28日、厚生労働省は去年1年間の出生数が前の年より4万人あまり減り、明治32年の統計開始以来、過去最少になったと発表しました。出生数が80万人を割るのは初めてのことです。
●“人口減少”全ての人に影響
●出産増えないワケは
●リミットは「あと2年」
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
■初の出生数80万人割れ 経済縮小・“介護難民”急増…懸念される未来
厚労省が28日公表した去年の出生数の速報値は、前の年より4万3169人減少し、79万9728人と過去最少になりました。一方で、亡くなった人の数は12万9744人増え、158万2033人と過去最多になりました。
少子化と高齢化を背景に、日本の人口減少が止まりません。出生数が下がるというのは、子どもを生む、生まないの個人の選択にとどまらず、実は全ての人にとっても深刻な影響があります。具体的には、次のような問題が予想されています。
●労働力減少で経済縮小
若い労働力が減り日本経済が縮小すると、国の税収も下がり、集まる年金保険料も減ります。そうなると、将来に給付される年金額など社会保障の維持が難しくなってしまいます。
●“介護難民”が急増
人手不足により医療や介護職員が減少し、高齢者が介護施設に入れず、“介護難民”が増加することも予想されています。
こうした問題がもう近い将来に迫っています。
■「昔と違って教育費とかに…」 若い世代の声
なぜ、出生数が減っているのでしょうか。将来、子どもが欲しいかどうか、若い世代に聞いてみました。
19歳
「結婚したくて、子どもも欲しいです」
「自分も、昔から(子どもが)欲しいと思っています」
18歳
「自分も思ってます」
19歳
「昔と違って、教育費とかにかかるお金も増えてきているので、そこはちょっと不安ですね」
23歳
「(子どもは)欲しいとは思うけど、自分の時間も大事にしたいし、自分にもまだお金使いたいな」
22歳
「子ども産んだとして、いじめにあったりとか…そういうこと考えると大丈夫かなとか、変な不安があります」
民間の調査会社ビッグローブが今月、全国の18歳から25歳の男女500人に実施したインターネット調査では、「将来子どもが欲しい」と考えている人は「結婚にはこだわらない」という人も含めて54.3%。「将来、子どもは欲しくない」と回答した人はあわせて45.7%となりました。若い世代では、将来、子どもが欲しい人と欲しくない人はほぼ半々という結果になりました。
また、子どもが欲しくないと答えた人にその理由をたずねると、お金の問題だけでなく「育てる自信がないから」や「自分の時間がなくなるから」との回答もありました。
■対策のタイムリミットは“あと2年” 3つの「即時策」
どうすればいいのか、子育て支援策の効果の分析などをしてきた京都大学大学院の柴田悠准教授に聞きました。
柴田准教授は先週、政府の子ども政策強化に関する会議に出席し、「2025年がタイムリミットじゃないか。もう数年後ですけど」と発言しました。なぜ、対策を打つタイムリミットがあと2年後なのでしょうか。
現在は20代の人口が少しずつ減っていますが、2025年を超えると倍速で減っていくとの予測はほぼ確実です。そのため、そこまでに20代前後の若者が結婚したい、出産したいと思えるような策を打つ必要があるということです。
そこで、柴田准教授は、2025年までに今すぐにやるべき3つの対策を提言しました。
(1)児童手当
現在、最大でも1人1万5000円となっている児童手当を、第2子では最大3万円に増額するなどと仮定すると必要な予算は2.5兆円だといいます。柴田准教授は、これで出生率が0.24上昇すると推計しています。
(2)学費軽減
仮に、大学や専門学校などの学費の一部を免除した場合、追加予算は約1.5兆円になるといいます。これで出生率が0.08上昇することが見込まれるということです。
(3)保育関連
親の働き方にかかわらず、全ての1歳から2歳児が保育園に入れるよう定員拡大することや、保育士の給与改善などの対策で出生率は0.13上昇すると試算しています。
この3つの対策に必要な費用は6.1兆円で、これを2年以内に実行することで出生率はあわせて0.45上がると推計しています。2021年の出生率が1.30なので、0.45上がれば1.75になります。これは政府が掲げている希望出生率の1.8、つまり出産を望む人が1.8人の子どもを持てる状況を維持するというのに近づくことができると試算しています。
柴田准教授は、この3つの対策は2025年までにいますぐやるべき「即時策」だとしています。同時並行で、賃金上昇や働き方改革といった抜本的な「長期策」を進めることも重要だと指摘しています。
◇
子どもを望むかどうか、結婚するかどうかなどは個人の意思が尊重されるべきですが、そもそも子どもを欲しいと思える社会にするためにはまず、政府が予算をしっかり確保した上で支援策をころころと変えず、安定して継続することが大前提です。そして様々な家庭のあり方を認め、社会全体で子育てを支えることが求められています。
(2023年2月28日放送「news every.」より)
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