野球を“楽しみ強くなる”全国制覇チームの意外な指導 WBC世界一に見る少年野球の今(2023年3月24日)

野球を“楽しみ強くなる”全国制覇チームの意外な指導 WBC世界一に見る少年野球の今(2023年3月24日)

WBC日本代表『侍ジャパン』のダルビッシュ選手はたびたび「結果よりも、野球を楽しむことが大事」と口にしていました。

もともと、みんな野球が好きで始めているのに、知らず知らずのうちに、その原点を置き去りにして、野球を窮屈に考えているのではないかというメッセージにも聞こえます。

子どもの野球人口が減っている背景には、そんな理由もあるのではないか。そんな疑問を胸に、大越健介キャスターが少年野球の現場を取材しました。

富山市を中心に活動する大久保ファイターズ。グラウンドには元気な子どもたちの声が響きますが…10年ほど前には20人以上いた選手も、この日の練習参加者はわずか10人程度。3人で練習する日さえもあります。

彼らの練習に欠かせないのが“親のサポート”です。子どもたちの送迎にはもちろんのこと、練習場の準備や、試合の時にはスコアブックをつけたり、お茶を用意するのも親の役割です。

保護者・十二町さん:「子どもたちが少ない分、保護者も少ないので、当番が回ってくる回数も多くて、大変ではあります」

この「親のサポートの大変さ」を少年野球の人口が減った要因の一つとして、メジャーリーガーの筒香選手も挙げています。

それでも、子どもの成長を間近で見られる楽しみも。

十二町さん:「試合を観ていて楽しいし、息子の頑張っている姿を見られて、すごく充実した日々を送れている」

練習開始から約30分。コーチが合流します。ときにはきびしい言葉もかけます。

コーチ・熊膳誠さん:「(Q.厳しい言葉も飛んでいましたが)ただ何となく練習するのは良くない。プレーする以上、全力でやっていくことを心掛けて指導しています。言葉遣い、あいさつ、礼儀。これが一番大事だと思います」

全国でみると、小学生の軟式野球人口は、1992年と比較すると約40%減に。「いつでも野球ができる」という時代が、もう過去のことになっている地域も。かつて“野球王国”とも言われた高知県では、すでに12の自治体で少年野球のチームがなくなっています。

野球をする子どもたちが全体的に減るなかで、増えているところもあります。滋賀県多賀町を中心に活動する『多賀少年野球クラブ』には、3歳から小学6年生まで100人の子どもが所属。このクラブでは、時代の変化に合わせた指導を行っています。

大越キャスター:「監督が特に号令かけるでもなく、練習がゆるっと始まりました。わりとゆるっと始まったんですけど、きれいなフォームでみんな投げてますよね」

ゆるく練習しているように見えますが、実は全国大会で2度も優勝している強豪チームです。

大越キャスター「別に1・2・3とかそろって走ったり、柔軟体操したりとかしないで、思い思いに体を温めて、キャッチボールをしている。最初から楽しそう。投げるのが楽しくてしょうがない感じ」

このチーム特徴は、練習を学年ごとに行い、時間を短くすることで、ボールやバットに触れる機会を増やしていることです。練習を見ていると、あることに気付きました。

辻正人監督:「(Q.いちいちプレーに注文をつけない?)いいプレーしてもミスしても、すべてがトレーニング。動いていること自体がトレーニング」

子どもたちの自主性を重んじています。さらに、多賀少年野球団の練習を見ていると少し変わったこともしていました。

辻正人監督:「毎年シーズン初めに“全国制覇した後の練習”をしている。(Q.全国制覇した後の練習?)喜ぶ練習をしてるんです。(Q.喜ぶ練習って大事なんですか?)大事なんです。喜ぶということが、練習でできていると、そこに対して子どもたちの体が動いていく。だから、喜ぶ練習って大事」

大越キャスター:「喜ぶ練習、全国制覇した経験を再現している。喜ぶ練習だけど、ベースランニングの練習になってる」

辻監督がこの“喜ぶ練習”を始めたのは、今から5年前。実はその年に全国大会で初優勝しています。

野球少年:「(Q.きついことと楽しいこと、どっちが多い?)楽しい。(Q.他のスポーツと比べて、野球の楽しいところは?)逆転サヨナラ勝ち」

監督が常に意識することは、子どもたちを褒めることです。

辻正人監督:「野球って本来、楽しいものだという当たり前のことを、僕ら大人は耐えたり我慢したりする。厳しいのも大事だけど、楽しもうよっていう原点をすごく大事にしている。それが相手チームにも反映されて、楽しいスポーツ空間ができてるなと思います。成長の過程だもん、子どもだから。みんな褒めて楽しんで、そして育って、そういう野球をこれから見たい」

【野球を楽しんでチームを強く】

(Q.大越さんが野球少年の時“喜ぶ練習”をしたことがありますか)

大越キャスター:「想像の外ですよね。我慢して耐えて、その先に何かがあるんじゃないかと思うより、喜ぶことを知って、練習した方が“喜ぶ逆算”のような。辻監督は『かつては野球やスポーツに対して、しつけの役割も期待されていましたが、保護者は今、そこまで期待してないですよ。だから、自分たちは楽しむ・育成することに特化した野球チームにしたんです』と話していて、納得でした」

(Q.保護者の負担も大きいんですね)

大越キャスター:「ただ、多賀少年野球クラブでは、2カ月に1回くらいの割合で、安全を守るなどの最低限の当番をお願いするけども、来てくれる親御さんはそれよりずっと多いということです。辻監督は『むしろ多少の負担なんか気にならないくらいの意味を見出してくれているのではないか』と話していて、実際にお母さん方に話を聞いたら『その通りですよ』と答えてくれました。楽しんで、厳しいことがあっても、乗り越えていくことは、今回の侍ジャパンの姿に重なります。WBCで世界一強い選手たちが、世界一楽しそうにプレーをしていた。それは子どもたちに伝わったと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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