韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は17日午後5時過ぎ、日韓首脳会談などの日程を終えて、帰国しました。出発直前、「政治家の道理として、両国関係の発展を妨げる障害物を、両国が協力して取り払っていかなければならない」と語っていました。
尹大統領は17日、日韓双方の経済界の人たちとの会合に参加しました。ここで強調したのは、日韓両国の未来についてです。
韓国・尹錫悦大統領:「未来世代の交流が増え、相互理解と協力が拡大されれば、両国関係は、より強固なものになると確信しています。この会合が、より良い韓日関係に跳躍できる有意義な土台となり、韓日関係の新しいページになることを望んでいます。みんなで手をつないで、新しい未来に共に進みましょう」
続いて行われた慶応大学の講演でも、こう述べました。
韓国・尹錫悦大統領:「金大中元大統領は、25年前の1998年、ここ東京で『50年足らずの不幸な歴史のために、1500年にわたる交流と協力の歴史を無意味にしてはならない』と力説しました。25年前、韓日両国の政治家が勇気を出し、新しい時代をひらいた理由は、子孫に気まずい歴史を残してはならないとの信念からでした。この場にいらっしゃる皆さんも、私も良い友だちを作り、より良い未来を作り出すために、もう少し勇気を出しましょう」
ただ、“未来志向”は、歴代のトップたちが口にしても、なかなかうまくいった試しがありません。両国とも国内に、さまざまな政治事情を抱え、一筋縄ではいかないのも事実です。
尹大統領と会談を行った自民党の重鎮たちは、このような感想を持ったそうです。
日韓議員連盟・額賀福志郎会長:「歴史問題について国内政治に利用することはないと強い信念を持って、これに取り組むことが一貫して今日までぶれることなく続いてきた結果、尹大統領の正常化へのすごい情熱による決断が、こういう首脳会談をもたらした」
日韓親善協会中央会・河村建夫会長:「親日的というか、そういう感情がこもっており、歴代大統領とずいぶんお会いしたけど、これほど親身に話ができたのは初めて」
16日夜、岸田総理と尹大統領は、はしご酒をしながら、2人の距離をつめました。ビールとソジュと芋焼酎を飲んだという二次会の帰り、2人ともノーネクタイでした。
岸田総理:「大変、楽しいお酒を飲ませていただきました。会話の中身については、個人的なことも含めて、お互いの信頼関係を深める意味で、大変、有意義な会話をさせていただいた。こうしたトップ同士の信頼関係をもとに、両国関係を前に進められることができればと期待しています」
◆ソウル支局の河村聡記者に聞きます。
(Q.今回の訪日を韓国国内は、どう受け止めていますか)
17日の韓国紙、どれを見ても、1面は尹大統領と岸田総理のツーショット。内容を見ると、「関係改善の基盤が整ったことは歓迎できる」「いつまでも過去に縛られてはいけない」などと肯定的な論調が目立ちます。一方で、元徴用工の問題をめぐって、解決策を示した尹大統領に対して、「日本側からおわびへの直接の言及」や「具体的な譲歩が全くなかった」といった批判の声も上がっています。野党議員は17日、早くも糾弾会見を開き、「日本は水の1滴も満たしてくれなかった」と、尹大統領の外交姿勢への批判を強めています。街の人に聞いても「期待したのに成果がない」「何をしに日本まで行ったんだ」など、厳しい意見も聞かれました。
(Q.厳しい意見があるなかで、日韓関係改善はスムーズにいくのでしょうか。韓国側からはどういうふうに見えますか)
元徴用工の問題をめぐっては、確かに反発は根強いのですが、原告の一部からも、政府の案に賛成する声や「もうこのあたりで終わりにしよう」という声も出てきています。抗議集会などを取材していても、一般の人を巻き込んで、大きなうねりとなるような勢いを感じることはありません。元徴用工の問題が大きな壁となることは間違いありませんが、関係改善を決定的に阻むようなものになる可能性は低いと思います。
(Q.尹大統領の支持率は30%台と高くありません。この状態で、日韓関係の改善に向け、国民をまとめられるのでしょうか)
低空飛行が続く尹政権ですが、ほとんど日本の希望を飲んだ形の今回の“解決策”が出てきたあとの支持率を見ると、数ポイント下がる程度で、大きな下落というのはないです。特に、若い世代は、そもそも歴史問題への関心が低かったり、旅行や文化を通じて、対日感情が良好化するなか、「反日行動をすれば支持率が上がる。逆に親日だと下がる」といった日韓関係が政治のトピックとして大きな影響を持つ時代が、徐々に変わってきているということが背景にあると思います。
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