脱毛のための施術で、客にやけどを負わせたとしてエステ店の女性経営者らが書類送検されました。美しさを手に入れるはずの脱毛で何があったのかー。その実態を取材しました。
今、若い世代を中心に広がる脱毛。
10代「簡単に受けれるみたいな」
30代「(脱毛している人)多いです。友達の7割8割くらいは多分やっている」
30代「ひげ周りだけ(脱毛した)。美意識上げるため。そっちの方が女の子からの受けいいんで」
人気の裏で、事件は起きました。
古井林太郎記者
「強力な光線を当て客にやけどを負わせたとして、こちらの脱毛エステを経営する女が書類送検されました」
医師法違反と業務上過失傷害の疑いで書類送検されたのは、大阪市西区でエステ店を経営するいずれも24歳の女性経営者と女性アルバイトです。
警察によりますと、2人は医師免許がないにもかかわらず脱毛機器の強力な光をあてて、20代の女性客の背中の広い範囲にやけどを負わせた疑いです。被害を受けた客のやけどは毛根の組織まで達していて、全治2週間ほどのケガでした。
脱毛には大きく2つの種類があります。クリニックで行われる「医療脱毛」とエステで行われる「美容脱毛」です。
医療脱毛は、非常に高い出力のレーザーなどを当て、毛根の奥にある毛乳頭と呼ばれる発毛組織を破壊します。刺激が強く医療行為にあたるため、施術には医師免許が必要です。
一方、エステ店で行われる美容脱毛には医師免許は必要なく、毛の生える周期を遅らせる程度の弱いレーザーのみ使用が認められています。
大阪市中央区のクリニック。医師や、医師の指示を受けた看護師が強いレーザーを使って医療脱毛を行っています。記者が体験してみるとー。
古井林太郎記者
「針を刺されているような、注射を打たれているみたいな痛さでした」
看護師
「反応強く出る人は毛穴に沿って、赤くぽつぽつ出たりするんですよ。まだ全然大丈夫です。もっと強くてもいけます」
高出力のレーザーを扱うため、機械の設定や使い方を間違えると、やけどなどトラブルの原因になると医師は指摘します。
ヤナガワクリニック・やながわ厚子医師
「当て方とか認識の間違いとか、やはりエステの機器でも出力が高く出るものもありますので、患者様のことを把握して、どのような肌の色なのかという、そういうことをきちっと伺ってから治療をするということが大切ですね」
21日書類送検された女性経営者らの店では、光の強さを弱めるフィルターを着けずに強い光を当てていたことがやけどの原因とみられています。
脱毛を巡るトラブルは、エステやクリニックを問わず相次いでいます。国民生活センターによりますと、美容脱毛・医療脱毛によるやけどなどの健康被害の相談件数は去年1年間で243件で、5年前に比べて約4割増加しています。
過去に医療脱毛を受け、体に異変が起きたという女性は―。
医療脱毛で皮膚トラブルを経験した六條かげりさん(仮名)
「私の体感では、プラスチックの30センチくらいの定規でバチンとたたいたような、そんな感じの痛みですね。3日間くらいは、かゆいのが続いてつらかった」
自身の経験を発信しているSNSには、全国から脱毛によるトラブルややけどの被害を訴える相談が寄せられています。
六條さん
「派手なやけどしちゃったって方も、強くレーザーあててもらった方が効果出るので、本当は痛いの我慢して我慢してやって、やけどして皮がむけちゃってと」
健康被害にあわないために「安さ」にも注意が必要です。
三重県に住む30代の男性。去年8月、ひげの脱毛でトラブルに遭いました。男性が通ったのは、「無料」をうたうエステ店でした。
ひげの脱毛でトラブルになった30代男性
「オープンしたてのエステサロンだったんですけど、料金が無料ってあったので、それが理由で行きましたね」
しかし、施術を受けると激しい痛みが。男性はあごに全治1か月のやけどをしました。店側は「機器を強く押し付けすぎたかもしれない」と謝罪してきたといいます。
ひげの脱毛でトラブルになった30代男性
「値段が無料とかそういうのに飛びつかないっていうか、お金だけじゃないっていうのを知りましたね」
脱毛に詳しい医師は、健康被害に遭わないために利用者は事前の情報収集が重要だと指摘します。
ヤナガワクリニック・やながわ厚子医師
「エステ脱毛とクリニックでの脱毛の違いを理解して、機器を何使っているかとか、ホームページにドクターの顔があるかとか、きちんと説明があるとか、きちっと効果を聞くとか、副作用を聞くとか、そういった(情報をもとにした)選択が重要になってくると思います」
きれいになるはずの脱毛で客にやけどを負わせたとして書類送検されたエステ店の経営者ら2人。この店では3年ほど前から脱毛を始め、これまでに少なくとも110人が脱毛の施術を受けていますが、今のところ他の被害は確認されていないということです。
警察の調べに対して、経営者は「医師の資格が必要だとは知らなかった」と話す一方、「光を弱めるフィルターをつけるのを忘れていた」とケガをさせた疑いは認めているということです。