今井さんのコーナー、『今井の視点』です。
FNNが7月15日と16日に実施した世論調査から福島第一原発にたまる処理水の海への放出について考えます。
調査はご覧の方法で行いました。
岸田内閣を「支持する」は、6月より4・8ポイント減って41・3パーセント。
「支持しない」は54・4パーセントでした。
マイナンバーカードの相次ぐトラブルについて政府が進める総点検で、問題が「解決する」と思う人は18・4パーセント、「解決しない」と思う人は78・3パーセントでした。
また、福島第一原発にたまる処理水の海へ放出については、「賛成」が56・6パーセント、「反対」が37パーセントでした。
この処理水の海への放出計画をめぐっては、調査を行ったIAEA・国際原子力機関のグロッシ事務局長が、7月4日、岸田総理大臣にその報告書を手渡し、調査結果について「国際安全基準に合致している。人や環境への影響は無視できる」と説明しました。
また、福島県での会合で関係者に対し、「IAEAは福島の処理水の最後の一滴が
安全に放出し終わるまで、福島のこの地に皆さんと一緒に居続ける」と述べたグロッシ事務局長。
原発構内に、海洋放出が始められた場合に処理水は適切に薄められているか監視を行う現地事務所を開設させました。
福島第一原発の処理水の問題について今井さんはどう見られていますか?
【今井の視点】
【科学的根拠に基づく理性的判断】
処理水の海洋放出に関して、たとえば原子力政策を所管する経済産業省や、原発事故の当事者である東京電力が、「処理水を海洋放出しても、人間や環境にはほぼ影響を与えない」ということをいくら主張しても、眉唾で受け止める人が多いだろう。
しかし、今回「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表したのはIAEA(国際原子力機関)である。しかも、海洋放出に強く反発している中国も含む、11カ国の専門家らによる調査団を日本に派遣して現地調査を行った結果も踏まえての報告書である。
気持ちの面で「海洋放出して大丈夫だろうか」と不安に思うのもわからなくはないが、科学的根拠に基づく客観的な評価である以上、この報告書を眉唾で受け止めるべきではないし、また今年の夏にも予定されている処理水の海洋放出は妥当なものであると受け止めるべきである。
その点、FNNの世論調査で、処理水の海洋放出に賛成が 56.6%、反対が 37.0%と、過半数の回答者が賛成しているのは、感情よりも理性を優先してこの問題を見ている方が多数を占めることの現れであると言える。
ただ、いわゆる風評被害が起きる可能性は残念ながら高く、また、風評被害を防ぐのはかなり難しいと思う。
その理由は、SNSが広く普及していることにある。
科学的根拠に基づかない、あるいは、科学的根拠に基づいたものであることを装った言説がSNS上に表れ、それに共感する人の目に触れると、一気に拡散する。
そうすると、理性的に問題を見ていた人の目に触れる可能性も高まり、目にした結果、理性より感情が勝ってしまい、不安に苛まれる人も出てくる。
このように、SNSの普及により、科学的根拠に基づかない風評が一定の支持を得る状況ができやすくなっているのが現代社会である。
これを防ぐのは残念ながら極めて困難であるが、一人でも多くの人が、科学的根拠に基づき、理性的に処理水の海洋放出の問題に向き合うことを期待したい。