世界的な音楽家の坂本龍一さんが亡くなりました。音楽や映画以外の分野でも幅広く活動していた坂本さんは岐阜県で森林の保全にも取り組んでいました。坂本さんの思いを知る人からは悼む声が聞かれました。
『芸術は長く人生は短し』音楽に生涯を捧げた坂本龍一さんが、好んだ言葉でした。
所属事務所によりますと坂本さんは3月28日、71歳で帰らぬ人となりました。
1952年、東京生まれの坂本さん。1978年に結成した「イエロー・マジック・オーケストラ」、YMOで当時最新のシンセサイザーを使った「テクノポップ」が大ヒット。日本に新たな音楽を浸透させました。
1983年には、映画『戦場のメリークリスマス』に出演し、音楽も担当。作曲した映画のメインテーマ「メリークリスマスミスターローレンス」は代表曲となりました。
1987年、中国最後の皇帝を描いた映画「ラストエンペラー」で日本人として初めてアカデミー作品賞を受賞しました。
晩年、2021年に直腸がんが見つかると、両肺にも転移。1年で6回の手術を受けるなど壮絶な闘病生活の中、音楽活動を続けていました。
また、坂本さんは、音楽や映画だけに留まらず、環境問題に取り組む活動家でもありました。
2009年、全国ツアーを前に名古屋を訪れた際にテレビ番組「UP!」にも出演。環境への思いを語っていました。
「(老化から)初めて環境に興味を持った」
Qエコにこだわる理由は
「老化ですね。誰でも40歳すぎになると老化を意識するようになってくる。そうしたら初めて自分の身体のことを考えて、自分が飲むもの、食べるもの、着ているもの、住んでいる所、あるいは一緒に住んでいる人、とか周りの事を考えるようになる。日々取り入れている空気も入ってくるし水を飲まない日もないわけですからするとどうしても気になりますよね。それから初めて環境に興味を持った」(坂本龍一さん)
Qエコ活動の音楽への影響は
「エコな音楽とはどういうものか。ずっと考えているがいまだに分からない。仮にヘヴィメタルバンドをやっているとする。ある日、その環境に気が付いて『カーボン・オフセットしなきゃ』となってエコンシャス(環境を意識した考え)になったから、地球に優しい感じの音楽に変えるかと言われたら多分変えないと思う。別にヘヴィメタルでいいと思う。エコと音楽は直接結びついてなくてもいいと思う」(坂本龍一さん)
岐阜の木材を世界に発信
森林活動でつながりもある岐阜県の古田知事からも悼む声が。
「心から謹んでお悔やみ申し上げたい。非常に思慮深い方で広く森林に対する関心の深さをうかがわれた」(岐阜県 古田肇 知事)
2012年。坂本さんが代表理事を務めていた森林の保全に取り組む団体「moretrees(モア・トゥリーズ)」と岐阜県は森づくりやエコツーリズムなどで連携する協定を結びました。
古田知事と中津川市の森を視察した坂本さんは岐阜の豊かな自然を活用することの重要さを語っていました。
この時に東白川村の森を訪れた坂本さん。当時の事を、森林組合の大崎さんは鮮明に覚えています。
「山や木の話をすると、ぐっと熱くはいってきたのが印象的だった」(岐阜・東白川村森林組合 業務課長 大崎正秀さん)
坂本さんと話し、大崎さんは「森を守りたい」という強い思いを感じたと言います。
「(坂本さんが)『人は森がないと生きていけない』と語っていた。本当に心の中でも大きく共感した」(大崎正秀さん)
訪れた際、「森林に携わる地元の人たちと話をしたい」と、岐阜の郷土料理「けいちゃん」を食べながら交流を深めたそうです。
「森や木の良いところやどうしたら山が生き生きとしていけるか話していた。(鶏ちゃんを)また食べに来たい何度も来たい言っておられた」(大崎正秀さん)
また、坂本さんはこれまで岐阜県の木材を世界に向けて発信してきたといいます。
「この辺は木がきれいということで『東濃ひのき』として有名。パリやニューヨークで東白川の木を使った製品を紹介してくださった。世界の人に東濃ひのきのきれいさを知ってもらう取り組みを続けてくださった」(大崎正秀さん)
坂本さんの自然に対する思いを胸に、東白川村では今後も森の保全を続けていきます。
「森を大切にする取り組みはこれからも続いていくもの。影響を受けた人たちもたくさんいる。亡くなって本当に寂しいというのはあるが、たくさんのものをいただいて、いまは感謝の気持ちでいっぱい」(大崎正秀さん)
(4月3日15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)