今回の統一地方選挙で、無投票で当選した議員数の割合が、3割を超えることが分かりました。いわゆる“なり手不足”が深刻化するなか、「くじ引き」をヒントに、民主主義の在り方を考えます。
全国各地で行われた統一地方選挙。激しい戦いの一方で、人口360人余り、吉野川の上流に位置する風光明媚な高知県大川村では、地元でラーメン店や農業を営む、和田将之さん(32)が静かな選挙戦をスタートしていました。
大川村議会の議員定数は6ですが、なかなか立候補者が集まらず、幾度となく無投票に。議会を廃止して、有権者全員による総会の導入まで検討されたこともあります。
大川村民:「希望した者が、そのまま直通で議員になるのは、いまいち残念」
大川村民:「競争がないと、どうしてもいかんのですよ」
そんな現状を変えようと動いたのが、和田さん。4年前に初出馬し、当選。2期目を目指しています。
和田将之さん:「候補者がいれば、その人を支援する。もしいないのであれば、僕が立候補しようと、最終的には考えましたね」
選挙前の喧騒も聞こえぬまま、あっという間に夕暮れ。午後5時までに7人以上立候補がなければ、無投票が決まります。
和田将之さん:「もしもし、和田ですが。はい分かりました。定数ぴったりということで」
結局、選挙は行われませんでした。和田さんのほか、ポスターを貼らなかった人も含め、全員当選しました。大川村のように、無投票で当選した町村議会議員は年々増えていて「地方政治の危機」が叫ばれています。
和田将之さん:「今後、この政治体制や民主主義、今の生活を維持していくのは難しい」
一方、海外では、従来の選挙とは違う、別の政治の形が注目されています。
2019年、フランス政府が行った会議で、国の脱炭素政策を議論しているのは、選挙で選ばれた議員ではなく、年齢・居住地・学歴などをもとに、くじで無作為に選ばれた一般の人でした。
建築家で、全く政治経験のないウィリアム・オーカンさんも、その一人…。
ウィリアムさん:「土曜日の朝に電話がかかってきて『おめでとうございます!抽選で気候市民会議に選ばれました』と言われ、私は何のことか分かりませんでした」
実は当時、政府が主導した気候変動対策に不満が爆発し、デモが激化しました。「自分達に政策を決めさせろ」という要望に対し、マクロン大統領は「くじ引きによる会議」に政策を委ねることにしました。
9カ月の議論の末、短距離区間の航空路線の一部廃止など149の施策を決議。他にも、パリの風物詩だった暖房付きテラスは、二酸化炭素排出の原因だとして廃止されました。
パリ市内にあるカフェの店主:「ここには以前、12台の暖房装置がついていました。今では、お客様が寒いと感じた時は、毛布を貸し出しています」
くじ引きによる民主主義。参加したウィリアムさんは、大きな可能性を感じたといいます。
ウィリアムさん:「政治とは、議論に参加したいと思うこと。その点、市民会議は、政治の参加に招く1つの方法。くじで選ばれた国民だけの議会があっても、おもしろいと思います」
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