「資金調達ハンドブック」を作成していて、クラウドファンディングの活用も呼びかけています。
SNSでは「国がなんとかすべきなんじゃないか」という声も上がっています。そこで次のポイントが「“寄付頼み”の問題点」です
専門家は「『善意で寄付が集まった』と美談で終わらせてはいけない」と警鐘を鳴らします。
国立科学博物館で研究官として勤務した経験もある、東京大学総合研究博物館の遠藤秀紀教授に話を聞きました。「そもそも、科学博物館の運営は現在、8割が国からの交付金で、残りは入館料などの自己収入でまかなっている」といいます。
博物館によると、国からの交付金は2001年に独立行政法人化されて以降、徐々に減らされているということです。一方で、光熱費高騰やコロナ禍に収入が激減したことにより、ギリギリの状況になったといいます。
遠藤教授は「博物館が運営費を自ら確保することを求められてきたが、限界がきている。国が国民からの寄付に頼っている部分もあり、博物館があすの電気代のために疲弊してきている。宝物を守るために国が予算を投じるべきだ」と話していました。
そして「国がお金を出すべきだ」といった声に対して、永岡文部科学相は会見で「文科省としては鋭意、予算措置を行っている」「博物館の努力や国民の支援を合わせて、国からの基盤的手当によって、安定的で優れた博物館運営がなされるように取り組んでいきたい」と述べました。
◇
国は、日本が誇るべき学問や文化を未来につないでいく責任があります。専門家たちが研究に没頭し人材教育を続けていけるように、政府が支援する柔軟な対応も必要なのではないでしょうか。
(2023年8月8日放送「news every.」より)
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