生活から「新型コロナ」の文字が、薄れてきているなかで迎えた新年度。多くの企業が入社式など新たなスタートを切っています。
スポーツ関連企業への就職支援を行う『スポーツフィールド』は、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなった、国立競技場で入社式を行いました。民間企業が、ここで行うのは初めてです。広大な会場に、新入社員29人が並びます。
安藤萌々アナウンサー:「辞令交付の際には、大きなスクリーンに1人ひとりのプロフィールが出ています。本当に選手の紹介のようです」
“思い出に残る入社式”として、これまでもスポーツ施設で行ってきましたが、新型コロナにより中断。4年ぶりの実施となりました。
新入社員:「(Q.ここで入社式をやると知った時は)最初調べてみて、こんなデカいみたいな。絶対、その横のグラウンドだろって思ったんですけど、入ってみて、やっぱりすごいなって夢をみているような気持ち。一生忘れられない、すごく大事な日になると思います」
社員のほとんどは、何かしらのスポーツ経験者。入社式の後は、全社員での運動会が行われました。
先輩社員(元レスリング日本代表):「顔と顔を合わせて、笑顔で、こういう所で仲良くできるのは、会社一丸となってというのが、すごく楽しいです」
先輩社員(少林寺拳法歴12年):「去年は違って、かちっとした感じだった。入社式もホテルでやったので、こうやって(今年)できるのはうれしい」
『スポーツフィールド』亀田高一郎執行役員:「横のつながりも、縦のつながりも、拠点のつながりもつくれて、モチベーションを上げていくところが狙いとしてあります。(Q.これだけ大がかりだと費用もかかるのでは)中途社員とか、社員が離職して、採用費かかると考えると、イベントを実施することで離職が防げるという意味では(費用を)払っても問題ないかなと考えています」
趣向を凝らした会社は他にも…。アミューズメントや観光事業などを展開する『フジコー』の入社式では、新入社員が、それぞれ抱負を発表した後、ジップスライドを滑り落ちました。
新入社員:「できることから少しずつ、愚直な社会人になります」
『オイシックス・ラ・大地』の入社式は、畑で行われました。
『オイシックス・ラ・大地』小崎宏行取締役:「みなさん、コロナ禍で本当に大変な学生生活だったと思います。そんなみなさんの始まりの日だからこそ、きょうは農家さんの苦労とか思いとか、畑や野菜に実際に触れる体感をぜひしていただきたい」
軍手をはめ、土を掘るように言われた新入社員。中から出てきたのは、入社証書でした。
新入社員:「すごい。うれしい」
就職情報会社の調べによりますと、今年度、対面で入社式を行うとした企業は、8割以上に上りました。
4年ぶりとなる、グループ全体の入社式を行った『日本航空』。昨年度は300人だった入社式は、今年度はグループ37社、約2000人という規模になりました。
『日本航空』赤坂祐二社長:「この3年間くらい、航空業界あるいはJALグループに入りたくても入れなかった、そういった方々もたくさんいらっしゃるので。どんどん2000人でも3000人でも毎年来ていただけるといいなと思います」
客室乗務員の採用は3年ぶり。そのため、転職してきた人もいました。
日本航空に転職した芹澤せらんさん(24):「この採用がなかった3年間の様々な気持ちが思い出されて、スタート地点に立つことができて感謝の気持ちです」
新社長でスタートを切る『トヨタ自動車』。本社で行った入社式には、約1450人が参加しました。
『トヨタ自動車』佐藤恒治新社長:「たくさんの車に触れて、乗って、リアルの車がもつ価値を体感して、自分のセンサーをぜひ磨いてください。それが車づくりを楽しむ第一歩だと思います」
社屋の外に勢ぞろいしたのは、会長や執行役員の愛車。その前で、新入社員と写真を撮る佐藤新社長。積極的に、コミュニケーションを図っていました。
売り手市場のいま、会社側も対応を迫られています。
『アフラック生命保険』は、まるで披露宴の招待客のように新入社員をおもてなししました。
『アフラック』古出眞敏社長:「人材があってこそ、戦略が立てられる。まず人材が一番大事」
これまで、希望した部署で働けないことを理由に、内定を辞退する学生もいました。そこで新たに、希望した配属先を確約する制度を導入します。
配属先“確約”樋口雄大さん(25):「(Q.部署も決まってる)部署もはい、決まっています。(Q.何という部署)『保険金部』というところ。お医者さんの診断をもとに、保険内容を照らし合わせて、どのくらいの支払いができるか計算するところ。いままで勉強してきた医学の知識が直接生きるところ」
配属先“確約”藤原史桜音さん(24):「(Q.希望しない部署にいくのは嫌だった)そうですね。私はすごくITがやりたくて就活していたので『ITできる部署に行きたい』とお話しして、確約していただいた」
学生時代に学んだ専門知識を生かしたいと考える若者が増えているといいます。ただ、配属先が確約されている新入社員は全体の2割ほど。あえて希望を出さない人もいます。
配属先“未定”津崎竜世さん(23):「色んな部署に行き、色んな体験をしたうえで、どのようなキャリアを歩みたいか考えられたら」
ひとつ言えるのは、配属先が未定だろうと、確約されていようと、若者の意識が大きく変わったことです。
配属先“確約”藤原史桜音さん(24):「(Q.仕事と私生活のバランスは)ちょうどいい塩梅で半々くらい。半々だとちょっと多すぎるか、プライベートが。残業はしたくないので、いっぱい働きたい感じではないかも」
配属先“未定”荒井萌々香さん(22):「自分たちの世代になると、全然違う考え方になっていると感じる。自分のライフプランとしては、結婚したり、子どもが欲しいと考えたりするので、実現できればいいなと」
会社側から魅力を発信していかなければ、ますます人材確保が難しくなっていきます。
『アフラック』人財戦略部・浜崎千秋部長:「(Q.仕事とプライベートのバランスを5:5にしたいと。自分が新入社員の時に聞かれて、5:5にしたいと答えられなかった)私も答えられなかった。バランスを取りたいという人は、若い方に増えてきている。子育て、介護、人生の中ではいろんな波がある。どうやってバランスをとっていくのかは、その時々で変わるもの。それに応えられる柔軟な人事制度・運用をしていくことが、最大限に力を発揮していただくためには必要」
【売り手市場で…今時新人事情】
新入社員の意識の変化はデータに表れています。就職情報サイト『マイナビ』の調査によりますと、勤務地も、職種つまり配属先も、自分で選びたいと考える学生は、54.9%に上ります。
学生が配属先に対して強いこだわりを持つ理由について、新卒採用の調査・分析を『マイナビキャリアリサーチラボ』長谷川洋介研究員は、2つの理由を挙げています。
1つ目は『インターンシップの浸透』。就職活動の準備期間中に、自分がどんな仕事に向いているか自己分析する学生が多いこと。
2つ目は『キャリア自律意識の高まり』です。終身雇用・年功序列といった日本型雇用が見直されるなか、今の学生はスキルを磨くため「就職=働き手として能力をつける場」という考えが広がっています。
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