入居者の高齢化により自治会運営の滞りが課題となっている都営住宅で、若者たちに格安家賃で入居してもらい、暮らしを手助けしてもらう取り組みが進められています。
墨田区の東京スカイツリー近くにある文花団地は、50年以上前に建てられた都営住宅です。日曜日の朝になると、若者たちが走り回り住民たちのごみ収集を手伝う姿が見られます。彼らは、2022年から文花団地に住んでいる墨田区内の大学に通う学生たちです。彼らが都営住宅を選んだ理由は、周囲の家賃相場と比べ3分の1ほどという「コストパフォーマンス」の良さでした。しかし、家賃の安さだけでなく、ここでの暮らしにはキャンパスにはない魅力もあるようです。入居している学生は「高齢者の価値観に寄せるというのが、自治会の会議や交流会で感じるところがある」と話します。
大学生と高齢者を結び付たのが、東京都と都営住宅の近くにある大学が締結する協定です。都は2022年から、学生たちが格安で都営住宅に入居できる条件として、自治会に参加して団地内の掃除やごみの回収などをする取り組みを進めています。背景には、都営住宅の深刻な高齢化がありました。都によると都営住宅の名義人のうち約7割が65歳以上だということです。文花団地でも高齢化による自治会運営の停滞が大きな課題となり、学生たちの力に頼ることを決めました。
毎年恒例という団地内のさくらまつりの準備も、学生たちと自治会のお年寄りたちが一緒に進めます。お年寄りが昔話を交えながら学生たちにちょうちんの付け方を教え、協力して会場の装飾をしていきます。これまでは自治会のお年寄りたちでやっていたという作業も、若い人材が加わったことで活気づいたようです。
都営住宅で進む深刻な高齢化ですが、高齢者と若者がつながることで、コミュニティーが再生するきっかけが生まれています。